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正しい新型コロナ対策のためには現状認識を常に更新する必要がある

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本日は新型コロナの感染拡大について考える。できれば野党の誰かがこれを読んでくれているといいなと思う。数だけに反応するのではなく質にも目を向けた上で、何が変わってきているのかを冷静に国民に伝えてもらいたい。

オリンピックはそのままやってもらっても構わない。野党はこれまでのメッセージを変えることになるだろうが冷静な状況判断であれば国民はついてくるはずである。

まず直近の現状をおさらいしておこう。

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見てわかるように数だけが報道されていて「緊急事態宣言だ」「大変だ」というようにしか読めない。一部の人は大慌てになるだろう。助かる命も助からなくなるという見出しも出ている。一方で「周りにコロナに感染した人はいないからまあいいや」という人もいる。諦めて緊急事態宣言に慣れる人も出てくる。

どうしてこうなるのだろうかということをこの数日考えた。おそらく感染者数だけが一人歩きし「中身」が全く伝わっていないのが問題なのだと思う。そこで中身がどうなっているのかを調べて見たのだが情報が多い割に分析はほとんどない。自分で情報を加工し海外の事例も参照すると「随分状況は変わってきているんだな」ということがわかった。

マスク

高齢者のワクチン接種が進み現役世代と子供(高校生や幼稚園児)の間で感染が拡大している。これが家庭を通じてワクチン接種が終わっていない現役世代に広まるという状態である。つまり現役世代のワクチン接種さえ済んでしまえばそれほど感染の拡大は恐れなくてもいいかもしれない。

参考になるのがイギリスの事例だ。Newsweekによるとイギリスでは成人の70%がワクチン接種を終えたそうだ。ジョンソン首相は7月19日に規制の撤廃を打ち出した。周囲からの反対があったようだが感染の拡大は抑えられたようだ。死者も重傷者も出ているが「かつてとは状況が違っている」という。

イギリスはワクチンが均等に行き渡っているのだが別の事例もある。それがアメリカである。

アメリカはワクチンが政治問題化していている。ワクチン接種を広げて経済を再開させたい民主党とワクチン強制を自由の侵害だと考える共和党で意見が割れている。このため全体に均すとワクチンのカバー率は49%だ。

自由推進派は当然ソーシャルディスタンスやマスクの強制にも反対している。BBCによるとワクチン接種が二回終わったところでは重症化が抑えられている。一方そうでない地域ではパンデミックが起きつつある。つまりアメリカ合衆国には二つの異なった「国・状態」があることになる。

今の日本にはワクチンの接種が進んだ高齢者ランドとワクチン接種が進まない現役世代ランドという二つの国がある。ワクチンの副反応(というより正常な反応だと思うのだが)による高熱が知られるにつれて「リスクが少ない若い人はワクチンを接種しなくなるのではないか」と思う。

小池都知事はかなり冷静に若者へのワクチン接種を訴えているのだが菅総理が全く動かない。ここは野党が一丸になって同じメッセージを発信すべきである。オリンピックがどうだとか本多議員がどうしたなどといっている場合ではない。

さらにワクチン接種が進んでいない幼稚園や高校でアウトブレイクが起きる可能性がある。感染力が強いが無症状者が増えるということだからコロナウィルスが学校や幼稚園を媒介に現役世代の人たちの間に広がる恐れがある。

例えば千葉市若葉区の幼稚園では園児59名と職員8名が感染するクラスターが発生している。NHKの報道によると196人(園児+職員)のうち34%が感染したそうだ。高齢者の病気であるという印象があり対策が十分ではなかったのだろう。古い情報を捨てて新しい情報を入れるような政府広報体制を打ち立てない限りは子供達の感染を防ぐことはできない。またワクチン接種が進むまでの間、子供達を通して父母がリスクにさらされるという状態がつづく。本当に幼稚園をこのまま開き続けていいのか9月に高校を再開していいのか今から議論すべきである。

このルートの先をゆくのがイスラエルだ。こちらは英語版で調べた。7月7日のロイターはワクチンが感染を防ぐ率が64%に低下したと伝えている。7/23のNBCはさらに34%になったと言っている。ただし入院は88%で防がれており91%が重症にならなかったとも言っている。半数以上が子供なのでティーンエイジャーにワクチンを接種させる計画があるそうだ。またワクチンの効果は4ヶ月から6ヶ月で切れる可能性があるという。そこで三回目の接種も検討されている。

イスラエルの感染再拡大がなぜ起こったのかはわからない。社会的距離の制限が緩和されたために感染力がより強いデルタ株が蔓延した可能性があるようだが詳細はわかっていない。だがこれまで感染の枠の外にいた若者に感染が拡大しそれが染み出す形で感染の再拡大が起こっていることがわかる。飲食店対策も重要なのだが若者対策も早急に進める必要がある。もはや菅政権にこうした視点の転換を求めても意味がないだろう。

菅総理は自分が押し通したいシナリオを決めてそれに合ったデータをつまみ食いするやり方を長らく続けてきた。だからおそらく菅政権には政策を立案する能力はない。つまり、菅政権を温存すればそれだけ国民生活への傷は広がるだろう。飲食店は意味のない倒産をさせられ現役世代は必要のないリスクにさらされる。子供達の健康にもおそらく影響は出るだろう。

ところが野党の方もこれまでの思い込み(数が増えたら病院が大変なことになる)を持っていて「とにかくオリンピックのようなビッグイベントは今すぐ中止しなければならない」と考えている人が多いようである。だがおそらく重要なのは「新型コロナウィルスの挙動はかなり変わってきていますよ」という情報発信をすることと新しい現状認識にあった新しい作戦を立てることである。ワクチン供給計画を情報を独り占めしている河野大臣から引き剥がす必要もあるだろう。「今どこまでわかっているのか、いつになるとわかるのか」ということがわかればそれまでの間どう防衛するかという作戦が立てられる。

とにかく「ビッグイベントがいけない」とか「政府のやり方がいけない」いって政府を非難している限り野党もまた新しい体制を作ることはできない。限られた情報から常識を常にアップデートできる政党が次の政権を担うべきなのである。

自己変革が求められる。

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