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ヒップホップスターの50 Cent氏曰く「ロスアンゼルスはもうおしまい」

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Quoraで「50 Centがカリフォルニアはもう終わりと言っている」がどう思うか?という質問を見つけた。正確にはロスアンゼルスはもう終わりと言っている。保釈金制度が部分的に廃止されの話になった人たちによって犯罪が増えることを心配している。一体ロスアンゼルス郡に何が起きているのか。調べてみた。

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50 Cent氏の表現は「LA is finished watch how bad it gets out there.SMH」である。LAは終わった。どんなに酷いことになるか注目だと言っている。FOXが解説記事を出している。ゼロベイルポリシーが復活したことに反対しているようだ。日本語で言うと保釈金なし方針ということになる。

SMHは「シェイクマイヘッド」という意味だそうだ。「いただけねーぜ」とか「なっちゃいねーな」とか「賛同できない」とかとにかくそういう意味のようである。

軽く経緯を調べてみた。コロナ禍で刑務所がいっぱいになった。感染症対策のために刑務所の定員が減らされたのだ。そこで軽犯罪犯罪者たちを保釈金なしで釈放することにした。コロナ禍は収まったのだが「保釈金を払えないと出られないのは経済差別だ」と訴訟が起こされたようだ。結局LA郡は再び保釈金なし方針を復活させることになった。犯罪が多発していて警察の取り締まりが追いついていないため状況が悪化するのではないかと言われている。

50 Cent氏がなぜこの方針に反対しているのかはわからない。Quoraでこの件について書いたところ「近頃本業がパッとしないので名前を売ろうとしているのだろう」という辛辣な声もあった。

50 Cent(本名はCurtis James Jackson III)氏はニューヨーク市クイーンズ区のジャマイカに生まれた。お母さんが15歳の時の子供だが、お母さんは50 Cent氏が8歳の時に何者かに殺された。その後ラッパーとして活躍を始めるが銃撃事件に遭う。影響を恐れたアメリカのレコード会社は契約を打ち切りブラックリストに入れた。50 Cent氏の声は「変わってしまった」そうだ。その後カナダで活躍することになりエミネムに見出されて復活する。

もともと「ラッパー」を言うことになっていたようだが、現在はラッパーとしては活動していないようである。プロデューサーや実業家として知られていたようだ。

さて、アメリカの治安の悪化はもうニュースではなくなっている。

経済格差が拡大し貧しい地域では犯罪が横行している。当然警察の仕事も厳しくなる。こうした地域には有色人種が多い。当然人種差別的な扱いが横行する。人権派の人たちは「有色人種を抑圧する警察を解体しろ」という。だが、中流層にしてみればそれは治安の悪化を意味する。そこで警察を守れという動きになる。解決不能な問題がつみあがり今ではどこからどう手をつけていいのかがわからなくなりつつある。

当然政治はこれを利用する。二大政党制にはメリットも多いが弊害も多い。解決不能な問題が出てくると議論が先鋭化し「火に油を注いでしまう」のだ。

トランプ大統領(当時)は先の選挙キャンペーンで

バイデンはアメリカ人が銃を持つ権利を取り上げなおかつ警察予算も削減しようとしているのだ!

などと叫んでいたようだがバイデン候補(当時)はこれを否定している。

だがトランプ大統領の指摘は「火のないところに煙」というわけでもなかった。人種差別に反対する急進左派は警察を「有色人種の敵」として敵視する傾向にある。このため民主党地域では警察予算が削減されるケースが多い。これが逆風になり地方議会選挙では逆風になっているそうだ。トランプ氏の作戦はこの急進左派の主張をバイデン氏に結びつけることにあった。つまり「バイデン氏は社会主義者の親玉」という図式が作りたかった。

トランプ前大統領を最初に訴追したアルヴィン・ブラッグ地区検事も、警察は有色人種などの弱者いじめをしていると考えている。このため「刑務所で服役させるのではない別の形の処罰方法の推進」を提案している。代わりに「ホワイトカラー犯罪と公職者の汚職の起訴強化」を訴える。トランプ前大統領が訴追されたのは「ホワイトカラーの代表者」と見做されたからだ。これは「司法・検察の武器化」だと非難された。

シアトルでも警察は「弱い物いじめ」をしているとみなされた。人種差別に反対する人たちが警察を包囲し「無警察地帯」がつくられた。彼らは包囲した地区を「自治区」と呼んだが発砲事件が起きて人がなくなっている。結局彼らは強制排除されてしまった。

それぞれがそれぞれの主張を叫んでいるという状態だが、結果的にどうなったか。

TBSはサンフランシスコ市の最近の事情を紹介している

防犯カメラがある店に押し入り品物を強奪する人のシーンから始まる。拳銃を持っている可能性があり店員は手出しをしないそうだ。背景には「軽犯罪であれば捜査されないかもしれない」というような見込みもある。このため、棚から品物を取り出してレジに持ってゆくという普通な買い物はできなくなり高い対策費は商品価格に転嫁される。目抜き通りからは店が消えて治安上の問題になっているそうである。

これについて指摘したところ「こんなことは以前から言われており今では問題でもなんでもない」というコメントが入った。50 Cent氏は「ロシアンゼルスはもう終わり」と言っているが実は単に進行中の問題について触れているだけということになる。

日本では水と安全はタダなどと言われることがある。だが、実際には無くなってしまうと政治はこの問題を解決できない。今あるものを守ることの重要性がわかる。

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