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北極海と政治

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北極海が熱い。ロシア側の氷が溶けて島が発見されたこともあり航路として利用できるようになりロシアの領土も増えているそうだ。ロシアは北極海のルールは俺たちが決めるとばかりに権利を主張し始めている。

一方で、内政の事情から政治的アジェンダを必要としているアメリカは国際社会をまとめ上げて「航行の自由」を主張している。これが南シナ海の事情とリンクして中国を巻き込んだ対立に発展しようとしている。

北極海は今や国際政治のホットスポットになりつつある。

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様々な変化が背景にあり、最終的にどういう形で落ち着くのかが見えないのが現状である。

  • 地球温暖化という環境変化
  • 欧米を中心にして作り上げてきたいわゆる国際秩序に対する反発とそれがもたらす混乱
  • 通商の自由を前提にした自由主義経済の恩恵とそれが失われることによって生じうる優位性の喪失
  • 民主主義が絶対でなくなることにともなう「人権擁護」や「立憲主義」といった価値の喪失

日本はいわゆる西側陣営なので「ロシアや中国が国際社会に挑戦するのは許せない」という感想を持つ人が多いだろう。航行の自由が損なわれれば日本の貿易は大きな影響を受けるだろう。特にエネルギー関係の打撃は大きい。

直接的な影響のほかにもアメリカの弱体化という問題がある。彼らはこの弱体化をアメリカ式議会交渉術で乗り切ろうとしている。おそらくこれは大変危険な動きである。

北極圏の経済開発について話し合う会議体がある。国内問題が行き詰っているアメリカには外交を通じて同盟国と自国民の気持ちを繋ぎ止めたいという動機を持っている。事前同盟国に諮って「ロシアが航行の自由を踏みにじっている」として会議の開催を働きかけた。この会議は5月20日に行われたのだが全く二つの評価が出ている。

全く違った記事が出てしまうのは本来意味のないところに意味を作ろうとしているからである。その意味ではトランプ政権よりも乱暴な政権だ。

議会対策が得意だったバイデン大統領がおそらく同じようなことを外交でやろうとしているのだろう。民主主義的な伝統があるアメリカでさえこのやり方は大きな分断を生んだ。共和党支持者がバカな人たちだというレッテルを貼られ、反発からトランプ政権が生まれてしまったのである。バイデン政権は同じ図式を国際社会に作ろうとしている。民主党に当たるのが欧米と日本であり、共和党に当たるのがロシアと中国だ。

一見これまでの国際秩序を維持するためには重要で意義がある動きに思えるわけだが、実際にはそうなっていない。そもそもの動機がアメリカの弱体化の隠蔽だからだ。力を背景にして世界秩序の維持を図ってきたアメリカだがこれを短期的な議会戦略に置き換えようとしている。失敗は目に見えている。本来勝てるはずだったものが負けてしまううえに収拾がつかなくなるというのがトランプ政権の教訓だ。

日本人は過去の延長で未来を見てしまうのでこの変化に気がつかない。だから「勝ち組に乗っているつもり」でつい調子に乗ってしまうのである。

オリンピックでも同じ動きが起きつつある。アメリカでは人権問題を盾に北京オリンピックを政治的に無視しようという動きが出ている。だが、共産党政府はおそらくデジタル人民元などのショーケースとして利用するだろう。ワクチン(公衆衛生だ)の供給や次世代型の通貨のお披露目の舞台として「アメリカなきオリンピック」は格好の舞台になる。トランプ政権と違って共産党政府は粛々と足場を固めている。

こうした動きをいち早く察知して国際政治に対する見方を切り替えてゆく必要があるわけだが、おそらく旧型バージョンの自民党政権ではこれに対応できないだろうなあと感じる。

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