ざっくり解説 時々深掘り

穏やかに見えるが実は喧嘩屋のバイデン大統領に振り回される日本の経済安保

トランプ大統領と比べると比較的穏健だと考えられてきたバイデン大統領の様子がおかしい。この人は意外と喧嘩屋さんだったんだなということに気がついた。就任以来中国を刺激し続けてきており米中関係は一気に緊張してきている。今度は民主主義サミットなるものを開き台湾を招待し中国を招待しなかった。明らかな中国包囲網である。これで台湾海峡が緊張すれば日本の貿易レーンはかなり深刻な被害を受けるだろう。

ところが今度は国際協調スキームを使ってOPECプラスを怒らせた。こちらは日本の経済安全保障と密接にリンクしている。日本はアメリカが演出する緊張に巻き込まれて原油高・円安によって生じる悪性インフレに陥るという心配しなければならないフェイズに入ってきたようだ。

これまでの金融政策で動かなかった経済が一気に悪性のインフレに進む恐れ徐々に強まっている。

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この動きは何もバイデン大統領が一人で引き起こしてるわけではない。バイデン大統領の稚拙で拙速な外交手腕も問題なのだが対峙する中国の専制主義的な動きもあまり褒められたものではない。さらに付け加えるならば育ちはよくどこかのほほんとしている岸田総理大臣も状況を悪化させているように思える。

いずれにせよ原油高・円安が現実的な脅威になってきているのだから政権批判の前に生活防衛と資産防衛を具体的に考え始める時期なのかもしれないと思う。

バイデン大統領の動きはOPECプラスを刺激するだろうという指摘はかねてからあったようだ。石油備蓄放出は象徴的な意味合いが大きいわりに実行力に乏しい。さらに中国も協調すると約束したものの具体的な放出量とスケジュールについては明確にしなかった。そのためマーケットは先物価格の値上がりを予想した。OPECプラスが刺激されて逆に減産するかもしれないと予想したわけである。

時事通信の記事は一時ブームだったシェールオイルブームも収束してしまい脱炭素社会化も既定路線になっていることから産油国が自己防衛的な動きに出たと指摘している。「アメリカはこれからは産油国に依存しなくてもいい」というトランプ政権のメッセージも実現しなかった。アメリカは良くも悪くも民主主義に振り回される国であり継続的に信頼できる状態ではなくなっているようだ。

人の話を聞く岸田政権はこれ振り回されているといえる。防衛をアメリカに依存している以上アメリカと協調しないわけにもいかない。さらに低成長から抜け出せない日本への期待は低下しており長期的な円安要因にもなっている。これは安倍政権・菅政権の結果ともいえるわけで必ずしも岸田政権の問題ではない。

だが、政権があまりにも無策であることもまた事実である。

色々な記事を読んでいたらサウジアラビアのエネルギー大臣が「日本の新しい大臣が就任した時にお祝いの電話をかけたが、折り返し電話もない」と文句を言っているという記事が目に入った。この「大臣」が誰を指しているのかを記事は書いていないが産油国との関係をあまり重視していないのだろうということはわかる。岸田政権には政策通のエリートが多いわけだがそれがあだになっているようだ。「人間力」や「気配り」が軽視されている。

どうやら岸田政権は安倍政権とは真逆の政権なのかもしれない。安倍政権は政策にはたいした興味を持たず民主主義の維持にも興味はなかった。だがお付き合いだけはとても熱心に行っていた。経営には興味がなく株主への説明責任も果たさない営業部長が社長をやっているような政権が安倍政権だった。

一方で岸田政権は一見民主主義に対する理解は高いように思える。だが政策立案能力はできの悪い大学生に似ている。池田勇人総理の所得倍増計画やバイデン政権の政府主導の賃金引き上げなどを岸田ノートに書きつけてそのまま試験で書いているような感じなのだ。デジタル田園構想くらいはオリジナルだと思ったのだが大平政権で田園構想というのがあったのだそうだ。劇作家の山崎正和さんと政治学者の香山健一さんがまとめたものだったと東洋経済でジャーナリストの片山修さんが書いている。これも先輩のノートのコピーだったわけである。

政策通でもなく人間力にも乏しい岸田政権の隙を狙っているのが二階・菅ラインだ。長期政権の後では短期政権が続くと傍観の姿勢を貫いている。二階前幹事長はベトナムのファム・ミン・チン首相との会談に菅、森山両氏を同席させたそうである。超党派のつながりやベトナムとの継続的な関係づくりが二階前幹事長の強みなんだろうなと感じる。

日本の政治はどこまでも政策本位になりきれないのだが周囲の状況は「しばらく訓練してから徐々に経済成長を目指してくれればいいよ」などとのんきなことは言ってくれない。岸田政権はもう舞台に上がってしまったのだから総理大臣の役割を演じ続けるしかない。

ただそれを信任しているのは国民である。つまり最終的にツケを支払うのは一人ひとりの国民なのだ。

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