インドネシアで大統領選挙が行われた。人口が2億人・標準時が3つあるほど国土が広いため開票にはしばらく時間がかかるそうだが、プラボウォ国防大臣が大統領に就任することがほぼ確実視されている。各メディアはジョコ氏の後継として扱っているが、その経歴がなかなか面白かった。スハルト大統領の元娘婿なのだそうだ。
ジョコ氏の長男を副大統領として立てており「世襲や家柄」が重要視されるという意味では日本に似た政治風土のように見える。しかしながら独裁を経験しておりプラボウォ氏も弾圧に加担したという過去は日本とは大きく異なっている。さらに30歳未満が5割を超えるという若い国で「成長と国の将来への投資」のアピールが重要という意味では日本と政治状況が大きく異なっている。ジョコ政権時代から若いインフルエンサーを大統領補佐官に任命してSNSを通じて起業の促進なども行っていたそうだ。
インドネシアは2億人の人口を抱えており「世界最大の直接選挙」と言われている。今回の選挙によって政策に大きな変化が起こることはないと見られており現状路線がほぼ踏襲されるものと見られているとのことである。
各メディアはジョコ氏の事実上の後継と見られるというような書き方をしているところが多い。多選制限があり選挙に出られないジョコ氏は後継を定めなかったが副大統領候補がジョコ大統領の長男だったためだ。しかし、経歴を調べてみるとなかなか面白いことが書いてある。
インドネシアはスハルト大統領のもとで独裁国家だった時代がある。アジア通貨危機に見舞われた時にスハルト大統領への退陣圧力がありスハルト政権が倒された。この時に民衆弾圧がありプラボウォ氏もそれに加担している。プラボウォ氏はスハルト大統領の娘と結婚しており当時は娘婿の立場だった。
結果的にプラボウォ氏はヨルダンに事実上の亡命となりスハルト氏の次女とも離縁しているそうである。ほとぼりがさめたことで帰国し大統領選挙に出馬したが落選し続けた。スハルト独裁政権時代の記憶が残っていたためと思われる。
その後、徐々に頭角をあらわしはじめ最終的にはジョコ政権の国防大臣として登り詰めた。アジア通貨危機とスハルト独裁を経験したインドネシアはその後民主化し大きく経済成長を遂げた。このため民主主義を支持する人が多いものと見られている。
さらにスハルト独裁時代を知らない人も増えていた。有権者に若者が多いこともありプラボゥオ氏はSNSを通じてスハルト時代を知らない若者たちに浸透していったとされる。ジョコ氏の長男のギブラン氏も「AIやロボットに精通する若者を育てる」と訴えて若者にアピールしていた。若者が選挙の主役になれるという状況は日本と大きく異なる。
インドネシアは30歳未満が5割という若い国で今後の経済成長も期待できる。日経の記事に出てくるプトリ・タンジュン(当時23歳)氏はジョコ政権時代のインドネシア大統領補佐官だった。起業インフルエンサーとして活躍していたそうだ。人口動態の若いインドネシアでは政権が積極的に若者にアプローチしているということがわかる。なんとも羨ましい話だ。ただし経済的には成長過程にあり現在の平均月収は日本円で30,000円を切る程度なのだそうだ。