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コロナワクチンナビをめぐる混乱 – 政府広報がないと言う不幸

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テレビで「今日から自治体で新型コロナワクチンの接種が始まった」とやっている。これを見てパニックに陥っている人を見た。視聴者というのは思いもよらない反応を示すようである。

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まずパニックの内容である。コロナワクチンナビというものがある。接種会場が直ちに見つかることになっているのだが検索しても何も出てこない。ただ「まだ登録が済んでいない」とは出てこないので「見つかりませんでした」と表示される。これでパニックを起こしたのである。

実際には「検索ワード」がわからないと絞り込みができないようになっている。千葉市の場合千葉市若葉区とは登録されておらず、若葉区とか中央区などとなっているのだ。このため「千葉市若葉区」で絞り込むと「指定した条件に該当する医療機関・接種会場が見つかりませんでした」と出てくる。また[絞り込み]を押さないと病院名が出てこないため「とにかくなんでもいいからキーワードを入れよう」などと思ってしまうのだ。

正解は「キーワードを入れず絞り込みを押す」ことだ。コールセンターはそう言っていた。

本来のUIでは千葉市のページを全件表示しておいて「絞り込む」で減らしてゆくようなUIにしておけば無用な混乱は避けられる。たぶん発注者側にその単純な発想ができないのだろう。だから「見つけられない・動かない」と言うことになり不安になる人が出てくる。普通のWebディレクターなら友達にでもやってもらって「あれ?検索できないね」となればラベルを変えるなり仕様を変えるなりするだろう。

つまり今の政府にユーザー目線でシステムチェックをするプロデューサシップが欠けているのである。

今後、ワクチンの準備が整うまで高齢者は毎日このページをチェックして「いつ予約が開くか」を確認しなければならなくなる。かなりフラストレーションがたまるはずだ。千葉市はワクチン全体の進捗を示すウェブサイトを準備していないのでいつ開くかもしれない予約開始を待ち続けることになる。

常識的には「結果が出てこないなら」「まだ準備ができていないのだろう」と思う。だから登録されていないのであろうと類推するのである。これではいつまでたっても予約画面にはたどり着けない。高齢者はパソコンが扱えたとしてもどこか心許なさを感じている。だからここで不安になってしまうというわけだ。コールセンターに問い合わせが殺到しかねない状況になっている。コールセンターは地方自治体毎にあるために厚生労働省には情報は集約されない。

輪をかけてひどいなと思うのが政府の思惑だ。できるだけ「遅れている」と思わせたくないのだろう。これに河野太郎ワクチン担当大臣の悪癖である目立ちたがりグセが重なり、状況を極めて深刻なものにしている。

例えば千葉市のページには次のように案内されている。接種券は4月20日までに送られてくる。80才以上の高齢者は4月下旬から接種ができると書いている。これを見れば誰でも「自分は80才以上だから4月下旬からワクチンが打てる」と思うに違いない。いわゆるやっている感のためにわかりやすさが犠牲になっているのだ。

河野太郎大臣は「ワクチン接種の準備はうまくいっている」と見せたい。つまりこれは政府広報になっている。ところがどうやら「ワクチンの準備はうまくいっていないらしい」と言うことを我々は知っている。日曜討論では「予想以上の申し込みがきているから接種スケジュールを見直した」と言い訳していたのだが、みな「結局調達に失敗したのだな」「だったら私だけでもいち早くワクチンが打てる病院を探さなくては」と思う。

全体を見回して調整しわかりやすく伝えるプロデューサと広報マンがいないのだと気付かされる。

冷静に考えるとしばらくはワクチンを打てるようにはならないだろう。そもそも今問い合わせても市役所には情報はないはずである。新聞報道にはそう書いてあるし河野大臣もそう説明している。自治体が接種会場を登録できないのは当たり前である。まだ自治体に一箱しかきておらずゴールデンウィークにならないと自治体への配送は始まらない。

高齢者向けのワクチン接種は12日から開始されるが、当初は数量限定で全国の市区町村に行き渡るのは26日からの週になる。政府は全国の1741市区町村に1箱ずつ配った上で、2週間かけて全国に4千箱(約390万回、約190万人分)を発送する予定で、大型連休中に接種を希望する自治体に対し配送する計画だ。

ワクチン配送量、近く自治体に伝える考え 河野行革相

河野太郎大臣の「やってる感」の演出と実行力の間には悲劇的な乖離がある。だから本来は側近なり広報のエキスパートが「調整」してやらないといけない。ここで改めて思う。政府広報は政治家のパフォーマンス誇示ではない。国民目線で政府がやっていることを見ていて適宜調整することも仕事に含まれるのである。安倍菅政権はこの国民目線を忘れ去った政権と言える。

菅総理によって取り立てられた山田広報官は総理の威光を笠にきて権力を振りかざしてきた。特にNHKのニュースウォッチ9の報道内容について「総理が怒っていますよ」と恫喝したのではないかという噂は記憶に新しい。側近たちもまた自分たちの地位の保全のために政府広報の意味を取り違えているようだ。

NHKは政府と切り離された権力監視装置として機能すべきだという意見がありこれはこれでもっともなことだと思える。最近多くのジャーナリストがクロ現騒ぎでNHKをジャーナリズムだと考えるようになっている。実際には広報装置としての役割があるのだが「できて当たり前だから」という理由であまり着目してもらえないのである。

繰り返しになるが、政府広報とは権力を持ち上げて「全てのことはうまく行っていますよ」と宣伝することではない。それは政権宣伝あるいは単なるプロパガンダだろう。常に国民目線を忘れず、政府の実施する政策がどのような意味を持ちどう進捗しているのかということを正しく伝えることができてこその広報なのである。

今回の「広報不在」を見ると政府広報には幹部スタッフの一部として経営陣に意見が言えるくらいの権限が必要だということがよくわかる。よくIR(イベスターリレーションズ)と言われる株主投資家対策の担当役員はそれくらいの権限を持っている。そうしないと株主から見捨てられてしまうからだ。

日本には統治を学べるエリート教育がないために一般の会社の幹部育成プログラムのようなものがない。だから広報が単なる大本営発表だということになってしまうのかもしれない。また、日本株式会社の株主である有権者は甘すぎると言える。政府批判も単なる「政権打倒プロパガンダ」になっている。

政府に文句ばかり言っていると思われるかもしれないのだが、気持ちとしては「政府にとやかく言っても仕方ないな」と思っている。

とにかく一度自分でコロナワクチンナビを試して見るといい。65才以上でないと関係ないのだが、ご両親や近所の高齢者も「情報が探せない」と悩んているはずである。接種券がきて慌てて電話をしてもコールセンターは電話が殺到するだろう。問い合わせるなら今のうちである。そのためにはまず使って見ることをオススメする。

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