ざっくり解説 時々深掘り

どんな時に爆発的な変化が起こるのか

イノベーションを考えるとき「多種多様な状態」が何を示唆しているのかを知る事はとても重要だ。進化はなだらかに起きるのではなくある日突然爆発的に発生することが知られている。こうした進化の形態を断続平衡説と呼ぶそうだ。地球の生物にこういった変化が起こったのは、5億年前のカンブリア紀だ。これをカンブリア大爆発と呼んでいる。3種類しかなかった生物のグループ(門)がこのころ38にまで増えたのだそうだ。人間、魚、鳥といった動物からホヤに至るまでは脊索動物門という一つのグループに分類される。
「これがどうして起こったのか」については今の所定説がないようだ。この本では眼の誕生がカンブリア大爆発の原因になったのではないかと主張している。これ以前、光を感知するシステムはあったものの、光を脳で受け止めて像を結ぶシステムはなかったのだという。眼ができたことで補食活動が活発になった他、外観も重要になる。被捕食者は殻を作ったり運動能力を高めたりして生き残り競争が始まる。捕食者になったものは豊富な栄養が摂取できるようになる。カンブリア紀の三葉虫に眼が作られ、三葉虫の種類は爆発的に増える。その後なぜか「バージェス動物群」というように多種多様の動物群が現れた。三葉虫はペルム紀(約2億5000万年前)に絶滅してしまった。
この歴史を一般化すると、次のようになる。「最適」はストレートに生まれるわけではなく、壮大なムダの上に築かれているのだ。

  1. あるイノベーションが起こる。
  2. 過当な競争が生まれる。
  3. 試行錯誤の結果、種類が多様化する。
  4. それが整理され落ち着く。

過当な競争の結果進化が加速されるというのはなんとなくわかるようなわからないような考え方だ。競争圧力が強まるのだからだからそのまま絶滅するものが大多数なのではないか。これに応えるのがニッチという考え方だ。どうやら生物学でいうニッチは「AとBのすきま」という意味ではなく、新しい生活圏という意味らしい。例えばすべての生物が海に暮らしているとき陸はニッチだし、鳥などの飛ぶ動物がいない時には、空はニッチだ。ニッチに進出するには2通りの方法がある。一つは肺などの仕組みが発明され、陸に進出すること。もう一つは古い生物が絶滅して、その生物が占めていた所が空白になる方法だ。
カンブリア大爆発を起こした原因をイノベーションに求める説の他に、地球が冷えて(これを全球凍結という)環境が変化することに求める人たちもいる。恐竜の絶滅を説明するのによく引き合いに出される小惑星の衝突も環境的な変化だ。(ちょっと古いがWiredに記事が見つかった。)
一方、古い生物群が消滅するのにもいくつかの原因があるようだ。新しい競争に耐えられなくなるか、最適化が進みすぎて(大きくなりすぎたり、機能が亢進しすぎたりして)内部崩壊を起こすといった具合だ。だから閉塞的な状態が永遠に続くことは考えられない。だだし「変化」がいつもすべての人に快適なものだとは言えないし、変化の過程にいる人たちにとってそれはカオスにしか見えないだろう。


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