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迷走し続ける菅政権の新型コロナ対策 – 政権末期だが代わりの総理もいない

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菅政権は新型コロナウイルス対策から撤退しようとしているんだろうなと思いながら様子を見ていた。この予想はある意味あたりある意味外れつつある。最初に話を聞いた時には1日「竹槍持ってコロナと戦えってか?」と腹を立てていた。だが1日経ってニュースを集めて見ると違った光景が見えてきた。もはや意思決定できない状況に追い込まれているのである。

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当初の予想ではイギリスの事例などを参考にしながら「高齢者はワクチンを打ったから重症化はしない」という雰囲気を作り、徐々に新型コロナ対策から撤退してゆくのだろうと思っていた。現役世代と子供達は置き去りになるが「かわいそうな例外」として見捨てれば政権支持率には影響しないだろう。これまで日本が一貫してやってきたシルバー民主主義が行き着いた先である。

自民党は高齢者に支えられた政権なのだからマジョリティを抱き込んでさえ置けば暴動は起こらない。だいたいこの方向に向かいつつあるのは間違いがない。棄民政策が進みつつあるわけだ。

しかし、やり方はあまりにも稚拙だった。厚生労働委員会の田村厚生労働大臣の答弁から想像すると、厚生労働省の一部が動き出し医師会も協力しなかったことで菅総理はおそらく今回の決定に追い込まれたんだろうなと思う。

田村厚生労働大臣は頑なに「誰と相談して誰が決めたのか」は言わなかった。尾身会長に相談しなかったことから流れをコントロールしたかったのであろうことはわかる。「国会には案として示しつつも事前に通達が出ていた」という話も出ていて混乱ぶりを伺うことができる。厚生労働省は暴走している。

おそらく相談を受けていたであろう日本医師会は「事前に相談も受けていないし、自分たちは自宅療養ではなく宿泊がいいと思っていた」などと言っている。医師に仕事が回ってこないならあとはお好きにどうぞということなのではないかと思う。

見れば見るほど誰が悪いという状態ではないことがわかる。もはや一体感のある塊としては動いていないのである。

総理大臣の二つの悪い癖が出た。自分たちの周りで意見を固めてしまい広く声を聞かない。その上やたらにリーダーシップや果断な決断を強調したがる。優柔不断さと無能力さがコンプレックスなのかもしえrない。騒ぎが広がってからも「撤回拒否」の構えは崩していない。

実際にはどんなやり取りが行われたのか。

総理大臣が突然「大胆な方針変換」を打ち出して5大臣会合の後日本医師会の中川会長と記者会見をしたことから医師会と事前にすり合わせていることは明白であろう。おそらく背景には東京都で入院できない患者が増えていることがあるのだろう。自宅療養者が10,000人を超えたそうだ。東京都のフォローアップセンターも対応が追いついていない。千葉県でも患者の選別が始まっているそうだ。

ただ東京新聞の菅首相「重症リスクの高い人以外は自宅療養」 政府、病床不足で方針転換を読む限り最低限の体制は整えると言っている。そして最終判断は都道府県に判断を委ねると言っているだけである。これが菅総理の認識なのだろう。

ただ、この時点から田村厚生労働大臣は「高齢者であろうが既往症を抱えた人であろうが在宅になるかもしれない」と言っていた。厚生労働委員会のやり取りを聞いてもかなり暴走しているように見える。

田村さんは5大臣会合に出ていたはずだ。あるいは言い出した人なのかもしれない。つまり菅総理と田村大臣の間でコミュニケーションが取れていない。田村さんは言ったつもりになっているのだろうが、菅総理はおそらくそんなつもりではなかったと思っているのではないかと思う。つまり西村大臣の「酒屋恫喝」と同じ構図がある。

おかしな兆候はそれまでもあった。カクテル療法と呼ばれる新しい治療法について菅総理は自宅療養でも使えるようにしたい。だが厚生労働省は抑制的な立場だ。不測の事態を恐れているというのもあるのだろうがおそらく薬剤が足りないのだろう。倉持仁という宇都宮の医師が出てきて「入院患者にしか治療薬を使えないので外来患者に対応できない」と不満を表明した。

菅総理は知事との説明で「既往症患者などはきちんと入院させる体制を作る」などと説明している。時事通信の記事を読むとそう読める。一方で「オンライン診療や往診」などという全く準備が整っていないありもしない前提を置いて「自宅療養を促進してほしい」などと言っている。厚生労働省も具体的な指針を示していない。「きっと厚生労働省はやってくれるだろう」という楽観的な見通しがあるのかもしれない。

中川会長は「緊急事態宣言を全国に広げよ」という。だが県の側は緊急事態宣言が出たからといって独自で強い措置を講じることはない。おそらく補償の裏打ちなしに事業者に恨まれるようなことは言いたくないしやりたくないのだろう。

知事たちはどの程度の中等症であれば入院できるのかと言う基準を作れと逆に国に要望したようだ。さらにロックダウンなどの厳しい措置を検討してほしいと言っている。時事通信の記事では小池都知事が出ているがおそらく知事たちは「国がなんとかすべきだ」と考えているのだろうと思う。責任を押し付けあっているのだ。

政権末期の混乱と言ってしまえばそれまでなのだがなかなかの惨状である。結果的に感染した患者たちは自宅に取り残される。ろくな薬も与えられずぱるすオキシメータという竹槍だけを渡されて「急変したら自分で連絡してくるように」と言われているようなものだ。尾身会長は入院患者も自宅待機も40代から50代が増えているようだと証言していた。高齢者に比べると体力はあるがそれでも急速に悪化しかねないという年代である。ワクチンでも救済されず、見捨てられるのはこの世代なのだなと思った。

いよいよ第二次世界大戦末期の状態に似てきた。中には玉音放送を出して天皇が強いメッセージを打ち出すべきだという人がいるがウイルスは玉音放送を理解しない。

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