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返納運動の影で47万枚ものマイナカードが本当に失効している

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「事実上の撤回」はしたものの、いぜんマイナンバーカードの健康保険証化に反発が広がっている。過敏に反応する人もいて一部では返納運動に発展しているという。

そんななか、デイリー新潮が「マイナンバーカードの返納が45万枚以上に 介護現場からは「情報漏洩が怖い」と不満続出」という記事を出した。これだけを見ると国民の間に不満と反発が大きく広がっていると読み取れる。一方でこの記事に反発する人もおり「死亡による失効も含まれているのだろう」と解釈していた。

情報の一人歩きを防ぐためには総務省が情報を発信するしかない。総務省の動きは早かった。47万枚失効しているそうだ。実はこの失効には死亡は含まれていない。自主返納の内数はわからないが「引越しなどによる失効」が含まれているという。つまり仕組みが複雑なために「うっかり失効」が増えている可能性がある。手元にカードを持っているという人でも実は「うっかり失効のために健康保険証として使えない」可能性がある。

最後にマイナ保険証が「課金ビジネス」だった可能性についても言及する。普及すれば普及するほど国が儲かる仕組みになっているようだ。1問合わせあたり10円がチャージされるそうである。

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まず直感的に「確かに新潮の45万件は数が多すぎる」と感じた。

市町村が出している返納情報と合わないので検索してみたのだがよくわからなかった。さらに諦めずに調べたところ「ほとんどが死亡によるものだ」と指摘するものがあった。

どうやら45万件を最初に言い出したのは朝日新聞らしい。Tweetは6月29日に発出されており、今現在45万件ほど読まれている。ポイントはしれっと「カードの失効も含めた」と書いてあるところである。つまり嘘は言っていないが数字が一人歩きするように「工夫」が施されているように読み取れる。朝日新聞は購読しないと本文が読めないのでなおさらその傾向が強い。

ツイッター上では「#マイナンバーカード返納運動」といったハッシュタグが立ち、返納を報告する書き込みも相次いでいます。 総務省によると、カードの失効も含めた返納数は5月25日時点で約45万枚です。

新潮はこの数字をそのまま引き合いに出した可能性がある。

リードは次のようになっており不安や反発から返納運動が広がっているかのように読み取れる。わかってやっているとしたらかなり悪質だが「ついつい」なのかもしれない。新潮の意図はわからない。

不信感が強まるばかりのマイナンバーカード問題で自主返納が相次いでおり、今年5月末には返納数が計約45万枚にまでのぼった。さらに、介護現場からは「これ以上煩雑な業務や手続きが増えたら困る」「情報漏洩が怖い」という不満や不安も噴出しており……。

この45万件について「ミスリーディングだ」とか「如何なものか」と指摘している人たちがいた。朝日新聞は何かと「この筋の人たち」の狙われている。死亡者が含まれるのだろうと類推した上で「返納運動を煽りたいのであろう」という結論にしたいようだ。朝日新聞には数の概念が欠如しているのか?とまで書かれている。

朝日新聞「マイナカードの返納が各地で急増」に多くの疑問の声(アゴラ)

だがこれが瓢箪から駒だった。

総務省が慌てて追加の内訳を出した。5月以降に失効数は2万件増えていて47万件が失効している。ただし自主返納の内訳は出ておらず、その後回復したカードの枚数も発表されてない。

マイナカード廃止47万枚 16年以降、自主返納含め―総務省

前回の発表の続きなので「総務省が何かを隠していた」わけではない。だが、今回は無用な混乱を生まないために「死亡は含まれていない」とはっきりと書かれている。また自主返納は含まれるが内数はわからない。自主返納が広がっているとは書きたくないのだろうし自治体の窓口で「抗議の返納ですか?」などとも聞きにくいだろう。そもそも自治体が公表する「わざわざ返しにきた人たち」と数が合わない。

そんな中で改めて注目されるのが「引越しなどによる失効」である。そんなことがあるのだろうか。

デジタル庁のウェブサイトには「マイナンバーカードで引っ越しが楽になる」と書いている。だが記述が複雑なせいで読んでもよくわからない。さらに「マイナンバーカード自体の手続きが必要」とは書かれていない。たまたま見つけた神奈川県のウェブサイトにはマイナンバーカードに新しい住所を書き込まないと失効しますなどとわざわざ注意喚起が出ている。おそらく都道府県側は意識しているのだろう。

もちろん自主返納がものすごく増えている可能性はある。さらに「もう使わないからいらない」と引っ越しを機に意図的に返してしまった人もいるかもしれない。だがマイナポイント欲しさに申し込んだまま「忘れてしまった」という人の方が多いのではないか。転入先の窓口もいちいち「マイナカードを持っていますか?」などと聞かないのだろう。

今回のマイナ保険証のドタバタで「私はもう結びつけをしたから大丈夫だ」と思っている人の中にもマイナンバーカードそのものがうっかり失効している人が含まれることになる。この人たちがそれに気がつくのはおそらく急に病気になった時だろう。きちんと周知徹底した方が良さそうだがいずれにせよ広報すべきことが多すぎる。

今回の騒動で資格確認証を「プッシュ型で送る」というような議論が出ている。マイナンバーカードを申し込んでいない人、健康保険証と結びつけていない人、申し込んだが何らかの理由で失効してしまった人を「誰か」が把握しなければならない。おそらく仕組みはかなり複雑なものになるだろう。いずれにせよ新しい情報が出てくるとその事に「これはどうやって管理するんだろうか?」となる。もう問題の全体像を把握している人は誰もいないのではないだろうか。

メディアは責任として5月の時点で「うっかり失効が増えていますよ」とリードやタイトルなどで訴えるべきだった。国民の利便に関わる。ましてや返納運動や不安を煽る方向に利用するべきではないのはいうまでもない。

混乱が混乱を生みあやふやな情報が錯綜する「マイナンバーカード狂想曲」はもはや笑って眺めるしかない。

一連の議論の中で「仕組みの話」はついに出てこなかった。次の争点は「この落とし前を誰がどうやってつけるか」である。追加費用が発生する。

河野太郎大臣が締め切りを示さなかったので県知事会は「調査に財政支援をしろ」と言っている。確かに調査が終わるまで臨時職員を抱えていなければならない。それを丸抱えしろと言っているのである。

マイナ点検で支援要請=知事会が河野デジタル相に

そんななか非常に小さいニュースがあったので最後に書いておく。なぜデジタル庁が躍起になってマイナンバー健康保険証を普及させたがっているかがわかる。

おそらく朝日新聞としては「都道府県は財政支援を求めることができるが健康保険組合は持ち出しになる」という意図で書いているのだろう。朝日新聞は「調査なのにシステム利用料がかかる」という点に注目している。1トランザクションあたり10円だそうだ。

マイナンバー総点検、1件で10円の追加費用 どこ負担?国は示さず

実はマイナンバーカードが課金型ビジネスであったということがわかるのだが朝日新聞はまだ気がついていないようだ。

つまり、マイナ保険証が使われれば使われるほど政府が儲かる仕組みになっている。河野大臣がやたらと普及させたがっているのも無理からぬことである。「紙の保険証」ではトランザクションは発生しないのだから政府の儲けにならない。普及率が下回れば損が出る可能性もあるノアから政府が「損益分岐点」をどの程度のところに置いているのかが気になるところだが、医療機関に機器などの先行投資をさせて官製ビジネスを作ろうとした可能性もある。

こうしたケースは、総点検のなかでシステムへの再照会が必要となる。J―LISによると、負担金を支払っている自治体などを除き、各企業の健康保険組合や、中小企業の会社員らが加入する協会けんぽなどは、ネットワークへの情報照会に1件あたり原則10円の費用が発生するという。

ちなみに現在の医療機関の投資はすべて「チャラ」になる可能性が出てきている。カードの中に入っている暗号がバージョンアップされると読み取り機を買い替える必要がある可能性があるそうだ。ソフトウェアのアップデートで済むのかハードの買い替えになるのかなどの詳細は未定だが「量子コンピュータ」まで持ち出して答弁を乗り切ろうとした河野大臣にこの辺りの説明を求めるのは無理だろう。

【速報】河野デジタル大臣「新しいマイナンバーカードでは新しい読み取り機が必要となる可能性」

それにしても掘れば掘るほど色々な話が出てくるものだなと感じる。

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