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ピーターの法則

ピーターの法則は、1969年(だいたいウルトラマンとか仮面ライダーとかと同じくらい昔)に書かれた本。上司はどうしてみんなアホなのかを説明する。階層社会においては全てのヒトが、それ以上昇進できなくなるところまで昇進するので、結果的にすべてのヒトが無能になるのだそうだ。そうすると組織はすべてアホで満たされるはずなのだが、昇進途中のヒトは無能レベルに達していないので、シゴトはそういった人たちによって執行されるのだそうだ。作者はこれを「階層社会学」と呼ぶ。ただ作者は社会学者ではなく教育学者だ。
あまりにも優秀すぎると、周りから疎まれることになる。すると組織から排除されてしまうので、組織レベルを越える有能なヒトは1人もいないということになる。解決策は簡単だ。昇進を拒めば有能でいられるのだから「無能」を装って昇進しなければよいのである。日本語のwikipediaには翻訳がないが、ディルバートの法則というのもある。最も非生産的なヒトはシステム的に中間管理職に追い込まれるという法則だそうだ。
しかしこれは管理されるヒトの理論だ。マネージャーを志すヒトは「有能」「無能」でヒトの質を判断してはいけない。出世したいヒトにおすすめする本は、イヤなやつほど成功する! -マキャヴェリに学ぶ出世術だ。こちらはマキャベリに学ぶ「イヤな奴になる方法」だ。例えば、時々訳もなく怒ってみる。すると相手はビビって敬意を払うようになる。組織の上の方の方々はみんな嫌なヒトたちなので、間違いなくあなたを上層部に引き入れてくれるだろう。どっちみちシゴトは誰かにやらせるわけだし、有能でも俺のためにシゴトをしないやつは潰してしまえばいいわけである。
さて、組織の中で生き残るためには2つの方法があることがわかる。一つは有能でいつづけることで、もう一つはいい人と言われたいという欲求を捨ててイヤな奴に徹する方法だ。どちらがよいのかはわからないし、生き残ることができたとしても、イヤなヤツ、無能なヤツ、有能だけどそれを表に見せないヤツばかりになったら組織は潰れてしまうだろう。こうした法則はいくつもあるのだが、やはり前提として退屈になるほど平和だった企業文化がある。
それはともかく、ピーターの法則のすごいところは、みんなが「ああそうだよね」と思うようなことについて、畳み掛けるように様々な事例を加えているところだろう。とりあえず数が揃うと、数式や調査がなくても人々は納得する。また、細かい事は忘れてしまうかもしれないが、大まかな「法則」は覚えている。こうした手法はいろいろな本で使われている。そうしたこともあってこの本は40年も人々に読み継がれているのである。


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