小池百合子東京都知事と田村厚生労働大臣が揃って会見をした。これからは法令に則って協力しなかった医療機関の名前を公表すると言う。なぜ今までやらなかったのだろうか?と思ったがやらないよりはマシだなとも感じた。
最初はいよいよマスコミ報道が増えてきたので小池さんも何かをやらないといけなくなったんだろうなと感じた。だが自分だけで発表するよりも「国と協力していますよ」と見せた方が効果はありそうだ。そこで田村厚生労働大臣を巻き込んだのだろうと考えた。見た目を気にする小池百合子東京都知事らしいやり方だとも思った。
と同時に尾関東京都医師会会長がテレビに出てやたらと野戦病院について語っていた理由がわかった。東京都と厚生労働省は医師を動員したい。だが東京都医師会には協力の意思はない。彼らは自分たちの病院に患者が押し寄せて来ないように「野戦病院」を国や東京都に作ってもらった方がトクなのである。地方自治体・厚生労働省・医師会が一枚岩になれないのがよくわかる。
だが、たまたま見つけたテレビ東京の政治記者のビデオを見たことで「この推理は半分当たっていて半分間違えていた」ということがわかった。菅総理大臣が強い決意を「にじませていた」というのである。
ちなみにこれはまだ医療協力の発表が行われる前の見立てだ。
この記者は記者会見で「なぜ病床確保ができないのか」という質問をした。そして「総理の強い意志を感じた」というのである。つまり総理はやっと一つ踏み込んだというのである。と同時に「一般の人から見るとこれは伝わりにくいだろう」とも言っている。つまり総理大臣であっても「これをやるべきだ」と踏み出すことができないのが今の日本のコロナ対策なのだということがわかる。医師会に遠慮しているのである。
理由を考えた。
- 総理大臣は自分の考えに自信がない
- 自分が矢面に立って医師たちを動員すると恨まれるから言いたくない。
- 誰かに何かを強制するような嫌なことは部下にやらせたい。
背景にあるのは医師会とのギクシャクとした関係である。今の医師会は政府に物を言う立場であり官邸との間に良好な関係はない。相手がどう出てくるかわからない人に対して菅総理は自分の立場が説明できない。だから人を介したり裏から圧力をかけたりしてしまう。自分の能力に対する自信の無さと「圧力・恫喝」は裏表になっている。
さらに医師会を飛び越して法律で医師を動かすようなことをしたくない。医師会のメンツが潰れてしまうからだ。田村厚生労働大臣は厚生労働省を管轄しているので医師を直接動かしたい。ここに軋轢があったのだろう。結果的に法律を使って名前を公表することで病院を直接動かすことになった。
さらに、自分が長年汚れ役だったと言う経歴がかなり重荷になっているのかもしれない。安倍総理が表のきれいなところを担当していて裏の嫌なことをやらされてきた。自分は表舞台に立ったのだから誰か別の人が裏の汚い仕事をやるべきだと思っているのかもしれない。
なかなか病床確保が進まなかったり厳しい人流抑制策が出せない裏には「実は自分がやっていることに自信が持てず」「これ以上嫌われたくない」という気持ちがある。つまり「その程度のこと」で日本のコロナ対策が長い時間足踏みし大勢の自宅待機者が生まれた可能性が高い。だから日本のコロナ対策を進めるためには今日菅総理が辞任したほうがいい。
例えば田村厚生労働大臣も総理が裏で何を考えているのかわからなかったのではないだろうか。だが、周辺の人だけがわかる「ほのめかし」を行ったことで「あ、これは強いメッセージを発信しても総理から反対されることはないんだろうな」と感じて方針を転換したのかもしれない。つまり菅総理こそが田村厚生労働大臣の障壁だった。
ところが皮肉なことが起きている。菅総理を温存すればするほど自民党は自滅して行く。つまりすが総理こそが野党勝利の切り札なのだ。
これが横浜市長選で顕著になった。総理として応援に入るわけにはゆかないので個人名義のビラで浸透を図ったそうである。だがそれだけでは十分でないと言う焦りから補佐官を通じてにゼネコンへの働きかけを強めたことがわかっている。表にいる人間として誰かに恨まれたくないという気持ちと裏でやっていることの乖離が極めて強い。この働きかけも「恫喝だ」などと言われた。
自信のなさから裏で強い働きかけをしてしまうコミュニケーションが苦手な総理大臣はおそらく日本の新型コロナ対策の一番のネックになっているのではないかと思う。だが野党は「菅総理のままで選挙戦に突入してくれないか」と思っているようだ。
皮肉なことに菅総理は野党が勝てるためのカードになりつつある。彼の手法が強引で身勝手なものであればあるほど野党に有利に働く。これまで何かにつけ「総理辞めろ」と言い続けてきた野党は菅総理個人への攻撃を控えるようになるのではないだろうか。