江沢民国家主席が亡くなった。中国は追悼ムードだというが一部では習近平国家主席への反発がありSNSでは追悼メッセージが削除されるというような動きも起きているという。コロナ禍で苦しむ人々が改革開放路線の時代を懐かしんでいるのだ。一つの時代が終わった感じがある。日本とはあまり関係がない動きのように思えるのだが、実はその影響が出ている。脱市場主義の動きがあり逃避してきた人たちがいる。「東京の高級クラブ」が彼らの新しい活動拠点になっているそうだ。
江沢民元国家主席が亡くなりロイターが冷静な分析を出している。共産党は路線対立により深刻な分裂状態にあった。ロイターは「内部対立によってがたがたになった共産党」と表現している。江沢民国家主席は現実主義によってこの対立を解消した。だが江沢民国家主席は2つの負の遺産を残した。一つは上海閥でありもう一つは格差だった。
習近平国家主席時代になっても一度できた派閥はなくならなかった。また共同富裕を訴えて格差を解消しようとしているが実際にはうまくいっていないそうである。つまり、国家主席に近い人たちに権力が集中するという図式が定着した。
今回のコロナ封じ込め政策の失敗からみてわかるように中央の判断の間違いは国全体に大きな動揺を広げかねない。自分達に近い仲間だけで意思決定をするとどうしても集団思考の弊害が出てしまう。民主主義的な政権交代がない中国には独特の仕組みがある。つまり「暴動寸前」という民衆抗議活動が選挙の代わりになっている。国民がいちいち騒がないと方針変更がないというのはいかにもしんどい仕組みだが中国は中国なりに対処してゆくだろう。
だが、政府は表向きは「格差縮小のために戦っている」という姿勢を見せなければならない。そのために「一部の起業家が腐敗した」として攻撃することで民衆を慰撫しようとする。ロイターはアリババの創業者ジャック・マー氏もそのうちの一人だとみているようだ。ロイターはこう表現する。
かつて江沢民氏が称揚した資本主義的経営者らへの締め付けが発生。「犠牲者」の中には、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏も含まれる。
ではその「犠牲者」であるジャック・マー氏はどこにいるのだろうか?
ネットニュースで話題になっていたが半年ほど前から東京が拠点になっているそうだ。高級クラブを拠点にしているとBloombergが書いている。銀座の会員制クラブということで松本清張の「黒革の手帖」を思い出した。
家族や専属の料理人なども帯同しており東京を拠点にアメリカやイスラエルに定期的に出張しているそうだ。フィナンシャルタイムスの報道を引用した形だがフィナンシャルタイムスは「東京に滞在する中国人富裕層の拠点になっている」と指摘しているそうだ。数や規模は不明だ。
日本のメディアはあまり報じないが中国の路線変更により日本が富裕層の受け入れ拠点の一つになっていることがわかる。今のところ目立たないように潜伏しているというが、経済的に見る限りはかなり派手に動いているようだ。
東京にいても彼らに政治的な自由はない。日本に帰化するというわけではないからだ。だが元々中国でも政治的自由はなかったわけだから「彼らにとってはどっちでもいいこと」なのかもしれない。