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おじいさんとおばあさんのための改憲要求に群がるあさましい政治家たち

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憲法改正の議論が大混乱している。ただ議論を聞いていると一体何が混乱しているのかがよくわからなくなってしまう。ニーズのないところに憲法改正をねじ込もうとしているからだ。

ただ、よくよくみてみるとどうやら憲法改正で盛り上がっている人たちは高齢者が多い。特に岸田総理は最近滅多に見ることがなくなった日本会議系と関係が切れていないようだ。そしてこの高齢者たちの言い分を聞いていると彼らが次世代の育成に全く興味がなく自分達の考える国のありように固執していることがわかる。

その象徴が憲法なのだ。

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岸田総理が改憲を急ぎたい理由は簡単だ。熱心な支持者たちを失いたくない。だがこの「熱心な支持者」たちの正体がよくわからない。

産経新聞は櫻井よしこさんが代表の国民運動だといっているがその背景についていっさいの説明をしていない。地上波でもあまり触れられていないそうだ。だが、朝日新聞などは日本会議系と書いている。要するに恥ずかしくて名乗れないのだろう。これにあやかりたい国民民主党と維新もこの恥ずかしくて名乗れない人たちに群がりさらにみっともないことになっている。

安倍総理を熱心に支えてきた櫻井よしこさんは今では「小石河連合では改憲はできない」と主張している。櫻井氏を通じて自民党を支えていると見られるおじいさんおばあさんたちに向かってみんなで岸田さんを支えましょうといっている。

仮に岸田総理が「改憲はできない」といってしまうとこのおじいさんたちがべつの候補者(例えば高市早苗氏)などを担ぎかねない。バイデン政権がユダヤ票を失いたくないという理由でイスラエルのネタニヤフ政権を暴走させているのと同じ理由だが、実は自民党の党内政局なのだ。

彼らは日本会議系とみられるが、GHQに否定された宗教勢力に担がれているという印象を避けようとしてきた。そのためのプロキシーになっていたのが櫻井さんだ。日本会議は協賛に回っており櫻井さんを代表とする「国民」を支えましょうという体裁になっていた。だが日本会議の会長が90歳でなくなり櫻井さんが事実上のトップになってしまっている。

国家神道は戦後GHQに封建勢力として敵視された。彼らはこれを恨みに思っており現在の国民主権体制を覆そうとしている。自民党が下野していた時の憲法草案が「日本人には天賦人権はそぐわない」といっていたのはそのためである。

岸田総理は夫婦別姓などについては頑なな姿勢を保ち続けている。これはおそらくこうした人たちの反発を恐れているからだろう。2023年11月にも櫻井氏は総理大臣を「責任を持つ政治家とは思えない」と恫喝。岸田総理はこれを宥めるためにわざわざ櫻井氏を首相公邸に招き雑誌の対談に応じている。

一方でこれとは違った理由から憲法改正を成し遂げたい人たちもいる。それがGHQの日本の広報の一翼を担った読売新聞である。現在でも熱心な日米同盟推進の論陣を張っている。だがこの議論もどうもおかしい。

読売新聞が防衛費の増額について社説で議論している。日米同盟を守るために現役世代がもっと負担増を増やすべきだという内容だ。具体的には法人増税などを推進したい。

社説は、岸田総理は防衛費の増額について前向きだが「増税反対派の議員たちに押し戻された」としている。このために読売新聞が期待するのが法人税の増税である。さまざまな財源を検討し最終的に「増税をきちんとやってくれる政治家を選ぶべき」なのかもしれないとほのめかしている。日経新聞は社説で子育て費用の負担から逃げるなといっているが、こちらは法人税ではなく消費税などで国民から徴収すべきだという主張になっている。

みな勇ましい議論が大好きだがお金は出したくない。そして、お金は現役世代に出させたいが彼らがどうすれば再びやる気を取り戻してくれるかには全く関心がない。

読売新聞は「中国の台頭によって安全保障環境が緊迫化しているが」と前置きをした上で「憲法改正を行うべきか」を聞いている。

憲法改正賛成派が増えた背景には、日本を取り巻く安全保障環境の変化があるとみられる。中国の軍備増強や日本の領海への侵入が安全保障上の脅威だと「感じる」との回答は、「大いに」59%、「多少は」34%を合わせて93%に上った。

背景にあるのは少子高齢化によって国力が衰退する日本への対する焦りとアメリカから見捨てられてしまうのではないかという不安だろう。東西冷戦構造が崩壊した時に「日本の地域での役割は終わった、もうアメリカは日本を守ってくれないのではないか」という不安があった。彼らは依然その暗闇の中にいる。

アメリカの気持ちを引きつけるためには更なる負担が必要だが、仮に負担が増えたとしてもそれは現役世代が負担するのであって自分達ではないという気持ちも強いものと思われる。おそらく読売新聞が法人税増税に前のめりなのもそのためであろう。あくまでも現役世代がなんとかして老後の安心を支えよということだ。

では実際に憲法改正をすれば日本の安全保障は守られるのか。必ずしもそうとは言い切れない。なぜならば現在議論されているのは「とりあえず自衛隊を憲法に書き入れましょう」というレベルの話だからである。公明党には護憲派が多くいるため、岸田総理は彼らを刺激する提案には乗りたがらない。そこで「自然災害の時の対応であれば国民も納得してくれるのではないか」として憲法第9条議論を避けようとした。

ここに何とかして食い込みたいのが維新と国民民主党である。だから日本会議系の集会に足を運び支持を訴えるのである。だが彼らはもう一方で自分達は改革政党であり現役世代の味方であるとも主張している。今選挙で勝つためには高齢者の気持ちを引きつけておきたい。だがその先がないことも彼らはよくわかっている。そして不幸なことにどちらからも支持してもらえない。

さらに朝日新聞も「日本は憲法第九条のために戦争に巻き込まれずに済んだ」という人と「これからはそうもいっていられないのではないか」という不安が交差しているといっている。朝日新聞は護憲平和主義ということになっているのだが、実際に記事を読むと「単に面倒なことを避けたいだけ」なんだということがわかる。

日本会議のおじいさんたちはかつて一般国民よりも上位にいた自分達の地位を回復したい。日米同盟推進のおじいさんたちは自分達は戦争に行かないので、アメリカの気持ちを繋ぎ止めるために日本の防衛力と予算を差し出したい。そして護憲派の人たちも面倒ごとはまっぴらだがもう今までのような幸運は続かないのではないかと考えている。だが、おそらく彼らは自分達の医療・福祉を削るつもりはない。そういう予算は現役世代が何とかすればいいと思っている。

だが、自民党は結局公明党との軋轢も避けつつなおかつ改憲派が別のリーダーを担がないようにするために「無難な問題」から推進しようとした。これが緊急事態条項である。

しかしこの議論も迷走している。問題はいくつかある。まず何かあった時に参議院だけでは不十分だという説を持ち出したのが問題だった。これが一部の憲法学者からデタラメな議論だと反発されているようだ。この話は既に神学論争化しているため「国会議員で話を整理してから国民に下ろしてほしい」と思う。おそらく議論を長引かせることによって支持母体を維持しておきたいという気持ちが立憲民主党側にもあるんだろうが、これについては別途観察する。

ただ、問題はそれだけではないように思える。国民民主党の玉木雄一郎代表は「何かあった時に国会が機能しないのは困る」と主張している。だが、能登半島沖の地震の対応はそれほど迅速なものではなかった。新型コロナ禍の対応も迷走し続けた。つまり今でもシャキッとしていない議会が緊急時にどうしても必要なのだという納得感が全く得られない。

現在の緊急事態に対する対応で最も欠けているのが政府の機動力だろう。問題は地方自治体との連携である。地方自治体はイレギュラーな事務作業に全く対応できなくなっている。これは新型コロナ禍の給付金の配布や、マイナンバー健康保険証関係のオペレーションで顕在化した。

今は臨時の減税に「このままでは死んでしまうのではないか」という地方自治体職員が多いという。地方自治体の職員にはもはや緊急のオペレーションに対応するやる気と能力がない。仮に能力がある人がいたとしても度重なる人員削減などで一部のやる気のある職員たちに大きな負荷がかかっている。毎日新聞は「土日返上で作業をしている」とか「同僚が倒れた」とするちほ自治体の惨状を報告している。

どうしても「こういう問題を放置して呑気に憲法議論ですか」という気持ちになる。

これを踏まえて岸田総理の「ご挨拶」を読んでみよう。

岸田総理は「憲法が改正されていないことが問題」としている。そして自民党が下野していた時に作られた問題が多い憲法草案(天賦人権は日本人にはそぐわないという議論すらあった)をスルーして平成30年(2018年)に作られた「たたき台」を前提とした議論を求めている。

議題は4つあった。

  1. 安全保障に関わる「自衛隊」
  2. 統治機構の在り方に関する「緊急事態」
  3. 一票の格差と地域の民意反映が問われる「合区解消」
  4. 国家百年の計たる「教育充実」

このうち「緊急事態」を優先する方針を示した。具体的な条文を提出するといっている。とにかく、今の改憲勢力のおじいさんおばあさんから嫌われたくないという理由で改憲を行おうとしているため実際の条文などどうでもいいのだろう。そもそも現実逃避外交の真っ最中であり会場にも姿を現さなかった。

この憲法改正の話を見ていると現役世代が政治への期待や関心を失う中、一部の人たちだけがやけに熱心に政治議論をしている。その中に未来を担う人たちの姿はないが、彼らは自分達だけが「国民」であると主張している。

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