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「人権」と「グローバリズム」の時代の終わり

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日本では7年ぶりに政権交代が起きた。これとは別に世界の情勢も大転換を迎えつつある。人権・自由貿易という日本人が正解だと思っていた価値観が通用しなくなっている。つまり我々が正解だと思っていた民主主義が終わりを迎えつつあるのだ。

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人権の終わり

先日、新疆ウイグル自治区の人権侵害状況について調査するように人権団体から国連人権理事会に請願があった。ところが中国の国営放送が伝えるところによると「多数の」国が中国に味方をする発言をしたのだという。新疆ウィグル自治区だけでなく香港の人権状況についても同様のことが起こっている。

これについて「アメリカが中国を非難していない」と書いたところ「アメリカはとっくの昔に脱退していますよ」という情報をもらった。イスラエルのパレスチナ政策が人権侵害だとされた時に腹を立てて脱退してしまったのだという。2018年のことだったそうだ。このほか、ロシア・インドなども態度を表明していない。ロシアは国連人権理事会とは別の場所で中国支援を打ち出しているそうだ。

香港の人権状況について反対の意見表明をしたのは、欧州と日本などの限られた国だけだった。このため「多数決」では中国の味方をしている国が多いのだそうだ。中国の味方をする国にはアフリカの国が多い。中国に経済的な支援があり、何かと人権を振りかざしてくるヨーロッパに反発があるのだろう。

アフリカは支援を欲しているわけで「金の切れ目が縁の切れ目」とはよく言ったものである。逆に中国からの投資を約束されていながらそれが履行されなかったとして議会トップを台湾に送り込んだ国もある。

自由貿易時代の終わり

デイリー新潮が「中国は経済を戦時体制に移行か コロナ禍がもたらすグローバル化の終焉」という記事を配信している。タイトルこそセンセーショナルだが実際の中身はドイツ銀行のレポートの報告だ。ドイツ銀行がグローバル化と言っているのは1980年代から始まった自由貿易時代のことだそうだ。自由貿易時代の終わりと言い換えてもいいかもしれない。きっかけになっているのはコロナ禍だがどちらかというと負けつつあるアメリカの内向きさに端を発するデカップリングがきっかけになっている。

トランプ大統領はこのところしきりに米中デカップリングを訴えている。中国に仕事を取られたという被害者意識があるからだ。バイデン候補も基本的には中国に対しては敵対的な政策をとるのではないかと言われているそうである。トランプ大統領は多数の話し合いが苦手(おそらく多数の間での交渉ができないのだろう)なのだが、バイデン候補は多国間協議で中国を封じ込めたいという違いがある。基本的な対中戦略のゴールは実は違わない。戦術が異なるだけなのである。

デイリー新潮の記事はここから「平和な時代の終わりには戦争があるかもしれない」と継いでいる。これがどれくらい確からしいかはわからないのだが、あるいは冷戦のような状態に移行するのかもしれないと思う。あるいは中国ブロック(アフリカ+中国)と日欧米ブロックというブロック型の経済になり、その間を小さな国が移動するという姿になるのかもしれない。

民主主義の終わり

このブログはネトウヨを念頭において書いたものが多い。「脳内序列」にしたがって国際秩序を理解したがる人たちに対して「そんな脳内序列は存在しない」と主張しているのである。その観点で言うと世界の情勢は必ずしも中国に不利ではなくなってきているという点が重要だ。何故ならば誰も人権に興味がないからだ。その意味では人権に興味がないネトウヨが却って中国の台頭を助けているのだと考えることができる。

その一方で護憲派リベラルと言われる人たちの「戦後憲法は世界の正解であるから日本でも正解であるべきだ」という前提も消えつつあると言うことがわかる。憲法前文に書かれていた「諸国民が団結して平和を目指す」という世界観がついに実現するかと思われたのだが、結局は今回も絵空事に終わるのではないかということになる。

立憲民主党が言うところの立憲主義は現行憲法が正しいと言う前提に立脚している。だから前提が揺らぐと民主主義のチェックは効かなくなってしまうことが容易に予想される。

菅政権は「行革」という日本人が大好きな官僚処刑政治ショーと携帯電話会社叩きを前面に出して裏で行われている色々な矛盾を隠蔽する内閣になりそうである。また、外交にはほとんど関心がないようだ。構造が不確かになった時代にマキャベリスティックなリーダーが出てくると言うのはよくあることなのかもしれないのだが、我々は「民主主義」と言う正解がなくなった上で内向きな数年間を過ごすことになるのかもしれない。

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