GoToトラベルキャンペーンの詳細が決まった。東京を除外しホテル代の補助だけを先行するそうである。この決定が出てからどんなリアクションがあるのかと思ったのだが細かいルールを攻略しようとするものが多い。日本人の日本人らしさを感じた。中でもなぜかQuoカードに注目が集まっている。
まず「日本人らしさ」から考察したい。欧米の人は自分たちが有利になるように交渉してルールを設定する。そして自分たちが不利だと考えるとルールを変えたがる。一方で日本人は決まったことには従順に従うのだがそのルールを攻略して「他人を出し抜く」のを考えるのが好きである。欧米人はルールを出し抜くのを「アンフェア」と言って嫌うが日本人は権威や周囲の空気に逆らうことをより嫌うのだ。そして日本人は大局を動かすよりも細かいことを操作するのが好きだ。
今回も「東京が除外だ」と決まった途端にいろいろな声が出た。多かったのがどうやったらルールを攻略できるかというものだった。
- 東京の人が他県の知り合いに頼んで団体旅行に申し込んだらどうなるのか?
- 東京ディズニーランドや東京ドイツ村は東京にないからOKなのでは?
- 武蔵小杉(東京駅から18分である)宿泊ならOKなのでは?
さらに東京だけを外すということに「アンフェアである」と考える人も出てきた。こういう人たちが思い浮かべるのがなぜか憲法らしい。そこでこれは東京都民を差別する憲法違反なのではという意見が出てきた。おそらく首都圏の一都三県が一律除外であればそのような声は出なかったかもしれない。
さすがだなと思ったのがQuoカードを着装した文春オンラインだろう。文春はほのめかすように書いている。さすがに「犯罪を誘発させるようなことは書けない」と思ったのかやり方が書いていないので、なぜこれがお得なのかはわからない仕掛けになっている。
要するに宿泊費を膨らませてその一部をQuoカードなどで還元すれば多くの補助金をゲットできるというようなスキームなんだろう。合法的な補助金搾取である。ただこうした発想がゼロから生まれるはずはない。
さらに検索をしたところこれは出張などでよく使われる手法だそうだ。つまり宿泊費を安くするよりも「会社が出してくれる上限額ギリギリ」で予約を受けてその一部をホテル側が出張者に還元するという手段が蔓延しているようだ。経費が厳しくなり食費が自腹だったりする(つまり出張手当が出ない)のでその補填に使われているという声もあった。ルールが厳しくなれば抜け穴ができその抜け穴をふさぐためにまたルールができるというわけである。どこまでも細かいところに落とし込んで行く。
これは違法なのではないかと思われるのだが「リベート」としてよく使われる日本独自の商業慣行だったりする。値引きしてしまうと年商が減ってしまうのだが一旦売り上げとして計上してあとからそれを割戻せば年商を大きく見せることができる。つまり会社の規模が大きいように見える。もちろん契約書に書かずに「会社に黙って社員が懐に入れる」などというのは違法行為だ。
今回のGoToトラベルキャンペーンは最終的に安倍総理が東京外しを決断したようだ。この時に国土交通省などに最終検討をさせなかったためにこれからいろいろつじつまが合わないことが出てくるだろう。Quoカードもその一例である。東京の住民をどう除外するか、若者や高齢者をどの線で除外するか、誰が審査するか(おそらくホテル側や代理店にやらせて見つかったらアウトということになるのではないかと思う)ということは全く検討されていない。もはやお馴染みになったトップの見切り発車という「大混乱の黄金原則」がまた繰り返されようとしている。学ばない人たちである。
日本人は表面上はルールに従ってみせるがその裏をかいてトクをすることもまた才知であると考える独自の文化があるようだ。Go Toトラベルキャンペーンでもおそらく複雑な仕掛けを利用した「儲けの手口」が生まれることになるのだろう。こうなるとこれを内部告発する人が出てくるわけで、おそらくGo Toキャンペーンが週刊誌ネタになる日は遠くないと思う。
その一方で曖昧な決定に混乱しているようだ。場当たり的な話が出ては消えるために現場には情報は来ていなかったようだ。制度が始まることだけは周知されているので「問い合わせに忙殺されまたキャンセル作業に忙殺されるのでは?」という現場の叫びが匿名で語られている。
Twitterでは「旅館などには全く通達が来ていない」というつぶやきも見つけた。こちらは実名だった。場当たり的な決定に現場が振り回されるというのはいつものことだが、政治に関心を持たないままでは同じようなことが延々と繰り返されることになる。こうした不満は全て現場の人が吸収するのだろう。いろいろな産業の真面目に働く人たちが安倍政権にすり潰されるような悪夢の時代の到来である。