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台湾(中華民国)総統選挙で民進党が政権維持 議会では過半数を失う

台湾(中華民国)で総統選挙が行われた。国際的な注目ポイントは対中国関係だったが若者はすでに「台湾は中国の一部」という意識を持っておらず「国家でなくても構わない」という現状にも慣れているようだ。このため第三の選択肢である民衆党を支持する人も多かった。議会では民進党が過半数を失いほかの政党と政策協力が必要な状態になった。民衆党がキャスティングボートを握る存在になりそうだ。

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とても変わった選挙だった。

国際的には独立志向が強い民進党とそのほかの政党の対立であるなどと語られることが多かったが、実際に台湾を取材した人たちは選挙のお祭り騒ぎにどこか羨ましさを感じたようだ。日本ではもう見られなくなった当事者意識の強い選挙で民主主義が本来持っている活気が感じられた。

英語ではStake(ステーク)という。和製英語のステッキと同義語で「杭」をあらわす。ここからナワバリを主張するための杭という言葉が生まれ「賭け金」「出資金」を意味するようになった。Stake holderという言葉は物事に関心がある関係者という意味合いだ。直接民主制で代表を選ぶ台湾は自分達の投票で台湾の未来が決まると考えている。つまり政治の当事者であるという認識がある。「どうせ自分が投票しても何も変わらない」と考える日本人は政治に対してステークを持っていないが台湾人はステーク意識を持っているといえる。

この違いがどこから生じたかについてはさまざまな意見があるだろうが、日本の冷め切った現状だけを見つめてもその答えは見えてこないのかもしれない。

台湾の総統選挙は国を挙げたお祭り騒ぎであり、その投票率も71.86%と極めて高かった。
対中関係の重要度は実はあまり高くなかったようである。CNNが「台湾総統選、若い有権者にとって最大の争点は?」という記事を出している。若者が気にしているのは対中イデオロギーではなく経済問題だ。

中国共産党は新しく総統になった頼清徳氏を分離勢力として警戒していた。公式発言でもかなりの警戒心を見せておりフェイクニュースなどによる介入もあったものと見られている。しかしながらこれらの恫喝や介入が台湾の人々の気持ちを変えることはなかった。この意味でも民主主義への人々の支持が裏付けられた。

今回の選挙について時事通信が次のように書いている。今後は同じ民主主義的な価値観を持っている日本が地域情勢にどのように関わってゆくのかが問われている。台湾はバイ(中国との一対一の対話)ではなく日本やアメリカを巻き込んだ対話を選択した。

医師出身の頼氏はかつて「台湾独立工作者」と自称したことがあり、中国の習近平政権が「台湾独立派」と見なし、敵視している。習政権は頼氏の当選を阻止するため、軍事的な圧力をかける一方、経済的な恩恵をちらつかせ、事実上総統選に介入してきた。頼氏の当選を受け、中国は台湾に対する圧迫を一層強めるとみられる。頼氏は、米国や日本との関係が深く、民主主義国との連携を強化する方針だ。

台湾の有権者は中国か台湾かという対立にはあまり関心を持っておらず、自分達の経済的な将来について考えた結果として3期連続で民進党のリーダーを選択した。また対中関係ではアメリカや日本の関与を求めている。香港の現状なども良く知っているが戦争は避けたい。「このまま現状維持を目指すのが得策だ」と考える人が60%程度に上るそうだ。

一方で民進党は議会では過半数を失ったようだ。今後予算を成立させるためには国民党や民衆党などの政党を巻き込んだ上でバランスの取れた政策立案を行う必要がある。

議席数は国民党が52議席、民進党が51議席という微妙な結果になった。どちらも過半数が取れなかったため少数政党の民進党がどちらにつくかで勝敗が決まる。民衆党は若者からの支持を集めており、国民党は台湾東部に強い地盤を持っているようだ。

彼らを台湾人と呼ぶか中国人と呼ぶかは別にして成熟した民主主義の担い手としての力量を発揮したと言える。選挙はスムーズに行われ「清潔な選挙」にも強いコミットメントを見せていた。また選挙後にも「選挙は盗まれた」などという政党はなくスムーズに勝者が決まっている。ねじれ議会には若干の不安も感じるがうまく議会運営が行われることを期待したい。

一方で対岸の中国人たちはこの件について語ることを禁止された。ウェイボーでは台湾選挙というタグが非表示になったそうだ。中国人民は共産党の言っていることだけを信じればよく政治について自ら語ることは許されていないのである。

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