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ワクチンパスポート反対 – 尾身茂会長に対する言いがかり

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尾身会長のインスタグラムのアカウントワクチンパスポート反対のコメントが集まっている。なるほど、コロナに関しては尾身さんにクレームがゆくんだなと思った。菅総理不在の一年だったので人々は尾身会長をコロナの責任者だと思っているのだろう。

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実はこの点について全く整理ができていなかった。「ダラダラと緊急事態宣言状態が続きどうせ何も変わらないんだろうな」と思っていて政府が今何をやっているのかということに関心がなくなっているからである。そこで分科会はどんな提言をしているのかを調べて見た。

分科会はワクチンが打てない人もいるので「ワクチンと検査を組み合わせた仕組みを作るべきだ」という提言をしている。これをワクチン・検査パッケージと言っている。分科会は「今ワクチン・検査パッケージを言い出すと規制緩和が進んでいるという間違ったメッセージが伝わる」ということを懸念しているようである。一方、政府は「検査は自費でやれ」という提案をしようとしている。当初の検査抑制策からこの辺りの姿勢は一貫している。つまり政府は予算をケチっていて今もその考えは変えていないのだ。だからワクチン一本足打法になり尾身さんにクレームがゆくという循環ができている。

つまり政府が気にしているのは「国民というのは政府にタカるものだから、言いなりになっていてはお金がいくらあっても足りない」ということと「何もやっていないではないか」と批判されて有権者に投票してもらえないことだけなのである。

ではワクチンパスポートはどこから出てきた議論だったのか。それはデジタル庁の実績づくり議論だった。鳴り物入りで作られたデジタル庁だが目玉になるアプリケーションが欲しいという話だったのだろう。これも選挙対策だ。自民党は菅政権でこんな画期的なことをしましたよと言いたい。

本来ならば、ワクチンがいつまでに行き渡るというスケジュールがあり、その条件にあわせて行動制限の緩和をしようということになる。そのためにはワクチンを打っている人を識別しなければならない。だからワクチンパスポートを作りましょうという話になるはずである。これが総合政策の立て方だ。

そのためには例えば「今の新型コロナワクチンはどれくらいの期間有効なのか」という議論やワクチンを打てない・打ちたくない人はどうするという議論が先行すべきだ。

だが菅政権の議論はそうはならない。デジタル庁という箱を作った。箱を作ったから実績が必要だ。海外ではワクチンパスポートアプリというものがあるそうだ。だったら細かいことはまだ決めていないがとにかくアプリを作ろうということになる。全て選挙に紐づいている。

「なぜそうなったのか」はわからないものの自民党政権は長い歴史の中で総合政策を作ることができなくなっているのであろうと思える。かつては分配政策だけを訴えていればよかったのだがそれができなくなっている。このため有権者を引き付けておく自信を喪失しているのかもしれない。結果的に受け手は混乱してしまい「とにかく話を聞いてくれそうな尾身会長にクレームを入れよう」ということになる。

自民党がなぜ総合政策を作れなくなったのかはわからないのだが、菅政権が総合政策を作れなかった理由はわかる。菅総理は地方議会出身である。地方議会には総合政策の立案は必要ない。それぞれの政策が上から降ってくるので「それを我田引水して予算を引っ張ってくる」のが仕事だからである。菅政権は最後まで記者会見を広報の場所だという認識を変えられなかった。実際には国民から負託された権限をきちんと行使していますよと説明するのが記者会見なのだが、おそらく二元代表制でリーダーシップと予算分配が別れている地方政治では民主主義の根幹である委託と権限委譲というコンセプトが理解できなかったのだろう。

だったら次の政権に期待しようという話になる。

だが少なくとも河野総理大臣にはこうした政策立案能力は期待できそうにない。出馬の会見を少し見た。自民を変えるといって見たり、自分は保守だといって見たりまるで一貫性がなかった。ただ「自分はワクチン行政で素晴らしい成果を上げた」とは強調していた。一方で記者たちの質問も原発はどうするのかとか女系天皇論はもう諦めたのかとか安倍前総理との関係はどうなのかとか過去の行状にまつわるものに終始した。他の候補に期待するしかなさそうだが、少なくとも河野さんでは今のような混乱が続き、説明もされないという状態が少なくとももう一年か半年は続くことになるだろう。

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