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「安倍首相のドルなんて関係ないじゃん」発言について考える

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jdp_japan国会げ安倍首相が「ドル建てのGDPなんか下がっても構わない。ドルで給料をもらっている人なんかいない」と発言した。まず現況から見てみよう。Googleで検索するとグラフが出てくる。
日本のGDPは民主党政権時代に上がり安倍政権時代になって下がっている。GDPが下がった理由は円が安くなったからだ。
安倍首相は最近「民主党で失われたGDPを我々が取り戻しつつある」と言っているらしいが、実際には円の価値を毀損させているだけだ。
安倍首相が「ドルなんか関係ないじゃん」と感じることができたのはなぜだろうか。それは国内物価がそれほど上昇していなかったからである。円の価格は上がったのだが、同時に物価が下がっていたのだ。
トウモロコシ(直接食べる人は少ないかもしれないが、飼料として使われている)の価格は2013年に300ドルだったが、2015年年末には160ドル近辺まで下がっている。また、原油価格は2014年の夏頃から下落している。1バレル100ドルだったものが30ドルを切るところまで来ている。野口悠紀雄氏は、アメリカの金融緩和政策終了を予測した投機資金がリスク資産から引き上げたと見ている。
安倍首相と日本は幸運に恵まれていたのである。
ここにも日本人の「論理音痴」が出てくる。安倍首相の経済政策が「成功した」のは、たまたま環境が良かったからである。ところがこれを、安倍首相が経済政策を転換したから環境が良くなったと錯誤していのだ。例えて言えば、コートを着たら寒くなったので、コートが寒さを呼び寄せていると感じているようなものだ。
日本は長い間政府主導で経済を回していた。国策で産業を保護し、石油が足りなくなれば石油の割当を統制したりした。有権者の間には、こうした印象が残っているのだろう。しかし、実際の政治家には環境の変化を予測して対応することが求められている。
最近の政治家は多分状況が分かっている。政治家は経済を支配する事はできないということを知っているのだ。政治家に「経済政策」を聞いても答えられないし、答えない。彼らの関心は好調な数字を持ち出して「自分たちの手柄だ」と表明することだけだ。あるいは不調を見つけ出してきて「これは相手が悪い」と罵る手段として経済指標を使っている。安倍首相に至っては特に経済に興味がないようだ。国民の生活がどうなっても自分の暮らしには関係がないからだろう。
さて、今年の経済はどのように動くのだろうか。今年に入り円の価格が上昇し、株の価格は下がっている。原油価格は下落傾向で、国債の価格は上がって(つまり、金利が下がって)いる。アメリカの金融緩和政策終了によって潮目が変わったのだ。新興国への投資は滞るので中国経済は減速しそうだ。
野口悠紀雄氏によると、この傾向が円高に向くか、円安に向くかは分からないそうである。理論的には日本で資金を運用するより、金利の高いアメリカで運用した方が儲けが多くなる。そこで円を売ってドルを買う動きが加速するはずである。しかし同時にリスクを避けようという動きがでるので、比較的安定している日本の資産(国債)に人気が集るのである。
国債の人気が政府が資金を調達しやすくなるのは確実だ。現在は日銀が国債を買い取っているので「買う国債がない」ということになるかもしれない。すると政府の負債を日銀が吸収することができなくなるだろう。
株価は下がりそうだ。中国経済が減速し、株式市場に流れ込む資金も引き上げられるからだ。年金運用資金は返って来ないだろう。最近の国会答弁で、甘利大臣は「株式市場は長い目でみる必要がある」と答弁しているので、逃げ遅れることになるだろう。年金資金が引き上げれば、さらなる株式価格下落がもたらされるかもしれない。


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