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岸田総理大臣が国民民主党の釣り上げに成功 トリガー条項凍結解除検討指示で

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自民、公明、維新、国民民主の賛成で補正予算案が衆議院を通過した。岸田総理がトリガー条項凍結解除の検討を支持したことで国民民主党が乗りやすくなったものとみられる。岸田総理は国民民主党の釣り上げに成功したことになるが一時は前原誠司氏の離党報道が出るなど内部ではそれなりに波乱があったようだ。

あまり注目されていないが「国民の敵」というイメージが定着しつつある財務省も世論戦を仕掛けている。増田元総務大臣が「勤労者の手取りをアップさせるか医療機関を儲けさせるのかをもう一度考えてほしい」と発言している。つまり「あの」財務省が現役世代を味方につけようとしているのだ。

ただし増田氏の訴えが岸田総理に響くかどうかはよくわからない。自民党の各派閥は収入の8割をパーティーを通じた収入で賄っているという。総額は9億円になる。医師会などは多額の寄付を通じて自民党や派閥を支援しており少数派閥に支えられた岸田総理はなかなか医師会など支持母体の意向に逆らえない。

少数派閥政権で派閥の意向に逆らいにくいという構造があるとどうしても党外協力や閣外協力に頼りたくなる。だが党外協力が強まれば強まるほど政策の一貫性は失われ有権者の不信を招くことになる。国民は将来負担から消費を抑制し日本経済をますます冷え込ませることになる。

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まずは昨日のフォローアップから。「安全上の理由から詳細について公表できない」としていた問題だがFNNは水回りのトラブルだったと伝えている。昨日のブログエントリーでは「(例えば)水回りのトラブルだったとすれば安全上の脅威とは言えないのではないか」などと根拠なく書いたが、結局はそれが当たったことになる。岸田総理は公邸に戻った。

補正予算案は自民・公明に加え、万博で協力関係にある維新とトリガー条項凍結解除検討指示で断る理由がなくなった国民民主党を加えた4党の賛成で衆議院を通過した。これに先立って国民民主党は全会一致で補正予算案に賛成することを決めた。岸田総理の計画通り野党分断に成功したことになる。

全会一致とはいえ国民民主党側に全く波紋がなかったわけでもなかったようだ。代表選挙で野党との協力を主張していた前原誠司氏には離党報道が出た。前原氏はまだ重大局面ではないとして離党報道を否定している。

総理大臣がトリガー条項凍結解除に前向きになると当面の悪役は財務大臣ということになる。鈴木財務大臣は1.5兆円の追加財源が必要だと表明しているが一般的には財務省が抵抗しているのであろうなどと受け止められているのではないかと思う。ネットでは「消費税も何とかしろ」という声が強くなっている。

岸田政権の説明の継続性も課題になりそうだ。(おそらく官僚が考えた)説明は次のようなものになっている。「出口戦略だ」というのである。ロイターの記述は次のようになっている。

森屋宏官房副長官は24日午後の会見で、揮発油税などを軽減する「トリガー条項」の凍結解除をめぐる自民、公明、国民民主の3党協議は、来年4月まで実施される燃料油激変緩和措置(価格支援策)の出口戦略の位置づけ

政局を優先するとメッセージの一貫性失われるが支持率低迷に喘ぐ岸田総理は連合など確実に支援してくれる支持母体を求めている。背に腹は変えられないと言ったところなのかもしれない。

支持母体に手を突っ込まれかねない立憲民主党はかなり苛立っているようだ。「連合と話し合う」としている。自民党や岸田総理の不人気が立憲民主党の党勢回復につながっていないという苦しい事情がある。泉代表には「連合も本音では体制側に入りたいのではないか」という疑念があるのかもしれない。労働組合は組織率の低迷に悩んでいる。政権に近づき交渉力が高まれば連合の魅力がアピールできるという事情がある。やはり寄らば大樹である。

減税は一時的だが「岸田総理は財務省の言いなり」なのだからそのうち増税になるのではないかと考える人は多い。

もちろん実際の構図はそれほど単純なものではない。むしろ財務省側は別に悪役を立てることで批判をかわしたいと考えているようだ。財務省が考えた作戦は「医療機関に目を向けさせる」ことである。医師会などがプッシュしている診療報酬のプラス改定は国民負担の増大につながる。公費の負担が増せば財務省はどこかから財源を取ってこなければならないのだからさらに国民の敵度が増す危険性もある。このため「実は診療機関が儲けすぎている」という絵を作ろうとしている。

財務省は医療機関の財政状況を「機動的調査」で調べ上げた。特に今回は医療法人が経営している診療所を徹底調査し収益が8.3%にまで拡大していることを強調している。

増田寛也分科会会長代理は「医療機関が儲けすぎると現役世代の手取りが減る」として世論戦を仕掛けている。NHKは次のように報道する。

財政制度等審議会の増田寛也 分科会長代理は、記者会見で、来年度予算案の焦点となる診療報酬の改定について、「岸田総理大臣が現役世代の実質賃金、手取りの上昇を政策課題に据える中、必要な水準以上に診療報酬を維持すれば、その分、保険料は引き上がることになる。診療所の収益を守るか、勤労者の手取りを守るのかといった、国民的な議論をぜひお願いしたい」と述べました。

増田分科会会長代理が世論戦を訴えるのは岸田総理が閣僚人事などで支持母体である医師会などに特段の配慮を示しているからだろう。

自民党の6派閥の政治資金収入が公開されたがパーティー収入が8割だったそうだ。その合計額は9億円になるとして読売新聞が警鐘を鳴らす。支援する人たちは何らかの見返りを求めて9億円ものお金を出しているはずだ。つまり、見返りはそれ以上なのだろう。一般労働者に政治の目が向きにくくなるのは当然なのかもしれない。

政党助成金には党の力を強めて派閥の力を弱めるという狙いがあった。だが結果的には派閥は集金力を復活させている。その主力は生活に余裕がある人たちが主に参加する「パーティー」だ。

こうなると既得権を持った人たちによって改革は阻害されることになる。派閥の力を無視できなくなった政権は国民民主党や維新などの党外勢力を味方に引き入れることでなんとか政権の影響力を維持しようとしている。菅幹事長・総理大臣の時は創価学会とのパイプだったが岸田総理が狙うのは連合と国民民主党だ。だが党外協力を模索すればするほど政策の一貫性は失われ結果的に無党派層が政治から離反する。

そんな負のスパイラルが浮かび上がってくる。

派閥と支持母体の力が増したことで結果的にあっちからとってこっちにばらまくというなことを常にやっていかないと勢力が維持できなくなってしまっている。さらに阻害された無党派層も政権不支持を通じてこれに参加する。この図式が結果的に将来の負担増という予感につながり消費が低迷する。するとさらに政治への不満は高まる。全体的に悪い循環が生まれているといえそうだ。

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