肥料の本を読んでいる。結局、化成肥料ばかりを使っていると土が荒れる(微生物がいなくなるので、固くなるのだそうだ)ので、有機肥料を混ぜて使えと書いてあるだけだった。しかし、有機肥料には即効性はなく、臭いが付いたり、虫が湧いたりする。だから、化成肥料と有機肥料を使いわけろということである。
だが、肥料とは別に面白い話を見つけた。プラスティック鉢がどうして普及したのかという話である。高度経済成長時代が始まると、人々は生活を豊かにしたいと考えるようになった。当時は「団地」が庶民のあこがれだったので、室内に飾る植物が普及するようになった。だが、植木鉢と言えば「素焼き」が一般的だった。
それが劇的に変化するのはオイルショックなのだそうだ。プラスティックの原料は石油なのでプラ鉢の価格が高騰しそうに思えるのだが、実際には素焼き鉢の価格が上がった。鉢を焼くのに燃料が必要だからなのだそうだ。
しかし素焼き鉢メーカーは欠品を補うような対策をとらなかった。その隙間を縫ってプラ鉢が普及したのだ。最初にプラ鉢に目をつけたのは生産者だった。鉢が普及すると、それに合わせて用土が変わる。具体的には水の通りが良くなるように用土が改良された。赤玉土やピートモスなどが普及した。以前は庭の土をそのまま素焼き鉢に入れていたのだそうだ。
生産農家はプラ鉢を歓迎した。パートの人にとって軽くて扱いやすいからだ。これがベランダ園芸に取り入れられるようになり、今の状態になっている。プランターのような大きな物はほとんどがプラスティックに置き換わっている。
プラスティックが安物に見えてしまうのは仕方がないことなのだが、最近ではリメイクが流行しているらしい。鉢の上にテクスチャを貼ったり色を塗ったりして自分好みの鉢を作るのだ。
また、スリット鉢と呼ばれる切り込みの入った鉢もある。通常の植木鉢では、根が底に巻く「サークリング」と呼ばれる現象が起る。これを防ぐためにスリットを入れると、土を有効に活用できるようになるのだという。スリットのおかげで通気性もよくなるそうだ。
加工が簡単なプラスティック鉢にはいろいろな可能性があるのだが、もしオイルショックがなければ、現在も植木鉢は素焼きが主流だったのかもしれない。