前回までは「メンタルモデル」を切り替えて対策を行うべきであると書いた。しかし、これは概念的なモデルであって具体的な対策を立てるのには少し物足りない気がする。ここでは愛知県でどのように新型コロナが広がったのかを見て行きたい。
まずはメンタルモデルのおさらいである。今回のウイルスは顕在化しない人が大勢いる。だから、これからどう広がるかではなくどう広がってきたに注目すべきであると書いた。
図は左から右に流れている。灰色や黒が顕在化した点だが、その間の経路には点線で囲んだ丸がある。これは現在の体制では計測できない。
だがこれは単なるモデルであって、絵空事かもしれない。
これについて検証したいと思っていたところ愛知県でまとまった数の症例と広がり方がわかってきた。東海テレビが情報をまとめている。愛知県は比較的まとまった情報を出している。大村知事の監督のもとで情報公開が徹底されているとすれば喜ばしいことだ。
なお、今回は考え方を述べたいので図を作り直したのだが、図を検証しているわけではない。いらぬ間違いの元なのでこの図表をコピーして他のところに回すのはやめていただきたい。
1月に武漢から来た感染者が確認されているのだが、今回きっかけになったのはハワイから帰国した一人だそうだ。おそらくこの人は帰国した時点では気がついていなかったのだろう。水際対策に失敗したといえるしそもそも無理だったとも考えられる。またいつ帰国したのかは公表されていないようだ。まずこの人がおそらく奥さんを感染させた。そして、奥さんがスポーツジムに行ったことで一気に拡大した。クラスターの発生である。
このスポーツジムがどんな施設だったのかはわからない。だがここが今回のハブになっている。この奥さんがスーパースプレッダーのように見えるのだが、おそらくスプレッダーは人ではなく「施設」だろう。では施設を封鎖すれば拡散は止まるのか。おそらく早期に観測できていればその答えは「はい」だっただろう。
大阪ではライブハウスにいた人全員を検査すると言っているようだがまだ多くの人の連絡が取れていないそうだ。さ行動経路がわかっている人が乗った公共交通機関の消毒は行われているそうである。こうしたリアクションになるのは「封じ込め」のマインドセットが残っているからだ。そしておそらくそれは徒労に終わるだろう。その理由も愛知の事例を見るとわかる。
愛知では半月あまりで情報が追えなくなってしまっている。色のついたところは「感染経路がよくわからない」人たちである。別のクラスターを作っているものもあるが独立しているように見えるものもあるそうだ。
ダイヤモンドプリンセスの状況を告発した岩田教授や北海道大学の西浦教授の発表も考え合わせると次のようなことがわかる。
- 早期発見ができない以上水際対策にはそもそも意味がないようだ。
- クラスターを見つけたら、即封じ込め(隔離と施設の消毒)をしなければならない。ただし単にクラスターを封じ込めるとダイヤモンド・プリンセス号になってしまう。ダイヤモンド・プリンセスは封じ込めたつもりかもしれないが、あれは培養してから放出しているようなもので逆効果だった。世界にウイルスを輸出するという大失態だ。
- ある程度以上広がってしまったらおそらく全数検査をするか社会全体を止めなければ拡散が防げない。
今のところ、1名から数名の感染者が出たくらいならば感染源を見つけて封じ込めればよかった。そのためには軽微な発熱でも検査する体制をとるべきだった。だがもう過去のことをくよくよ言っても仕方がない。だが数十人になってしまうとおそらく「感染はしているが自覚しておらずしたがって検査を受けない」人が出てくる。経路が追えなくなってしまうのは時間の問題であり、おそらく大阪ではすでに複数人無症状・無自覚なスプレッダーが出ているはずである。
よく「フェイズが変わる」という。最初は広がるのを防ぐということで汚染された現場にばかり目が行くが、フェイズが変わると「汚染された現場にばかり目を向ける」ことには意味がないばかりか危険ですらある。なぜならば限られたリソースをある現場にばかり向けてしまうと後追いのモグラ叩き状態になってしまうからである。
それでは市中ではどんな広がり方をするのだろうかと考えていたところ、コンビニのATMで激しく咳き込んでいる女性を見た。マスクはしていなかった。だが、それを気にする様子の人はいない。おそらく新型コロナ騒ぎは遠くで起こっているという安心感があるのだろうなと思った。近くにはコーヒーマシーンが置いてありおじさんがコーヒーを入れていた。数メートル離れたところでそれを目撃して「あの人が別の病気だったらいいな」と思いつつも慌てて外に出た。個人的には「アルコール消毒液のない現場でATM触るのはよそう」と思った。おそらくこうしたコンビニは多いだろうが、これが発見されるのはコンビニのアルバイトが感染した時だろう。
マスコミ報道はかなりいろいろな思い込みを作り出している。誰か発症者が出ない限り「コンビニから感染した」などという報道は出ないだろう。おそらく立ち寄り先としては記憶に残らないからだ。京都ではマクドナルドのアルバイトの感染が確認されたということでマクドナルドを閉めて消毒したそうだ。アルバイトの女性は「ライブに行っていた」ということなので封じ込め政策の一環だろう。だがマスクはしていなかったそうなので、あの意味はおそらく「マクドナルドの客に無自覚のキャリア出ている」ということである。
- ダイヤモンドプリンセスのようい空気がこもりやすいような施設はウイルス培養器になる。おそらく高齢者施設などもその一例になるだろう。
- 武漢の春節の宴会や韓国の新興宗教のように一緒に食事をする機会も危険だ。
- 雪まつり・ライブハウス・スポーツ施設などなど多くの人が集まるイベントも危険である。東京都は都立公園の花見を禁止したようだがこれはおそらく正しい判断だし、プライベートでも飲み会はしないほうがいいだろう。
- おそらくちょっとした公共空間にあるものも汚染されている可能性がある。またその場で調理するようなものも危険があるかもしれない。詳しい情報がわかるまでは用心したほうがいい。
東海テレビの図を見ると20代が少ないことがわかるのだが、スポーツ施設では20代の陽性者もでている。ということは若い人は感染してもそれに気がつかないことが多いのだろう。さらに実際に街の様子を見てみると「調子の悪い人は外に出るな」という報道があっても忙しくて仕事を休めない人や助けが得られない専業主婦も多いんだろうな感じた。おそらく、都市部では多くの20代や30代がいて知らないうちにスプレッダーになっているのだろう。さらに「安倍政権の学生開放政策」により10代のスプレッダーが広がることになる。
安倍政権のクルーズ船封じ込めと学生開放作戦はおそらく科学的知見に基づいていない。そらくそのどちらも裏目に出るだろうと思う。だがもうそんなことを責めても仕方がない。自分たちで考えて冷静に身を守るしかないのではないかと思う。