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日本政府は心情を優先し意思決定ができなくなっている

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Twitterを見て書くことを決めることがある。菅総理が「東京の感染者の6割が経路不明だがそのうちの大部分が飲食店由来」と説明したといって怒っているアカウントがあった。経路不明なのになぜ中身がわかるのだというのだ。本当に総理がそんなまとめ方をしたのかと思ったのだが総理にはあまり当事者意識はないのかもしれないなと思った。テレビ朝日の報道ステーションでの説明だったようだが随分評判が悪かったようだ。

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尾身茂会長が総理と並んだ席で説明したのはこういうことだった。

東京は匿名性が高く感染経路が追えないことが多い。だが地方は経路が追えるものがある。主な感染源は外食と家庭だ。外食で「もらって来て」家庭で広げるとしたら抑えるのは飲食であろう。だいたい3割か4割になる。

このとき、尾身会長は「だから(直接)東京のエビデンスはない」と説明していると留保条件をつけていた。科学的類推である。つまり「東京と地方が違う結果が出た」時には再検証が必要だ。場合によっては東京の匿名性に抵抗するために「調査に強制力を持たせるような」法整備が必要になるかもしれない。これは本来政治の役割だ。

命も暮らしも助けるために新型コロナウイルスを広げないと決意すれば実はやるべきことは明確である。そしてその裏側にあるロジックもそれほど複雑なものではない。

この記者会見での説明は簡単なものに感じられるが情報の伝達具合を見ているとおそらく「そうでない」日本人の方が多いのかもしれないなと思う。心情に情報を合致させようとしてしまうためである。すると途端に情報量が増えて意思決定が難しくなるのである。心情分析の先端にいるのが人生相談をウリにする「庶民派総理」である。目も当てられない。

仮に菅総理がテレビでわけのわからない説明をしたとすると菅総理の頭の中は「全ての休業要請を面倒見切れない」という意識でいっぱいになっているのであろう。飲食店を抑えれば大丈夫だという専門家の結論だけが頭のなかに残っているのかもしれない。

西村大臣は関西圏の緊急事態宣言依頼を先延ばしにした。「情報が足りない」と断ったそうだ。彼らはとにかく広げたくないのであろうが、そうこうしている間に愛知・岐阜にも広がりを見せているという。

おそらく今回の緊急事態宣言は長引くことになる。政府が慎重すぎる上に対策が限定的だからだ。尾身会長は表面上は総理大臣に同調すると見せつつ実際には「それではすまない」という情報をまぶしていたようだ。それを分析する記事まで出ている。「マスコミが伝えない」訳ではない。単に誰も聞いていないのだ。にも関わらず感染者の数には大慌てする。感染が広がると大抵は広域に広がり一人の知事の判断では収まらなくなる。

これまでも政府の説明は理由・根拠が曖昧なものが多く「立憲主義の破壊である」などと非難されて来た。だが実際には専門家の言葉を理解しょうともせずに御都合主義で解釈するカンニング体質だった。加えて科学的根拠やロジックよりも心情を優先する傾向があり意思決定ができなくなる。戦後学校教育の失敗の見本市のようである。

アメリカは商業主義に傾いたマスコミやインターネットのおかげで誕生したリアリティータレント大統領であるトランプ大統領に先導された集団が議会に押し入り死者まで出るという騒ぎになった。「流石にまずい」と反省する人が多い。

ところが日本人は極端な行動に出ないので不具合が現れても社会的な反省が起こりにくい。新型インフルエンザ特措法は脱法的に条文を解釈して「営業禁止状態」を作り出しているという。そもそも法律があってもなくても自粛要請が出ている上に政府の無策の結果、罰則規定が重くなろうとしている。これは砂山に城を建てるようなものだ。片山元総務大臣が懸念を表明し弁護士からも懸念の声が出ている。おそらく新型コロナ対策はますます混乱することとなるだろう。

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