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世界には戦国時代のように紛争の多い地域がいまだに残っている

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ベルギーとフランスの国境問題

ベルギーの農家、うっかり領土「拡大」 国境の標石動かすというニュースがあった。農作業の邪魔になるからと国境の標石を移動させたことで「すわ国際紛争か」という事態になったそうである。

両国民は面白ネタとして扱っているようなので、ヨーロッパでは国境が有名無実化していることがわかるが世界にはもっと深刻な事態を抱えている地域もある。中には日本の戦国時代を思わせる紛争もある。

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チャドのクーデーター

人口1600万人のチャドで政変があった。選挙の後、再選された大統領が自ら軍隊を引き連れて反政府勢力と戦っているうちに何者かに殺された。最初は敵に殺されたのではと思ったのだが、どうやら事情が違っていたらしい。政変が起きたのである。

程なくして軍が状況の収拾に乗り出した。担ぎ出されたのは息子である。息子が首謀者だったのかそれとも軍に担がれたのかはわからない。

チャドの大統領は30年もトップに君臨していたそうである。反対派は「クーデーターだ」と言っているのだがクーデターだとしたら半ば官製のクーデーターということになる。いずれにせよ「あの選挙はなんだったのか?」ということになるわけだ。国民意識が希薄な多民族国家で権力が世襲された。

チャドの民族はほどんとスーダン系だそうだが南部のキリスト教地域と北部のイスラム教地域に別れている。独立直後は内紛が絶えなかったそうである。可住地域の更に北には砂漠がありリビアと国境を接している。リビアから介入があるが、デビ政権も中央アフリカに介入を繰り返していたという。

まるで戦国時代の話を書いているようだが、これが中部アフリカの実態らしい。

結果的には息子の父親殺しということになる。ギリシャ悲劇では主人公はこのあと大葛藤に陥ることになるはずだが、アフリカの場合はどうなるかはわからない。

詳しい人は「フランスの関与があったのではないか」という。調べてみると確かにチャドはフランスと防衛協力を結んでいるそうである。あの一帯はもともとフランス領だったという経緯があり、いまでもフランスとの関係があるそうである。フランスは植民地解放後も根本的な解決はしないで各国政府を裏から支援して利権を守っているのだろう。

キルギスとタジクの争い

キルギスの南西部でタジク人との間に衝突があった。キルギスとタジク、軍衝突 国境地帯の水争い、死者31人という記事ではキルギス側の死者を伝えているが、タジク側でも死者が出ているという。日本のメディアはやたらと「旧ソ連構成国と」書いているのだが事情はもっともっと複雑のようだ。

キルギス南西部バトケン州を地図で見ると、山がちなキルギスから平地に突き出したところでだ。このあたりはカザフスタン、ウズベキスタン、タジク、キルギスの4カ国の国境が入り乱れている。天山山脈からサマルカンド川に流れる川はありそうだが農地になるところは少なそうである。

キルギスは2020年10月に大規模なデモがあったばかりである。議会選挙の結果が気に入らないというのが理由だった。選挙前にアタムバエフ前大統領が不正で捕まっていて奪還運動も起きていた。この時も旧ソ連というような言われ方をしたのだが、どちらかというと韓国のような氏族社会を想起させた。地域で氏族が分かれており民主主義がうまく機能しないのだろうと思ったの。

今回もデモがあったのだが「国がやらないなら自分たちが戦う」というデモなのだそうだ。国に「弱腰だからなんとかしろ」と言っているわけではない。この辺り、自分たちは戦うつもりがないがやたらに中国に強気になりたいために「憲法改正を」という日本人とは全く違っている。土地と利権の確保は自分たちの血を流してでも子孫に伝えるという国柄なのかもしれない。

だが、一旦国内に武器が持ち込まれれば氏族間の争いにも利用されるかもしれない。汚職で逮捕された前大統領の奪還を試みるような人もいるのだ。

水の権利をめぐって住民同士が争うというのも日本では江戸時代以前の話のように感じられる。だが違いもある。

キルギスは氏族社会なのだが、地域にはタジク人という全く別の人たちが住んでいる。タジク人はイラン系の遊牧民族なのだそうだ。一説にはスキタイの子孫であるなどと言われているらしい。

アフガニスタンの民族はパシュトゥーン人が主要民族だがイランのペルシャ人からみると辺境民族であり差別意識がある。タジクはそのさらに外側にいる。タジクのうち英領に残った人たちはアフガニスタンでパシュトゥーン人と共存し、ソ連の支配圏ではタジクという独立した国を作ったのだろう。

アフガニスタンのカブールからタジキスタンのドゥシャンベを経てウズベキスタンのサマルカンドに向かう通路がある。ここからウズベキスタンの首都のタシケントを経てアラル海まで抜ける通路になっている。

往来通路にそってトゥルク・イラン・モンゴルなどが行き来して複雑な民族構成が生まれている。

西側先進国とは全く違った世界

今回はアフリカと中央アジアの「まるで戦国時代のような」様子を見た。日本と似たような側面もあれば、全く違った側面もある。どちらも諸民族が入り乱れる地域になっていて「まとまった民族が国民国家をつくって安定する」素地がない。このため我々が考えるような尺度で語ることがなかなか難しい。ヨーロッパでは国境の勝手な移動が笑い話になったりするのだが、実際に血を流してでも国境を守ろうとする地域もあるということになる。

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