得意なことをやっていると時間を忘れるという経験をしたことがある人は多いと思う。それでは何が得意なの、と聞かれてもちゃんと答えられないことがある。これを埋めるフレームワークがMBTIだ。日本ではMBTIが権利を持っている。しかし、フレームワーク自体は簡単なので模倣もしやすい。日本MBTI協会はこれを「MBTIもどき」と呼んでいる。もどきの一例がこちら。
ユングのタイプ論を基礎にしているのだが、ユングはこれをマトリックスにして人間の類型を作ったりはしなかった。ユングのタイプ論から来ているものは、外向・内向、感覚・直感、指向・感情だ。それに、独自の、規範・柔軟という指向性が加わる。ちなみに私は昔受けたときにはESFJだった。最近Facebookの「もどき」を受け直してみたところ、ENTPという結果が出た。設問の内容の構造が簡単なので「職業的に理想的な人物像」を意識すると結果が変わることがあるらしい。
ENTP
ENTPは、新しいアイディアが好きで、創造力に富むタイプだ。今あるものを改良するより、全く新しいものを追い求めるのが楽しいと考えている。手許にある資料を見ると、知的で問題解決能力に優れ、議論を好むと書いてある。外向性なので「人が何を欲しているのか」を探るのもうまい。
しかし、この傾向には悪い面もある。現実を気にせず、安定感に欠け、次から次へと中途半端に新しい事に挑戦するということだ。しかも、ルーチンワークを嫌うので、退屈すると「もっと新しい事はないかなあ」とどこかに飛び去ってしまう可能性もある。
ENTJ
ENTJは、上記の性格のPをJに変えたもの。ENTPは、まだ世の中に出ていないものに対して関心が向くが「J」の人たちは既存の枠組みを尊重する。議論好きでリーダーシップがあり飽きっぽいという点には違いがない。自分の正しさを議論によって証明しようとする。
この飽きっぽくて現実的な問題にあまり関心を持たないという性質は、Nから来ている。Nは直感型だ。Sの人たちの現実は細かなディテールにあふれている。例えば、誰かに会っても、髪型とかシャツのディテールとかを覚えている。しかしNの人たちの現実は「スケルトン」のようなものだ。だからこそ直感的な判断ができるのだが、この現実感のなさが裏目に出ると、細かい気配りができない人ということになる。
よく「大きなビジョンを語るのはうまいが、細かなところのツメが甘い」政治家を見かけるが、こういう人はENTJだと思っていいのではないか。
この2カテゴリーの人たちは、デザイナーや職人のようなディテールに時間をかけるような職業は向いていない。またパワーポイントの絵を描く事はできるかもしれないが、それを細かい施策に分解するのは苦手だろう。つまり政治家にはなれるかもしれないが、官僚のようなシゴトはできない。
一方、ENTPのいない世界では、デザイナーは完璧を目指していつまでも「何に使うか分からない」作品を作り続けることになるだろうし、プログラマはいつまでもバグを取り続けるだろう。そして官僚も細かな点にこだわり過ぎるあまり、全体最適には目が向かなくなるだろう。
イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材は、実務的なグルーピングだったが、このMBTIもクリエティブなチームを作るのには欠かせない。
また、政治の問題を見る時にもこの性格類型は役に立つだろう。民主党は机上の空論ばかりを振りかざしているように見える。この政党は、理想(マニフェスト)と議論の政党だったのだが、政権を取ったら、対局を失わないように現実的なタッチを与える必要があるわけだ。当たり前なのだが、組織を円滑に動かすためには組み合わせとチームワークが求められるのである。
このシリーズ、気が向けばあと7回つづく。