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心配しなくても岸田総理で必ず問題が噴出する

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安倍総理が突然辞任を表明した。最初こそ驚きはあったものの送り出しは淡々と行われた印象がある。安倍政権について書こうと思ってサイト分析を見たのだが次の総理総裁候補の検索が盛んになっている。麻生・河野・岸田などの検索でページビューが爆増していた。総括をしたくない、水に流して次に進みたいという日本人の性根は表向きの会話には現れない。個室の行為こそが日本人の本音なのである。

今回の総裁選挙は二階幹事長のもとで行われるようだ。安倍総理の意向は二階幹事長が「地方票を加えずに選挙をやる」と宣言したところからも明らかである。地方に強いとされる石破茂元防衛長官を外したいのだろう。安倍総理が「彼にしては入念に」準備をしたのは石破総理が党内清算を始めることを恐れたからなのだろう。

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石破外しの理由も明らかである。おそらく石破自民党は過去の清算を始めるだろう。安倍総理が行ってきた数々の「隠蔽」が暴かれることになる。これだけは避けたいと考えていても不思議はない。

菅義偉官房長官総理大臣は総理大臣はやらないのではないかと思う。安倍政権のいろいろなことを知りすぎている。今のままでは来年の予算編成に苦労するということはあまりにも明らかだ。税収の落ち込みは既に確定している上に新型コロナ対応に失敗すれば対応予算の増加は避けられないだろう。下手をしたら来年度予算を組めないというようなことにもなりかねない。そうなると予想されるのは選挙前の大増税である。自民党政権は自殺行為とも言える増税提案に追い込まれる可能性が高いということを菅さんはよく知っているはずである。

というようなことを考えていたらネットで「安倍総理はこれまでの文章を隠蔽してしまうのではないか」と心配しているTweetを見かけた。これについては確かに書類の隠蔽は起こる気がする。だが心配する必要はないのではないかと思う。長期政権のあとは必ず何らかの形で問題が噴出しているからである。

近年の長期政権は二つある。中曽根政権と小泉政権の事例だ。歴代4位と5位なのだそうだ。それぞれ後継政権は過去の清算に追われることになるのだがメカニズムは違っている。

まず小泉政権の事例からみてゆく。小泉政権は敵を作り選挙に勝ち続けることで党内の矛盾を隠蔽してきた。だが小泉政権が終わると年金問題のような不祥事が出てきた。共産党の記録によると年金記録問題のきっかけができたのは橋本政権だそうだ。だがきっかけは年頭の些細な質問であり実はあまり注目されていなかった。問題になるのは「質問に対して答えがなく」「実は思っているより件数が多かった」ということがわかってからである。改めて検索すると5月・6月頃に政府がレポートを出したところから問題になりはじめ、徐々に「消えた年金5,000万件」などと言われて大問題に発展してゆく。つまり安倍政権は初動を間違えたのだ。だが改めて見てみたところ「80年代の電算化によって生じた」とか「もっと古くからあった」などと語られた。年金記録問題は安倍政権が引き起こしたわけではなく適切に問題を認めてさえいれば実は大事にはなっていなかったのかもしれないという「事件」だったのだ。

この年金問題の前には郵政で切られた人たちが復権していて、直後に松岡農水大臣が事務所の不正経理問題で自殺してしまった。どちらも小泉時代の緊張の緩和から起きたゆり戻しである。最初の安倍政権は過去の政権の諸政権が放置した問題と緊張緩和からくる気の緩みで1年で崩壊した内閣だったのである。

そのまま参議院選挙に大敗し、そのつまづきを福田政権も解決できず「このままでは選挙に負けてしまう」という焦りから内紛が続いた。最後はよく知られているように政権を失うことになる。

中曽根政権も長期政権だったのだが流れは小泉政権後とは違っている。こちらは過去の金権政治が清算ができなかったことが問題になった。

中曽根政権が崩壊するきっかけは売上税だった。選挙直前に売上税導入を言い出しこれが反発された。この影響で自民党は支持を失い地方選挙でも負けたため予算成立が遅れ「気分を一新するために」と竹下政権が発足する。竹下政権はなんとか消費税を通した。地方自治体への一億円バラマキとセットだった。

竹下政権は中曽根内閣から消費税を引き継いだのだが、引き継いだのはそれだけではなかった。リクルート事件のニュースが連日マスコミを賑わすことになった。中曽根総理も疑われたのだが有罪にまではならず側近の藤波孝生官房長官には有罪判決が出た。

この二つの政権はどちらも戦後第4位と戦後第5位の長期政権なのだが長期政権にはそれなりの矛盾が蓄積される。そこに手をつけても手をつけなくても何らかのゆり戻しがある。小泉政権は直後から動揺したが竹下政権は若干の時間があった。そして何も短命政権だった。

もう一つの共通点は新しい総理大臣が選挙で勝っていないということである。このため前の政権の主要メンバーだった人たちの合意に基づく調整型の内閣になりやすい。これが今回の「岸田政権・菅政権」で起こりそうなことなのだ。問題が起きたとしての総理大臣は強く口出しができないので問題が解決できない。矛盾が噴出して人気がなくなるとどんどん求心力を失って行き空中分解に近い形で国民に見捨てられてしまうのである。

ではこうした矛盾をなんらかの自浄作用で解決すれば良さそうだがそれも難しい。例えば安倍内閣がつまづくきっかけになった年金の問題は結局解決せず国民はなんとなく慣れてしまった。もともと野党が発掘した問題だった。だが最終的にはオンライン統合する時にも問題になっていたとか実は1964年以前からあったなどと言われた。だが抜本的な対応はなされず誰も責任を取らなかった。この厚生労働省のいい加減な体質はコロナ対応にもしっかり受け継がれており現在でも統計システムが動いていないそうである。

リクルート事件のあとには1992年(宮澤政権)で政治資金規正法が改正されるが小幅なものに留まり大きな改革は細川内閣まで待たなければならなかった。それすら十分ではなく今でも様々な問題が起こり続けている。政党助成金はある時は買収費用として使われ、また民主党のように溜め込まれていて「100億あったか50億あったかまた40億くらいかもしれない」というような状態で管理されていることもあるという具合だ。

今回の首相交代劇でもわかるように日本人は総括はしない。そのため問題は基本的には解決せず「単に慣れる」ことで処理されてゆく。

自民党としてはおそらく石破さんのような破壊者を入れて抜本的な改革をして見せたほうが良いのだろうがそれは実行されそうにない。そもそも新型コロナで大変な時に党内改革などできない。おそらく岸田総理は何かの時点で噴出する不祥事と予算編成に苦労することになるだろう。それが仮に菅義偉総理でも同じことである。おそらくはまた前と同じことが繰り返されようとしているのである。「貧乏くじ」とはよく言ったものだが貧乏くじは新型コロナではない。安倍政権の清算なのである。

ただ、新型コロナの流行いかんによっては1年程度は問題が出てこないかもしれない。新型コロナは国難といえるが、実は「やらなければならないことが明確」である。新しい総理大臣は時事刻々と変化するウイルスに対して適切な調整をしていればいい。端的に言ってしまえば記者の質問にまともに答え、きちんと統計を出し、事務処理の遅れについて改善策さえ打ち出せば合格点ということになる。

また野党のいうことを聞いて挙国一致型にしてもいい。菅さんには無理だろうが岸田さんであれば可能だろう。

実は神様がサイコロを握っているという意味でもこれまでにない稀有な政権交代なのかもしれない。

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