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なぜ元スパイの親玉がオランダの新しい首相になったのか?

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オランダで新しい首相が決まった。ロイターには選挙に出ていない高級官僚だったと書かれている。政党にも所属していない。日本の総理大臣は議員である必要があるがオランダでは議員でなくても構わないんだなあと思った。

日本では情報機関のトップと書かれているがドイチェ・ヴェレは「元スパイ長官」と表現している。そもそもなぜオランダは政治的な立場がはっきりしない元スパイ長官を新しい首相に選んだのか。他に誰かいなかったのか。

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オランダでは反移民感情が高まっている。このため反イスラム・反移民を標榜するウィルダース氏の自由党が選挙で一位を獲得した。しかし単独で政権を担えるほどの勢力は確保できなかったので他の政党との連立を模索する必要があった。

他の政党は政権には入りたいがウィルダースを首相にしたくない。ウィルダース氏はそれくらい嫌われている。そこで協定を結び党首を首相にしないことにした。だがそのあとの首相選びがなかなかうまくいかなかった。選挙は11月に行われたが結局組閣が成立したのが7月になった。今の首相はNATOの次期事務総長になることが決まっている。ここまで半年以上も次の政権が決まらなかったのだ。

新しい首相のディック・シューフ氏の名前が出たとき「この人が誰なのか」をほとんどの人が知らなかったようだ。そもそも本人が「一番ビックリしている」といっているそうだ。情報機関のトップなのであまり表に出てこなかったのだろう。このため彼がどのような政治的意向を持っているのかが全くわかっていない。

ただ過去に何度か情報活動でマスコミに批判された経験があり今でも彼を敵視するメディアがあるという。ポリティコは「そもそもあなた誰ですか?」という記事を書いており、ドイチェベレは元スパイ長官(Ex-spy chief)と表現している。

連立相手が極右ウィルダース氏をコントロールするために「並大抵の人」はない首相を選んだ可能性はある。つまり謀略に長けているからこそ首相として期待された。また情報機関のトップとして政府から何度も身体検査を受けている。つまり、最も「クリーンな」存在でもある。

だが一方でオランダ国民が彼を首相にしたいと思ったわけではない。そもそも彼は選挙に出ていない。つまり彼は政策を提示して民意によって選ばれた首相ではない。

ロシアのプーチン氏も諜報機関のトップから権力の座に上り詰めた人物としてよく知られている。もともとは腐敗した企業と戦いチェチェン紛争を収めた国民的英雄とみなされていた。だが、徐々に「実績」を積み重ねてゆき、最終的には独裁者となりロシアを泥沼の戦時経済へと転換している。彼の持っている民主主義に対する敵意を人々が知ったのは彼が独裁傾向を強めてからだったがもうその頃には手遅れだった。

今は「極右にコントロールされにくくスキャンダルもない」便利な存在だと思われているディック・シューフ氏だがその政治的資質はほとんど何もわかっていない。便利な神輿に終わるかあるいはとんでもない人を首相につけてしまったのかがわかるのは今後のことになりそうである。

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