ざっくり解説 時々深掘り

安倍政権の丸投げ体質が日本人の安心・安全を蝕む

また一つ安倍政権の失態が浮き彫りになった。イージスアショア計画が中止になりそうだ。日本の防衛体制に重大な穴が開くばかりかアメリカに違約金も支払わなければならないかもしれないという。これはやはり安倍政権の失態と言える。だが、さらに探って行くとそもそも政治が官僚に仕事を丸投げしているという実態も浮かぶ。おそらく安倍政権は官邸主導という表向きの力強さのうらで「官僚依存体質」を改められなかったのだろう。

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イージスアショアの導入が決まったのは2017年12月である。北朝鮮からのミサイルの脅威が喧伝されていて、Jアラートという耳慣れない言葉も飛び交った。なんとなく世論が誘導されてイージスアショアもやむなしという世論が作られたように記憶している。だがイージスアショアが決まってから日本政府は北朝鮮のミサイルを「飛翔体」などと言って誤魔化すようになった。あくまでも目先のプロジェクトを進めるための世論誘導だったのだろう。

実際にはイージスアショアは日本ではなくグアムとハワイを守るためにあるのではないかとも囁かれていた。ただ「そもそもバックアップであり米軍はイージスアショアには期待はしていないのではないか」という観測もある。そうなるとそもそもアメリカは公共事業として日本の金が必要だっただけでイージスアショアはある種言い訳でしかなかったのかもしれないと思える。

いくつかのネット記事を読むとこれがミサイル防衛システム(イージスシステムと呼ばれる)の一部だったことがわかってくる。これを全体として理解せずイージスアショアの話だけを切り取って議論することはできない。Quoraで教えてもらったところ実際にはRIM-161 Standard Missile 3という規格なのだそうだ。Wikipediaによると日本が最初にこの規格に参加したのは1998年である。

それがわかる発言がある。河野防衛大臣はこれまでも長い間ミサイル開発をしていたが「ブースターを基地内に落とすならばさらにそれと同じくらいの開発期間が必要だ」と言っている。イージスアショアの話がでてくるのはたかだか2年ちょっと前の話なのだから、それより前からミサイル開発をやっていたということがわかる。

イージスアショアは海上展開しない分運用費の負担を減らせるという名目で導入されたが陸上転用は全く要求仕様が異なるのだ。SM3に参加していたのは海上自衛隊と日本の企業である。当然仕様も海で使う前提なのだろう。ブースターが落ちても問題がないという環境である。

だがなぜかここで陸上自衛隊がイージスアショアを押し付けられている。彼らがきちんと仕様を把握していたとは思えない。おそらく今回の問題の背景には「これは陸上では使えないだろうなあ」と知っている海上自衛隊と「なんだかよくわからないものを押し付けられたなあ」という陸上自衛隊の間のコミュニケーションギャップがある。縦割りとも言えるしサイロ問題とも言える。

防衛大臣経験者が「政治に隠していたのか」などと言っているのだが、これは彼らの管理問題でもある。海上自衛隊は負担になっているイージスシステムの運用の一部を陸上自衛隊に押し付けたかったのだろう。ここで多額の改良コストがかかりますよなどと言うはずはない。押し付けられた陸上自衛隊の側もあまり面白くない。説明会で居眠りをして恫喝されたりもしている。陸上自衛隊も実はやりたくなかったのかもしれない。

こうした潜在的な問題(陸上自衛隊と海上自衛隊のサイロ問題に加え、管理能力のあまりにない防衛大臣が次から次へと入れ替わりでやってくる)がある上にトランプ大統領への気遣いまでもが入ってきた。さらに安倍総理は面倒な調整はやりたがらない。

ロッキードマーティン社は海外に工場を移したがっているのだがトランプ大統領から圧力をかけられたりしている。またトランプ大統領からF35は高いと批判されたりもしている。一方で2017年には最高の収益をあげたという記事もある。いずれにせよトランプ大統領のMake America Great Again政策の最大の関心事の一つである。安倍総理はトランプ大統領の機嫌をとるために新しいシステムを導入するのはいいアイディアだと思ったのかもしれない。

時事通信の記事によると防衛省はこの話を今年の初めから知っていたようだが、この防衛省が何を意味するのかはよくわからないのだが、まあ安倍政権と言っておけばなんとなく記事になる。

いずれにせよ、おそらくは国会会期中には話を持ち出せなかったのだろう。国会会期が終わる時期にこの話が公表されたのはおそらくは野党からの攻撃を最低限に抑えるという「国会対策」である。歴代の防衛大臣(河野大臣を含め)がいつまで知らなかったのかはわからないのだが、形式的には「つい最近まで知らなかった」とか「騙された」という話になっているようである。こう言っておけば責任を追求されることはない。まさに政治家の集団による自己防衛体制である。

時事通信はイージスアショアの件だけを「官邸主導」として問題視しているのだが、おそらく話自体はそれ以前から始まっていたのだろう。

陸上イージス導入決定にはトランプ米政権との関係強化を重視していた官邸の意向が働いたとの見方がもっぱらだ。導入決定前月の日米首脳会談後の記者会見で、トランプ大統領は「日本は大量の防衛装備を米国から買う」と強調。首相は「米国からさらに購入していく」と応じた。

今年初めに「想定外」把握か 陸上イージスの導入停止

いずれにせよこのままだと多額の違約金を支払わざるをえない。日本都合のキャンセルになってしまうからだ。ロッキードマーチン社が「日本政府の言う通りに作れなくてごめんなさい」ということはないだろう。彼らも古くからこのプロジェクトに携わっているはずで「狭い拠点からは打ち上げられないだろうなあ」ということは知っている。また日本だけのためにソフトウェア制御のやり方を考えるのも割に合わない話だ。

こうした「集団による無責任な意思決定」の費用は日本人納税者が支払うことになる。安倍総理はおそらく謝りもしないだろうし責任も感じないだろう。「先制攻撃論」に傾いている人もいる。安倍総理が実質的に「不在」になっているこのまま先制攻撃論(専守防衛からの脱却)が政治的なアジェンダになってしまうのかもしれない。

長島昭久さんは民主党時代の防衛副大臣なのでおそらくこのイージスシステムのことも知っているに違いない。だが、そのことは棚上げして自らの主張である「先制攻撃」を推進しようとしている。国替したばかりなので「北朝鮮に対して強気である」という態度が選挙に有利だという計算もあるのだろう。

こうして誰も責任を取らないまま主張だけが過激になる。しかし先制攻撃説を安心して唱えられるのはバックにアメリカが付いているという安心感があってのことである。トランプ政権下でアメリカは揺れている。本当にアメリカを頼りにしていいのか?という根本的な問いに彼らが答えることはないだろう。愛国心を唄う人に愛国者はいない。ただ自分のことだけがかわいいのだ。

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