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アメリカ人は卵かけご飯を食べない – 生卵をめぐる日本とアメリカの違い

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日本で暮らしていると当たり前のことが外国では当たり前でないことがある。生卵をご飯にかけて食べる人がいるがアメリカでは危険な行為だと考えられている。今回は生卵について考える。

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多くの人が卵かけご飯を食べるとき「もし死んだらどうしよう」などとは考えない。卵は安全だとみなされていて、TKGなどと可愛げのある名前に略されることもある。イタリアでも生卵をゆでたてのパスタに絡めて食べるような食べ方があるそうだ。ところがこれをアメリカ人に言うと怪訝な顔をされるそうだ。アメリカでは生卵を食べる文化がないからだ。

とはいえアメリカ人も知らないうちに生卵を食べていることがある。それが半熟卵である。両面を焼くが黄身は半熟のままというオーバーイージーという食べ方もあるそうだ。またシーザーサラダのドレッシングにコクを出すために卵黄を加える店もあるのだそうだ。

2010年のNewsweekの記事に「アメリカでサルモネラ菌食中毒事件が起きて大騒ぎになっている」というものがあった。FDAは卵はできるだけ火を通して食べるようにという通達を出したそうだ。もともと生卵をあまり食べる文化がないがゆえに安全な卵の流通が促進されない。そこで事件が起こると「禁止」の方向に動く。ますます生卵が忌避され「卵かけご飯など危険だ」ということになってしまうのである。

日本の養鶏業者が入ってきて成功しているということも書いてある。それだけ日本の卵の品質管理が優秀ということなのだろう。

こういう記事を読むと日本はどうやって生卵流通の安全を保っているのだろうという気持ちになる。もしかして政府が厳しい規制をしてようやく卵の安全が守られているのではないだろうか。

そこで生卵・規制と検索をかけてみた。食品安全委員会のウェブサイトには2016年にもアメリカFDAが生卵について注意喚起したと書いている。だが日本では業者が留意することで卵の安全を守っているという。つまり国の規制という考え方がそもそもないのである。

日本人はどう頑張っても民主主義が理解できない。所詮は外来文化だからだ。だが生卵は日本人の中に文化として根付いているので、努力をして安全を守ろうという気持ちになる。こうして我々は今でもTKGを食べ続けている。

養鶏が汚染されていない限りサルモネラ菌は殻の外側で繁殖する。だから、殻にヒビが入っているというようなことでもない限り生卵は安全なのだという。ただし時間が経つと外の菌が中に侵入してくる。

食品安全委員会の別のPDFを調べて見た。委員長代理佐藤洋さんという人のコラム記事である。この中に裁判の話が出ていた。産経新聞の記事が残っていた。

2011年に宮崎県で生卵入りオクラ納豆を食べた70代の女性がなくなった。養鶏業者が訴えられ敗訴したそうである。卵のパック詰め作業の際の洗浄が不十分でサルモネラ菌が広がったというのだ。記事は「日本では生卵で食べることが前提になっているから」安全管理義務があると判断されたと書かれている。それでも10万個の卵を検査すると3つの卵からサルモネラ菌が出てきたという研究事例があるそうだ。つまり生卵のリスクはゼロではないということになる。

この判決からはいろいろなことがわかる。アメリカで同様な事例が出ると「生卵を食べるな」という話になるが日本では「それが常識だからもっと管理を徹底しろ」という話になる。つまり文化として根付いていると規制は必要がない。

表示基準を設けたりしているようである。「万が一、殻にサルモネラ菌がついていても冷蔵庫保存で中に侵入しない期間」が消費期限とされているそうだ。また表示義務も厳しくなりさらにサルモネラ菌の汚染事故は減っているそうである。

日本人は民主主義は守らないが卵の安全は守る。人々の気持ちに根付いているというのはそういうことなのだろう。

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