アステラス製薬の社員が帰国直前にスパイ容疑で逮捕された。「やはり中国は怖い国だ」とい感じた。FNNは日中友好に寄与した立派な人だと書いているのだが、おそらくこれはリスク要因だったのではないだろうか。やはり中国は価値観の違う怖い国だと思うがそれでも社員を駐在させ続ける日本企業は多いのだろう。特にゴールが近いサラリーマンには逃げ場がないと考えるとやるせないものを感じる。
アステラス製薬の社員が帰国直前に逮捕された。スパイ容疑である。2014年に法律ができたそうだが17人目の逮捕になると時事通信は伝えている。またFNNは20年の駐在経験があり日中友好にも寄与した立派な人であると伝えている。
中国の狙いはどこにあるのだろう?
各紙の報道を見ると「このところ日本国民による類似事件が起きている」と指摘した上で「日本政府は国民を教育・注意喚起しろ」と要求しているようだ。誰がスパイかはわからないわけだから「日本政府になんとかしろ」と要求しているのである。つまり、この社員はそのためのみせしめである可能性が高い。
実際に何かやっていた可能性もあるのでは?と考えたのだが、おそらくそうであればその事実を暴露した上で口を極めて罵ったのではないかと思う。ただ、この手の拘束者が何を企てていたと見ているのかを中国政府が明らかにすることはない。このためどうしても「象徴的意味合い」が疑われてしまう。
中国政府は「全ての外国人は中国の法律を守らなければならない」としており「それが国際常識だ」と言っている。確かにそれはその通りだ。だが、一方的に逮捕して理由も説明せず長期間交流するのは国際常識ではない。やはり感覚の違いを感じる。中国は民主主義国とは言えない。
ではなぜこの人が狙われたのか?ということになる。日テレとFNNが「みせしめ」以外の理由を考察している。一つはバイオなどで「中国政府が欲しい情報を持っている」人であったという可能性だ。もう一つは政治的な色彩を帯びた中国人と交流があった可能性である。
最初の可能性は「中国が欲しい情報を持っている人」を泳がせておいて帰国直前にPCごと押収してしまうというものである。もう一つの可能性は中国人の中に政府から目をつけられた人がおり、その人への連座を疑われているというものだ。中国のような権力闘争が激しい国で強い国家権力を手に入れた習近平国家主席が最も恐れるのは身内からの追い落としだろう。離反者は徹底的に締め上げようとするはずである。その関係者を拘束し「証拠」を作り出そうとしても全く不思議ではない。つまり中国人と交流があるというのはそれだけで現地の駐在員にとってはリスクファクターなのだ。
最後にこの件で中国からの撤退が進むのだろうかと考えた。おそらくこれまでに投資をしてきた企業は社員に注意喚起だけしてそのまま駐在員を置くのではないかと思った。
投資が惜しいという事情もあるだろうし、国内の余剰人員を中国に送り込み「ビジネスを成功させるまでで帰ってくるな」と申し渡すと言うようなこともやっているのではないだろうか。特に40代後半・50代など「ゴールは見えているがローンを返し終わっていない人」などはその境遇から逃げられないのではないかと思う。「子会社出向」よりも過酷である。ただ、未来ある若手を送り込む国ではなくなっていると言う気がする。
「こんな怖い国ではビジネスはできない」と思うのだがそれでも中国に残らざるを得ない人がいる。彼らには家族もいるのである。
さらに国際社会では中国に和平調停者としての役割を望む国が出てきているという苦い現実がある。再選で頭がいっぱいのバイデン大統領も「必勝しゃもじ外交」の岸田総理もこの習近平国家主席の戦略的な試みに対抗できていない。特に日本にとっては「とにかくアメリカの言う通りにやっていれば安心なのだ」しか国家戦略を持たない点が実に悔やまれる。長年国家戦略について国民的な議論はなかったため、急に何かを作り出すことができないのだ。