ざっくり解説 時々深掘り

振り込め詐欺がなくならないのは金融機関のせいかもしれない

高齢者を対象にした詐欺がなくならない。警察は膨大な費用をかけて広報しているがそれでもなくならない。そこで「騙される高齢者が悪い」という話になるのだが、これは金融機関の怠慢かもしれない。より正確に言えば「100%安全」を追求した結果、新たな危険が生まれているかもしれないのだ。
最近、フィンテックという言葉が流行っている。ITを使って便利な金融サービスを作ろうという動きである。いくつかの領域があるらしいのだが、アメリカでは電子メールを使ってお金のやり取りができるようになっている。クレジットカード(その場で引き落としができるデビットカードも一般のキャッシュカードに付帯している)で支払う人も多い。レストランでの割り勘もできるそうだ。
キャッシュレス支払いは記録も取りやすいので付随するサービスが発展する。例えば家計簿をまとめたり、人工知能を使って節約方法を提案するなど、いろいろなサービスが考えられる。
こうしたサービスができるのは、ユーザーがキャッシュレス支払いに馴れているからだと言える。何故馴れているかというともともと小切手が発達していたからだ。小切手が発達したのは現金取引より安全だと見なされていたからだ。現金は盗まれる心配があるが、小切手は引き落とされる前に止められ、安全性が高いと考えられている。メールによる送金は小切手をなくしたり盗まれる心配すらないのでさらに安全だと考えられている。
少額決済サービスは現金に比べて安心だ。特に口座の身元がはっきりしている場合にはトランザクション(お金のやり取り)が可視化されるので透明性が増すことになる。つまり2つの条件が重なると、お金がらみの犯罪は減るのだ。

  • 現金取引が少ない
  • 各口座の身元がはっきりしている

振り込め詐欺がなくならないのは、誰の物か分からない口座(多分偽名でも口座が作れるのだろう)が蔓延しているからだろうと考えられる。個人が番号で特定できるようになった今、こうした幽霊口座をなくそうと思えばなくせるはずだが、未だに身元がはっきりしない口座はなくならない。
現金を宅配便で送らせるという手口もあるようだが、これも個人決済が遅れているからだろう。日本の場合は「セキュリティ上の理由」で振込がとても複雑なのだが、なぜ、アメリカでできていることが日本でできない理由が分からない。事故のリスクを分散する態勢ができてないからではないかと思われる。
日本で非現金決済が定着しない理由はもう一つある。。低金利で貯蓄に金利が付かないために手数料収入に頼る傾向にある。だから、金融機関が非現金決済で利ざやを稼ぐ戦略にでている。デビットカードはそもそも数が少ない上に年間手数料がかかるのが一般的なのだ。消費税の税率が2ポイント上がるだけでこれだけ文句が出るのだから、手数料を避けたいと思う人も多いに違いない。そこでいつまでも現金決済がなくならず、従って振り込め詐欺のような犯罪が減らないという経路になっている。
日本人は、日本以外の金融機関を使うことがないためにサービスが比較できず、不便なサービスでも、これが当たり前だと考える。もちろん、欧米の銀行にも悪い所はある。新しいサービスを作るのも早いが儲けがないとすぐにやめてしまう。また、手数料収入に依存している点も共通しており、低所得者を中心に銀行に口座を持たない(あるいは持てない)という人が出てくる。
日本の金融機関は政府の統制が厳しく、新しい商品を出しにくいのだろう。一方で「間違わない」ことに力点が置かれる。100%の安全・安心というのは良いことのように思えるのだが、実際には別の危険性を誘発している可能性があるということは知っておいた方がよいと思う。
いずれにせよ、非現金決済が減り、口座の身元が確かになれば、振り込め詐欺のような被害は大幅に減るだろう。


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