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円安になれば景気はよくなるのか

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よく、アベノミクスで円安になれば日本は復活するという議論がある。しかし、この数年間は貿易赤字の状態にあるので、円安が進行すれば国民生活は貧しくなるだろうと予想される。これが特異な現象なのか、しばらく続くのかはまだ分からない。
まずは日本の輸出入を見てみよう。データは財務省貿易統計をそのまま使った。export001
円の価格は1985年のプラザ合意後に大幅に高騰し、生産拠点を海外に移す「産業空洞化」が叫ばれたが、実際には輸出額の落ち込みはなかった。バブル崩壊後に企業は人件費を抑制したが輸出入は伸びていたことも分かる。
その後、輸出入はリーマンショック後に急激に落ち込んだ。これは民主党の失政ではなく、世界経済停滞の影響を受けたせいだろうと思われる。ただし、同時期に円も最高値を付けており「全く影響がなかった」ともいいきれない。円が高くなり始めたのはちょうど小泉政権が終わり、自民党が三代続けて「政権を投げ出した」時期に重なる。
安倍政権に入って最も顕著なのは輸出が伸びない割に輸入が伸びているという点だ。つまり、貿易赤字が発生している。これは1950年代以降はじめての特異な現象だ。このことから、円安が進めば進む程、国民生活が貧しくなるのだということがわかる。
export002さらに細目を見て行きたい。最初は自動車部品・電気製品(工業用と家電を含むものと思われる)・半導体である。
「失われた20年」などと言われたが、少なくともこの分野ではバブル後の顕著な減少は見られない。電気製品も半導体もリーマンショック後は工場が日本に戻ってくる事はなかった。半導体については国際競争力が失われたせいで輸出量が減っているのかもしれない。自動車部品は堅調だ。
export003日本といえば「自動車と家電だろう」と考えて、自動車とテレビについて調べてみた。。額に対する貢献度は低い。日本は最終製品の輸出は得意ではないのかもしれないし、現地生産が定着しているのかもしれない。
自動車については円高が進行していたにも関わらず2000年頃から輸出量が増えていた。しかしリーマンショックで落ち込んだ結果、国内に工場が戻ってくることはなかったものと見られる。
export004繊維製品についても見てみたい。アパレル産業は長期的に低迷傾向だと言われる。国策で始まった産業なので、産業内で自律的に構造調整する仕組みが作られなかった。そのため、中間工程の縫製が工賃の安い海外に流出したのだそうだ。
国内の「衰退ぶり」は明らかで、1991年には製造業の5.2%を占めていたものの、2001年には2.5%%まで落ち込んだ。従業員も114万人(1985年)から51万人(2001年)にまで急激に落ち込んでいる。輸出額は低安定傾向だったのだが、リーマンショックでさらに落ち込んだ。
export005最後に鉄鋼の生産を見てみよう。こちらも国策産業として始まったのだが、好調は現在も続いている。意外なことにバブル崩壊後10年ほどしてから大幅に輸出額が伸びた。
寡占で大企業が多いために競争力が落ちず生態系も破壊されなかったのだろうと思われる。また、中国などの近隣諸国で需要の高まりも好調の原因だろう。鉄鋼業もリーマンショック後に落ち込んだが、しばらくして復調をはじめた。しかし、中国は明らかに建築バブルの状態に入っているので、中国経済が低迷すれば、ダイレクトに影響がでるものと思われる。製鉄業は存在感が大きいため、日本経済に大きな影響を与えるものと予測される。