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香港民主化指導者- 周庭さん逮捕に思うこと

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香港の民主化指導者周庭さんが逮捕されたそうだ。このニュースを聞いて最初に「この人は逃げなかったんだ」と思った。逃げないということは戦う覚悟を決めたということである。中国はこの人の扱い方を間違えると民主化運動を神格化してしまうことになるのだろうなと思った。最終的には「中国はこのまま行き詰まるだろう」と思った。

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周庭さんは1996年生まれの23歳だそうだ。中学生の時に政治運動に出会い香港衆志のメンバーとして活動してきたという。その意味では筋金入りの政治闘士である。ただ政治問題一辺倒ということではなく日本の芸能にも詳しいという。つまり、香港の政治運動に参加しているのは普通の学生たちだ。これが日本人に響いている。同時に逮捕された蘋果(ひんか)日報関係者が本命のようだが、普通の市民が逮捕されたという「画」が弾圧国家としての中国像をより鮮明なものにする。

もちろんこれを深掘りして行くと中国共産党にもそれなりの事情があることがわかる。どうやらアメリカが香港をそそのかして中華秩序を脅かすことを本気で心配している節もある。さらにビジネス上中国とうまくやって行きたい香港市民は多い。

このことから民主主義社会には強い衝撃が走り、蘋果日報関係者も周庭さんもいったん保釈された。では保釈されたから「これでおしまい」なのかという問題がある。

集団主義の強い中国での独立要求は強く制限される傾向にある。例えば台湾のような異物は絶対に認めたくない。法律やイデオロギーによるまとまりを持てずに集団の中の力関係で統治が決まってしまうからである。民主主義が多様性を前提にして発達してきたのとは対照的に中国は多様性を許容できない。民族の多様性はあくまでも共産党一曲支配の枠内でしか許されない。

このため中国は香港の統治に苦労してきた。どの国も香港の主権にクレームを出しておらずゆくゆくは中国に吸収されることが決まっているにもかかわらずである。台湾にも蘋果日報があり台湾独立派を刺激する可能性はあるのだろうが、香港の政治的主張が中国大陸に波及することも考えにくい。にもかかわらず香港という異物を許容できず逮捕にまで踏み切ったことに問題の芯があるように思える。

中国の課題を考えると問題の意味がよくわかる。ヨーロッパ・北米連合には様々な民族の国が集まっている。だが、キリスト教という精神背景が共通していてNATOという共同軍事同盟を作っている。NATOはイスラム教国であるトルコも含んでおり広がりがある。

NATOは少なくとも大西洋は抑えていて世界の資源産出国の間にも基地がある。この面的な広がりを中国も持ちたいと考えるだろう。

このため中国は長い間面的なつながりを求めてきた。太平洋を挟んでオーストラリアとの間で提携を模索したり、インド洋を挟んでケニア・タンザニアに出ようとしている。だが中国はそうした国々との間に例外なく問題を引き起こす。おそらく彼らのやり方でしか物事に対応できないからである。中国が香港を許容できないということは、外にいる人たちの価値観も許容できないということである。

アフリカの国では中国人だけのコミュニティを作ってしまいローカルの人たちは入ってこれない。ラオスでも同じようなやり方をしているようだ。ちなみにラオスでは中国南部からタイにに抜ける陸路の鉄道を作ろうとしているが、工事現場は完全な中国人社会なのだという。

極端な言い方をするとあまりにも内向きすぎて他人と折り合えないという欠点が集団主義にはある。

このブログでは日本は極端な集団主義ではないと定義している。日本人は他国に浸透するときにこういうやり方はしてこなかった。ホンダのカブ(小型のバイク)・カップヌードル・ソニーのトランジスタラジオなど、全てアメリカの市場からトップが直接学んで自国のオペレーションまで変えてしまうというやり方をとっていた。つまり、成長過程にあった日本人は他人から学んでうまくやって行こうしていた。

だが、日本も朝鮮半島を足がかりに力で中国大陸を自国の勢力圏内に収めようとした過去がある。結果的に全ての地域を自力で抑える必要が出てきた。補給路を維持できず結果的に戦争に負けてしまった。つまり最初からうまく国際社会と折り合うことはできなかった。

さらに現代ではおそらく集団の縮小が始まっていてお互いに意思疎通ができなくなっている。先日、公徳心の消失という問題を考えたのだが、おそらくこれは集団主義化が進行していることと関係している。だがあまりにも社会が多様化してしまい大きな集団が作れないのだろう。

中国共産党は香港を実験室としてどう資本主義社会と折り合って行けるかということを実験できた。適当に遊ばせておけば独立運動にまでは至らなかったであろう。だがそれをしなかったことで「中国」という価値観に閉じ込められてしまうだろう。また周庭さんを逮捕することでどんな衝撃が走るのかも事前に察知できなかた。

そんな中国は若干23歳の普通の女の子を「民主主義の女神」に神格化しようとしている。亡命させていれば「逃げた」ことにできたのだろうが、彼女の運命が悲劇的であればあるほどその影響力は大きくなるはずだ。

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