CNNは今回の台湾周辺への演習をどう見たのか

先日の記事では、今回の台湾沖演習は台湾だけでなく日本にも向けられた挑発行為であるというようなことを書いた。当然「ではどう対応しようか」ということになる。おそらく日本では様々な方面に配慮した報道が出るだろう。ワイドショーを見る限りは中国の脅威を宣伝するだけで終わっているようだ。そこでアメリカがどう見ているかという文章を探してCNNを読んでみた。著者はブラッド・レンドンさんという軍事関係のライターだ。






目的は台湾侵攻であって日本への攻撃ではない

レンドン氏の意見によると今回の演習のメッセージは台湾海峡の制圧に対する意思の確認である。つまり日本を攻撃しようという意図はないということになる。

さらにペロシ氏の役割はこの話題を新聞の見出しに押し上げただけだったといっている。中国はこの10年間以上の間着実に準備を進めてきておりお披露目の機会を伺っていたのだ。ペロシ氏の思慮を欠いた行動は単に中国にお披露目の機会を与えただけに過ぎず、早かれ遅かれいずれこのような事態は予想されていたということになるだろう。ペロシ氏の訪台はあらかじめ計画されていたとはいえその猶予期間はわずか2週間だった。2週間でここまで大掛かりな訓練は計画できないのだからこれまで準備を進めてきたものを実行したに過ぎないという説明は理にかなっている。

中国のシナリオはミサイル攻撃により台湾を外部から遮断するというものだ。中国はやる気になればいつでも台湾を孤立させることができるということになる。

レンドン氏は「アメリカはこの状態を大体予測していたようだ」と書いている。日本にどの程度の状況が伝わってきていたかはわからないものの想定の範囲だったようだ。

メインテーマは台湾侵攻であり、そのために沖縄からの米軍を遮断したい。ただし防衛省の出したミサイルとドローンの軌跡を見るとその協会は先島諸島・尖閣諸島と沖縄本島の間に設定されている。これらの島々が台湾と一体のものとして捉えられていることがわかる。さらにこの地域には我が国が貿易の多くを依存するシーレーンにあたる。仮に台湾と南シナ海が使えなくなると我が国の物流コストは大きく増加するだろう。

時事通信によると実際に物流への影響は出始めているようだ。

日本はどれくらいのコストをかけて何を守るのか

さて分析はここまでである。中国は台湾侵攻について具体的に何を考えているのかということを明らかにしてみせた。奇襲するつもりなら手の内は明かさないだろうから、軍事的な意思と実行力があることを示したのだろう。さらに今回は台湾侵攻だけでなく沖縄からの米軍のブロックというところまでは作戦に入っていたようである。最後に台湾が中国大陸との融和を望むなら中国はこうした軍事作戦を展開しなくて済む。もっとも台湾では「中国はやりすぎなのでは?」として反発する動きが出ているようである。これまでも共産党からの恫喝は続いており今更融和論が出るという状態ではない。

安倍元総理と総理に近い人たちは「台湾有事は日本有事である」と訴えてきた。確かにシーレーンの重要さを考えるとこれは頷ける。ではそれに向けてどの程度の対価を日本の納税者が支払うべきかというのが論点になる。

中国が台湾を諦めていないということは明らかになった。日本のシーレーンは台湾に依存しているのだからそれは守らなければならない。だから日本の納税者はこの地域を守るために出費を覚悟しなければならないということになる。だが一方で「狙いは台湾なのだからこの地域を切り離してしまえばそれほどの出費は必要がなくなるかもしれない」ということがいえる。日本本土侵攻という可能性は低いため「台湾が狙われたら次は日本だ」というのは過大な評価である。

具体策が明らかになったのだから「何かを守るためにどれくらいの対価が必要なのか」が計算できるようになった。

問題は議論の整理をする人がいないところなのかもしれない

ところが日本人は意思決定が極めて苦手である。様々な事象に配慮して取捨選択ができないからだ。例えば「台湾を中国に引き渡してシーレーンの一部を諦める」という選択肢もあるが、おそらくこれを具体的に提示すれば袋叩きにあうだろう。では「台湾侵攻が(例えばウクライナの戦争のように)長引いても援助を継続できるのか」という話になる。

具体的なシナリオを作って誰がかが話をまとめなければならない。ところが自民党の中だけをとっても対中強硬の保守派から中国ともうまくやってゆきたいという人たちまで様々な意見がある。ロシアに対しては強硬に当たるべきだという人がいる一方で「サハリン2の利権は守りたい」と考えている人もいるといった具合である。とにかく取捨選択ができないのだ。

さらにこの問題には「絶対にアメリカと追従した軍事作戦はやるべきではない」という対米強硬左派がいる。こうした人たちを具体的にまとめるリーダーでなければ、戦略的に状況をエスカレートさせている中国に対抗ができない。

さらにアメリカと中国はともに「次世代のリーダーが誰になるか」という瀬戸際にあり見込みが立ちにくい。アメリカはおそらく2年間は「レームダック」と言われる何も決められない状況に陥りそうだ。日本はこの間アメリカに依存できない上に下手をすればアメリカ自身が問題をエスカレートさせる当事者になるというリスクを抱える。

一方で中国は習近平国家主席3選がなかった場合のリーダーの顔が見えない。専制主義と民主主義という対立構造を作り出したい人たちは「習近平国家主席は3選目が確実だ」と主張する。だが、どうやらその権力基盤は盤石ではないようである。ところが習近平国家主席にはめぼしい後継者がいない。仮に習近平氏ではなくなった場合次のリーダーがすんなり決まるのか、そのリーダーがどちらの方向を目指すのかはよくわからない。

状況が動いたことで「このまま」という選択肢じゃ消えつつある。だがこれを選べば絶対に確実だという選択肢はない。流動的な要素が複数ありそれがたった数日でめまぐるしく変わるほど変化し続けているからだ。

こうした複雑な状況をまとめ上げ不満を持つ人たちを納得させるという意味では新型コロナ対策に似ている。新型コロナ対策では司令塔不在という状態が続いている。安全保障でもそうならないようにと願うばかりである。

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