時々デモ情報を追っている。きっかけになったのは香港なのだがレバノンやチリでデモが起きている。そのうちに、いろいろな国で民主主義が危機に陥っているんだなと思えるようになった。カタルーニャでデモが起き、フランスもかなり大変なことになっているらしい。
フランスはかなり過激なことになっている。政府が参加者の目玉をゴム弾でぶっ潰すという暴挙に出たようだ。フランス革命が起きた国で今また民衆が放棄しようとしているというのが21世紀初頭の政治情勢なのだ。スペインの11月総選挙もまとまらず「左派ポピュリズム」が支持を伸ばせない中「極右」が台頭した。イタリアでもポピュリストが政権を取っている。イギリスもブレグジットで混乱しているから西ヨーロッパでまともなのはドイツだけという状態になっているようだ。そのドイツでも2019年8月あたりから「景気後退」の兆候が出始めているという。
何がどうなっているんだと言いたくなる。
ところが日本はどうだろう。概ね平穏である。そんな中Twitterは「安倍桜祭り状態」になっている。もともとは共産党が「地元への利益供与なのではないか」として取り上げたことがきっかけになっていて「安倍さえいなくなれば」層にアピールしたようである。国民民主党も追及をすると言っているそうだ。逆に言えば安倍政権の政策にケチがつけられなくなっているという様子がわかる。国民が野党を支持しないので、野党は手詰まり状態になっている。
では自民党はよくやっているのか。おそらくはそうではないだろう。景気は悪化しつつあり経済統計資料にも表れているようだ。倒産ではなく自主廃業も増えているというレポートも読んだ。日本は確実に衰退しつつある。
世界の動きと日本の動きはある程度リンクしている。中間層の間に不満がたまっている。企業は好景気に沸くのだが中間層にはお金が回ってこない。オートメーション化の影響だという人もいるし、ホワイトカラーがAIに取って代わられたからだという人もいるだろうが、とにかく理由はよくわからない。何が起きているのかの一端を示す資料をアメリカに見つけた。
アメリカの一部の企業の株価が好調だ。GAFAというそうだがハイテク株を中心にバブルとも言えるような株高になっているという。中国とアメリカの緊張が低くなるのではという期待やアメリカの雇用が回復しているという背景も株価好調を後押ししている。また新興国の混乱を避けた金もアメリカに戻ってくる。いわば一人勝ちの状態である。だがアメリカが全部勝っているわけではない。
アメリカでは雇用が回復しているのだが必ずしもすべての産業が等しく回復しているわけではないらしい。「リーマン・ショックから雇用が回復していない仕事ワースト20」という雇用の変化についてのデータを集めた記事を見つけた。アパレル、新聞、航空機などが減っているという。産業転換が起きているようだがその内容はよくわからない。ただ、アメリカでは回復を実感している人たちと取り残されている人たちがいるようだ。
なんらかの変化が起きているようだがそれが何なのかはわからないというのが今の日本である。だが日本人はもうそれを考えるのはやめてしまったようだ。日本で政治に興味を持っている層が現在の経済とは切り離されてしまっている可能性がある。
調べてみたところ日本の公的年金受給者はのべ7,200万人を超えているそうだ。おそらくは重複しているものもあるのだろう。重複をのぞくと4,000万人になるそうだ。つまり物価が安定している限り日本人の多くの生活水準はよくもならないが悪くもならないのである。ちなみに労働人口は6,800万人程度だという。労働人口と同じくらいの規模の経済から切り離された人たちがいる。彼らは年金が維持されている限りはおそらくもう何も言わないだろう。
日本では現状維持バイアスが働くはずだ。したがって、桜を見る会を開催しようが特区を私物化しようが大した反発は起きないだろう。と同時に行き詰まりの規模が大きすぎて小手先の対策を積み重ねてもどうしようもないということがわかる。労働人口が減り年金受給者が減ればいずれは財政が破綻するのだが、現在は外国から利子収入が月に2兆円も入ってくるという状況にある。9月の経常黒字が減ったと日経新聞が書いていたがそれでも1.6兆円が入ってきた。つまり、いずれは破綻することがわかっているが、今は絶対に破綻しないというとても奇妙な状態にあるのである。枯渇する石油資源を抱えながら改革ができない産油国のような状態なのだ。
こうしたことはちょっとネット検索すればすぐにわかるの。だから、野党の人たちもみんな知っているであろう。だから彼らも抜本的な改革は提案しない。つまり、自民党の人たちは花を愛でながら没落の最後のきらめきを楽しみ、それに混ぜてもらえない人たちは恨み言を言いながら拳を振り上げたふりをしつづけるという状況が続いているのである。
この話をいろいろな人にしているのだが、誰も聞いてくれない。そして彼らはまた誰かを非難し続ける。おそらくは彼らも気がついているのではないかと思うのだが、表情からそれをうかがい知ることはできない。