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パキスタン連邦政府が再び週休二日制に 原因は電力不足と猛暑

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パキスタンが経済危機に見舞われている。連日最高気温が50度になるが経済を支える電力が賄えない。このためパキスタン政府は「労働日を1日減らし週休二日にするように」という通達を出したそうだ。ロイター通信の英語版に記事があった。

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スリランカほどひどくはないがパキスタンも経済危機に陥っている。このためイムラン・カーン首相への批判た高まり首相を解任されたばかりである。あとを継いだシャバズ・シャリフ首相は「労働生産性を高めよう」と連邦政府の一週間の労働時間を6日に増やすように通達を出した。パキスタントリビューンの記事によると当初は午前9時から午後5時までだったのだが、途中で変更になり、月曜日から木曜日は午後8時から午後3時まで働き、イスラム教の休日である金曜日は午後8時から午後1時まで働き、土曜日はまた午後8時から午後3時まで働くというスケジュールに変更された。

ところが労働時間が伸びたことにより電力と燃料の消費量が増加した。このためシャリフ首相は通達を撤回するとともに金曜日を在宅ワークの日にする計画も立てているという。連邦政府の職員に対する通達なので経済への影響は限定的なのだろうが象徴的な意味合いは大きいのではないかと思う。

パキスタンの電力不足は政府の失策の結果でもある。だが最近パキスタンは猛烈な暑さに見舞われている。もともとアラビアやイランの方から流れてくる暑い空気がたまる傾向にあるそうだが今年の暑さは異常なもので最高気温が50度になる日もでてきているという。熱波にさらされているのはパキスタンだけではない。インドの北西部や中部では最高気温が122年の観測史上最も高くなっているそうである。インドでは熱波の影響で学校の休校も相次いだ。迂闊に外に出て水分が取れないと死んでしまうほどの過酷な暑さなのだそうだ。

エネルギー価格の高騰によりパキスタンの国際収支は危機的なレベルに達しているがスリランカほど壊滅的な状況でもないためにパキスタンの事情が伝えられることはあまりない。

このような情勢にあるパキスタンなのだが国家破綻したスリランカほどひどい状態ではないためメディアで紹介されることはほとんどない。

一方で失職させられたカーン氏は納得していないようで「外国の策謀で失職させられた」として全国で集会を開いているという。少なくとも一部の国民からの人気は高いようだ。今後新首相の経済運営が滞ればカーン氏の勢いが復活する可能性もある。

混乱の原因はIMFの介入にある。IMFは援助と引き換えにパキスタンの財政を緊縮することを要求している。パキスタン連邦政府と軍は長い間癒着関係にあったために「軍に利益をながさないなら支援はしない」ということになったようだ。そこでカーン首相は支持を失い下野を余儀なくされた。とはいえ基本的な経済状態は変わっていないうえに猛暑までやってきたため新しい首相のもとでも混乱は収まっていない。

過去のニュースを振り返ると次のような経緯になる。

物価の高騰とカーン首相の下野を受けてIMFと交渉を始めたパキスタン新政権だったが、Bloombergは交渉がうまくいっておらず史上2回目のデフォルトに陥る可能性が残っていると書いていた。この間もカーン首相は納得しておらず「総選挙の実施」を要求していた。その後は「9億ドル」の支援で合意したとパキスタン側が報道陣に伝えたということだがIMFの側はコメント要請に応じていないとするロイターの記事が見つかる。

IMFとパキスタンの関係について検索したところ第一生命経済研究所のコラムが見つかった。IMFは支援を約束しているが条件がかなり厳しいようだ。IMFの援助を国民にばら撒かないように監視をしているためである。

パキスタンではIMFが日本の財務省のような役割を果たしているようだ。IMFは「このままでは大変なことになりますよ」「いつまでも援助はできませんよ」という警告を政治家に発している。これを国民向けにわかりやすく説明するのが政治家の役割なのだがパキスタンの政治家は説明をそれをやってこなかった。

結果的にカーン前首相はデモを扇動する。一方シャリフ首相は生産性を増すといっても連邦政府の職員を1日多く働かせるくらいの智恵しか思い浮かばない。あとはIMFの温情にすがるか中国に借金返済を待ってもらうくらいのことしか考え付かないようだ。中国は借金返済を遅らせても構わないといっているが第一生命経済研究所のコラムによると「首の皮一枚」という状態なのだそうだ。

いずれにせよIMFの援助は痛みを伴っている。パキスタンが燃料を買うための資金を提供をする代わりに国民に燃料費の補助をすることを禁止すればさらなるインフレにつながる可能性が高い。政府が説明しなかったとしても現実は国民に襲いかかる。このまま誰も説明責任を果たさないとすれば国民は建設的な解決策を求めるより単に「カーン首相の時代は良かった」と考えるだけなのかもしれない。

日本は過去の蓄積があるため国が借金をして再配分することができている。つまり、日本ではこういう問題は当面起きないとも言えるだろう。だが、このまま格差が拡大し国家経済が縮小すれば最終的にはパキスタンのような状態に陥りかねないということもいえる。

いずれにせよパキスタンの状態を見ていると「危機が訪れてから説明責任を果たそう」などと考えてももう手遅れであるということがわかる。

反省はできるうちに始めた方がいいと思う。

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