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48億円を無駄にした菅官房長官の恫喝体質

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菅官房長官(当時)肝入りで進められた警察関係の施設のコロナ病床転用がうまくゆかず48億円が無駄になった、今回はこのAERA.dotによる記事を読み解く。Twitterで話題になり菅総理は無能だの大合唱になっている。だが総理大臣への批判が起こるとそのカウンター言論も盛り上がる。「実は無駄ではなかった」「野党は反対ばかり言っている」と反発する人が出てくるのだ。日本人は政治議論ができなくなった。

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まず記事を丹念に読んでゆく。菅官房長官の思いつきでオリンピックの警備関係者の宿泊施設がコロナ病床に転用されることになり和泉補佐官が実作業を主導した。菅官房長官はAという病院を斡旋した。予算は警察庁の予算を使うことにした。

当時は新型コロナウイルスについてよくわかっておらず様々な議論ばかりが先行していた。とにかく事業を始めてみるという意味では決して悪い動きではなかっただろう。だが進め方は極めて杜撰だった。

「和泉補佐官はA病院と話が付いている」と言っていた。だが実際の設備計画は杜撰なものでとても検討に値するものではなかった。東京都と厚生労働省は「聞かれたことは答えたし協力するところは協力した」と言っているが東京都は「自分たちの計画にはとても使えそうにないから使わなかった」とも言っている。厚生労働省も自分たちの計画ではないので詳しいことはよくわからないとの一点張りである。

予算上主体となっているのは警察庁だが「自分たちはお答えする立場にはない」との一点張りである。そもそも警察庁にコロナのことなどわかるはずはない。

この記事を読んですぐにわかることは「誰も当事者がいない」という点である。専門知識を持っていて主体者となるべき東京都と厚生労働省は他人事だと考えている。だが警察庁も形式上は予算と責任を持っているものの自分たちの問題だとは考えていない。

ここでそもそも「当事者意識」はどのように生まれるのだろうか、という疑問を持つか持たないかでこの問題の読み方はずいぶん変わってくるように思える。

もう一つわかることは菅官房長官が自分のコネで問題を解決しようと考えているという点である。東京都も厚生労働省も動いてくれない。総理官邸としてはなんとかしないと支持率に問題が出る。そこで菅官房長官は自分の人脈から病院を見つけ自分に近い和泉補佐官になんとかさせようとしたのだろう。和泉補佐官は医療と地域活性化を担当していることになっているのだがおそらくコロナの専門知識はなかったものと思われる。つまり和泉補佐官に予算を独り占めさせるべきではなかった。

おそらく安倍官邸には当事者意識はあっただろう。失敗すれば支持率が下がる。だが残念ながら専門知識は持っていない。予算(警察庁)・専門知識(東京都・厚生労働省)・当事者意識(安倍官邸)がバラバラになっている。

最も平たい言葉でいうと「ワンチーム」になっていないのだ。これがこの事業の構造的な問題点である。

だから問題解決のためのアプローチには少なくとも2つのものがある。

1つは「責任は俺がとるし予算も面倒見てやる」として関係者に意見を自由に言わせるという昔ながらの方法である。部下たちは失敗のリスクを恐れて関与したがらないのだからそのバリアを取っ払って「ワンチーム」にすればいい。

普段から人事を恫喝に使っていて結果が悪くなると部下を切り捨ててきた安倍政権を信頼する人などもはや誰もいないだろう。厚生労働省が安倍官邸を信じることはないし東京都の人事は菅総理が握っているわけではない。「普段は自分たちをいじめてくる官邸が焦っていると」他人事だったのだろう。

もう一つのアプローチは東京都に必要な予算と権限を渡してやることだ。この場合警察庁予算を解放し、警察の土地も使っていいよといって手放してやる。そうすれば東京都は自分たちの問題としてこの土地を有効活用していたことだろう。

最初のアプローチは昔ながらの中央集権的なやり方でありもう一つは地方分権的なやり方である。つまり「問題解決」があり「問題解決のためには誰に予算を任せるのがいいのか」を決めて「結果責任を取らせる」ようにすればいい。結果責任とは「うまく言ったら褒賞を与え、悪ければ更迭する」ということだ。人事は通常このように利用すべきである。これが行われなかったということはそもそも8年間の間安倍政権が問題解決をしない内閣だったということを意味しているのではないかと思われる。

いずれにせよ「自分のいうことを聞いてくれる人は取り立てるが逆らう人は容赦しない」というように人事を私物化してきた安倍・菅政権にはそもそもこうした結果責任による評価などできるはずもない。だから、安倍・菅恫喝人事が48億円を無駄にしたと言える。

おそらくこの無駄はこれから先も続くだろう。

例えばワクチン高齢者接種で自衛隊を使った計画を立てているようだ。おそらくその計画には杜撰さがあることが予想される。警察を自衛隊に置き換え、和泉補佐官を河野太郎行革大臣に置き換えただけだからである。

実際に河野太郎行革大臣と菅総理が前のめりになる一方で岸信夫防衛大臣は「そんなことは無理だ」と言っていたと伝えられていたが、国会の予算委員会で岸信夫防衛大臣は担当者として答弁していた。岸さんにどの程度の当事者意識があるのだろうか?と感じたがそれは本人にしかわからない。やれと言われたからやったが最初から上手く行くとは思っていなかったなどと後から言い出しかねない状況である。

だがこの話には救いがある。48億円が無駄になったのは菅総理の個人的な資質の問題だ。恫喝者としては優秀だったが指揮者としての才能には恵まれていないようなので指揮官を変えればおそらくこの問題は簡単に解決する。

問題の構造はおそらくシンプルなものであり、解決策も「昔風」と「現代風」の二通りがある。だが記事を読まずにヘッドラインだけを見ると「菅総理が悪い」「菅総理を批判する奴が悪い」という不毛な対立にしかならない。おそらく最終的には自民党が菅総理を取り替えて問題解決するだろうが、その間の持久戦に多くの人が巻き込まれてしまうかもしれない。決断は早い方がいいように思える。

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Comments

“48億円を無駄にした菅官房長官の恫喝体質” への1件のコメント

  1. […] 48億円の無駄のところでも見たのだが、菅総理とその側近が当事者としてプロジェクトを抱えてしまうと周りにいて専門知識を持っている人たちがプロジェクトから撤退してしまう。傍 […]