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「そうだ数えなければいいんだ」中国で画期的なコロナ対策が発明される。

デモという「直接民主主義の成果」でゼロコロナ政策を転換した中国が新しい対策方法を発明して話題になっている。統計手法を見直しコロナ死者の認定を厳格化した。このため統計上の死者は激減し中にはゼロの日もあったという。これに慌てているのがWHOだ。緊急事態宣言を収束させる検討をしていたようだが中国の動向次第ではこれができなくなりそうだ。さらにそもそも中国で何が起きているのかが掴めなくなっており事務局長が懸念を表明している。

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中国はデモという究極の直接民主主義の結果としてゼロコロナ政策を見直した。西側の報道は「このまま中国の死者は200万人以上になるのではないか」と予測する。ところが中国政府は画期的なコロナ対策を思いついたようだ。

死因が呼吸器障害などではない場合にはコロナ死者と認定しないことにしたようだ。この解釈は当局が恣意的に決められるのだろう。21日の死者は一人もいなかったと発表されているそうだ。BBCは19日に2人、20日に5人が新型コロナウイルスで死亡し、それ以前の2週間は1人も死亡していないと書いている。中国ではこれが「唯一の事実」と言うことになる。政府がそう言っているからそうなのだ。

当初、中国政府がゼロコロナ政策を見直したとき「この後起こる混乱をどう隠蔽するのだろうか」と思っていた。だが、中国政府はそんな回りくどいことはしなかった。正しい歴史は国家が作るのだから解釈を変えてしまえばいい。文句を言うメディアはない。

非常に興味深いことに情報が隠蔽されているわけではない。ロイターは環球時報の報道を引用して次のように伝えている。つまり「北京で感染者と重症患者は増える」ときちんと報道されている。

つまり中国の一般市民は感染者や重症者は増えるだろうが死者はそれほど増えないと言う不思議な「事実」を受け入れることになる。死者が増えてもそれは別の症状を抱えている人がたまたま亡くなっただけということになる。

中国には選挙もあり「民主的な社会である」と主張する人は多い。今回の事例も「デモが聞き入れられたのは中国の執行部が国民の懸念に関心を寄せているからだ」と主張する人がいる。ところがやはり当局が気にしているのは当局の威信だけだ。

BBCの記事には「中国のワクチン接種率は高い」という統計も紹介されている。一方でBBCは心配げに「中国産のワクチンはそれほど効かないのではないか」と指摘する。中国国民が保護されていないのではないかと言うことになる、だが、おそらく中国政府はこれも「中国の科学技術力を馬鹿にしている」とネガティブに受け取るだろう。さらにワクチンは高齢者にとって危険なものだという風評が広がっておりワクチン接種を拒絶する高齢者も多いようだ。

この状況を考えるとおそらく「実質的な」死者は増えるだろう。大勢の犠牲者が出るかもしれない。ただ、中国の国内事情は中国人が決めればいいことだ。これが「民主主義だ」と彼らがそう思うのならその結果を受け入れればいい。

ところがそうも言っていられない事情がある。

WHOはコロナ緊急事態宣言の終了に向けて動き始めた。ロイターの報道からスケジュールを拾うと、9月にはテドロス事務局長が「終わりが見えている」と発言し、来年1月には拘束力のない勧告を受け取る予定になっている。

ところが中国で周回遅れの流行が始まる可能性があることから終了宣言ができなくなる可能性があるそうだ。つまり中国政府の威信を守るための行動が世界全体の終了宣言の足を引っ張るかもしれない。

WHOが「民主化」された結果、中国がアフリカ諸国に働きかけて誕生したのがテドロス事務局長だった。つまりテドロス事務局長は中国を後ろ盾と考えており、たびたび中国を擁護する発言を繰り返している。ところが今では中国政府が最大の妨害者になっており「このままでは状況がよくわからなくなってしまうかもしれない」と懸念している。

ロイターの記事は中国の状況をワイルドカードと表現している。つまりこの先どうなるかがよくわからない。同時に中国では今何かが起きているのかがよくわからなくなりつつある。中国を世界から隔離できれば良いのだが陸路でつながっている国もある。中国でコロナが蔓延し続ければいつまで経っても終わりが見えないということになりかねない。

「そうか統計を偽装すればいいのか」と軽いノリで関連記事を読み進めたのだが、中国の状況はかなり深刻な影響を国際社会に与えかねない。結局のところ世界は繋がっているからである。中国を世界から完全に隔離でもしない限り中国の状況は世界の公衆衛生にとってのリスク要因になるだろう。

当局の威信を守るために「統計手法を一夜にして変えてしまう」などいわゆる普通の民主主義になれた我々にとっては想像の範囲を超えていると言わざるを得ない。

だが、中華人民共和国とはおそらくそう言う国家なのだ。

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