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NATOは「ウクライナからの悪いニュース」に備える必要がある 西側支援に滞り

このところの国際ニュースはイスラエルのガザ侵攻一色になりウクライナのニュースのウェイトは低いものになっている。NATOのストルテンベルグ事務総長が「NATOはウクライナからの悪いニュースに備える必要がある」と発言し話題になっている。なんとなく「ウクライナは負けかけている」というニュースにも思える。一体何があったのか。

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アメリカ合衆国のウクライナ支援予算が枯渇しかけている。ホワイトハウスは議会に理性的な対応を求めているが一部の議員たちがバイデン政権の支出拡大に強硬に反対しており予算補充の目処は立っていない。

アメリカの援助に頼るウクライナにとっては死活問題だ。ホワイトハウスは予算の枯渇はロシアの勝利につながると警告する。財務長官も「ウクライナ支援できなければ敗北の責任負う」との声明を出した。一方でMAGA共和党の支持を獲得したいジョンソン下院議長はこの問題をアメリカの国境政策と結びつけておきたい。移民排斥運動は欧米全体に広がり続けている。自分達の尊厳が盗まれたという意識を持っている人たちの不満が燻り続けていることが背景にある。彼らの怒りは理性的なものではなく落とし所がない。

バイデン政権が費やした支援予算は16兆円にもなるそうだ。バイデン政権は将来の民主主義を守るために必要な予算だと言っているが、自分達の「今の境遇」には改善が見られないという怒りが背景にあるのだろう。

議論が膠着し、バイデン大統領はウクライナ支援は「アメリカの産業にも役立つ」と宣伝しようとしている。つまりアメリカが金儲けするためにウクライナの事情が役に立っていると説明を始めたことになる。

もともと「民主主義という正義」を守るための戦いという「高尚な」ふれこみだったわけだが、議論が膠着すると「メリット・デメリット」の話に落ちていってしまう。民主党と共和党のメリットデメリットは一致しないのだから結果的に何も決められなくなる。

アメリカでは一時「アメリカの支援によりウクライナが戦果を上げつつある」というような政治的宣伝が行われてきた。メリットデメリットでは正当化できないため「戦勝気分」を盛り上げようとした可能性もある。ところが実際の戦線は膠着つつあり成果が宣伝しにくくなっている。厳冬期に入ると目立った戦況変化がなくなる。スポーツに勝てなくなったチームを応援する人が減ってゆくような調子でウクライナへの関心が低下しているというわけだ。

冒頭のストルテンベルグ事務総長の発言を丁寧に整理すると次のようになる。おそらく同じようなことは欧州でも起きているのではないかと思う。戦勝気分に頼る場当たり的な支援はやがて行き詰まるが、これはNATOの失敗を意味する。どうしてもそれは避けたいという危機意識が滲む。

  • 戦況は良くなったり悪くなったりする。
  • 良い時だけ応援し悪い時には応援しないというのは良くない。良い時も悪い時もウクライナを支援しなければならない。
  • 夏場には生花もあったがこの数ヶ月間前線はほとんど動いていない。
  • ヨーロッパの防衛産業は細分化されており緊密に連携できていない。
  • 連携を強化すればウクライナの戦争は早く終わるだろう。

ストルテンベルグ事務総長の懸念は世論に支援されている国土防衛の危うさを示している。

ウクライナ支援をめぐるアメリカ合衆国の熱意は冷めかけている。ゼレンスキー大統領がテレビ演説をするという計画もあったようだが、直前になってキャンセルされた。アメリカ合衆国議会が予算審議に入る準備が整っていないことを窺わせる出来事だった。

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