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新疆ウィグル自治区の中国化が加速している

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新疆ウィグル自治区の中国化が加速している。明らかな人権侵害も見られるようだ。やはり中国は怖い国だなという印象を持ってしまうのだが、この問題は一筋縄では語れない。日本には反中国的な観点からこれを共産党批判につなげる人がいるのだが、あえてこのファクターを除いて考えてみると色々なことがわかる。おそらく中国は新しいアメリカを目指しているのだろうが失敗する運命にあるものと思われる。「アメリカとは何か」ということを念頭に考えてゆきたい。

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今日扱うニュースは新疆ウイグル自治区で16,000のモスクが破壊されているというレポートである。ウイグル自治区とはいうものの新領土という意味の新疆には多様なイスラム系住民が住んでいる。香港が資本主義と中国の接点であるとすれば、新疆はイスラム中央アジア世界と中国の接点である。

だが、中国共産党はこの接点という考え方が嫌いらしい。香港からは民主主義を抹殺しようとしており新疆からはイスラムの痕跡を消し去ろうとしている。アメリカを見てもわかるように多様性を扱えなくなるというのは国家が弱化しているシグナルである。

オーストラリアの人権団体だけではなくAFPもモスクの破壊を確認しているそうである。キリスト教会などはターゲットになっておらずイスラム教だけが攻撃対象になっているそうだ。レポートの中には墓地が暴かれた跡があるという。 死者への冒涜が許されるわけもなく明らかな人権侵害であるがそれだけなりふり構わないということなのだろう。

習近平国家主席は新疆ウイグル自治区の中華意識の徹底を指示したというのだがこの「中華意識の徹底」という言葉が実はよくわからない。おそらく中国共産党憲法の精神ということになるのだろうが実体がなく末端では単なる「文化破壊」になってしまう。いずれにせよこうしたやり方は今に始まったものでもなく習近平国家主席が始めたものでもないようである。Newsweekの記事は経済的な豊かさを達成したことにより自信を深めたのだろうというような分析をしている。

こうしたエスニッククレンジングはユダヤ人弾圧を経験した西洋のスタンダードでは許されることではない。メルケル政権もついに国内の反中国的な動きに押されて中国包囲網に加わるべきではないかという判断を迫られているそうだ。ドイツにはアメリカの単独主義に対する反発もあり難しいバランスを取らなければならなくなりつつあるようである。

アメリカはもともと宗教弾圧から逃れて来た人たちが自由を求めて作った国である。彼らの価値観が憲法を形作っている。つまりアメリカに入ってくる人たちは「憲法に代表されるアメリカの理念を良いもの」と感じているからアメリカに移住するのだといえる。アメリカは理念国家であり、トランプ大統領はこの理念の破綻を具現化した人物である。

ところが中国はそうではない。中国共産党を支持した人もいるだろうが自分の意思とは関係なく飲み込まれた人もいれば周辺地域であるという理由だけで巻き込まれた民族もいる。中国共産党には国民全体が選び取った理念はない。それができるのは新世界の国だけであり旧世界でこれを実現するのは不可能だ。

中国はアメリカのような理念国家を作りたがっているように思える。遅れて来た理念国家である。アメリカの価値観の押し付けに反発しつつもアメリカのようになりたいと憧れるのが今の中国の姿だろう。

資本主義も民主主義も誰かが計画して作ったものではない。それは様々な闘争や妥協の結果として生み出されたものである。もともと中国は資本主義を模倣して成功した。だがその時代も終わろうとしているようだ。

中国がモデルとしている西側のモデルは今崩れ去ろうとしている。アメリカは内戦とはでは行かないが混乱状況にある。おそらく大統領は選挙では確定せず少なくとも数ヶ月の間は分断を経験するだろう。下院議長のナンシー・ペロシが暫定大統領になるのではという予測まで出ているそうだ。ヨーロッパには中東・中央アジア・アフリカから人が押し寄せる。同化できなかった人たちがときどき社会不安を引き起こしそれは「テロ」と呼ばれる。ムハンマドを屈辱したシャルリーエブドはまたイスラム教徒に攻撃された。今度はパキスタン出身の18才が2名を刺したそうだ。

20世紀は「グローバル化の時代」と呼ばれ人々は民族ではなく理念で結びつくはずだった。だが格差が広がる中こうした理念ベースの社会が大きく揺れている。だがなぜか中国は今頃民族国家を捨てて理念ベースの国家になろうとしている。そしてその理念とは中国共産党の指導部が決め「脆い何か」である。だがそれは早くも西洋の価値観とぶつかり摩擦を引き起こそうとしている。

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