お盆休みに入った。テレビからも政治関連ニュースが消え、政治ネタのブログなどを見る人が減る時期である。今回はよくわからない為替関連の基礎知識の整理をしたい。よ結論も洞察もない。単に混乱した情報を整理しているだけである。
トランプ大統領がFRBを恫喝したとして話題になっている。「ドルが高いのはFRBのせいだ」というのだ。別の場面では人民元が為替操作で安くなっていると言っていた。一体どちらが正しいのか。
先日、アメリカは中国を為替操作国に指定した。中国は為替を不当に操作しているというのである。だが、実際には中国はアメリカの言いがかりとは逆のことをやっている。つまり、人民元の価格を高めに設定している可能性が高いのだという。そうしないと人民元で投資している資産をドルに変えて資産流出が起きる懸念があるそうだ。実際に今回も人民元を下げた結果資金流出が起きているという。
概念上の観測と実際に起きたことが合致しているので何か起きているのだろう。ただ中国人が資金を逃しているのか、あるいは海外投資家が新興国から資金を引き上げているのかはわからない。そもそもそれを問題にする人はあまりいないようだ。
IMFは元の価値は適正だがドルは6-12%過大評価されているとしている。この状態でトランプ大統領がIMFに裁定を求めてもIMFは中国に是正勧告しないだろうというのだ。するとトランプ大統領の中国への圧力は単なる言いがかりということになる。単なる言いがかりで株価が下がったり経済が急速に悪化するわけだから、世界経済というのは恐ろしい。
実はアメリカは追い込まれている。他国を名指しして通貨安競争をやっていると言ってしまったために自分たちが為替介入ができない。実際にはドルが高いのだからなんらかの措置を取らなければならないのだが、それができないのだ。
さらにコラムトランプ氏の「ドル安誘導術」、それぞれに相応の代償には面白いことが書かれている。ドルは基軸通貨として世界中にばらまかれているため中央銀行が介入しても動かすのが難しいのだという。トランプ大統領はアメリカの投資環境を悪化させて(すなわち経営者をいじめて)ドルの価値を毀損することはできるが代償があると書かれている。
そうなるとトランプ大統領は誰かを指差して声高に叫ぶしかなくなる。「誰かなんとかしろ」というわけだ。
FRBは春先には金利を下げる必要はないと主張していた。にもかかわらず金利を下げたのはトランプ大統領の批判をかわす政治的な意味合いがあるのだという。効果がない政策でありながらも「やらざるをえない」というところにFRBの苦悩が見て取れる。
金融緩和策はその場しのぎであり早い時期に出口を見つけなければならない。そこでFRBは「金利を維持しますよ」というメッセージを発信してきたのだろう。ロイターによると、アメリカは2008年の出口を見つけようとしていたようだ。
FRBが前回利下げしたのは、金融危機が深刻化した2008年だった。それから7年間、政策金利はゼロ近辺で推移した後、イエレン前議長が15年終盤に利上げを開始。昨年12月に25bp幅で最後の利上げが実施されてからは、政策金利は2.25─2.5%に維持されていた。
コラム:市場も大統領も喜ばせないFRBの10年半ぶり利下げ
多分2008年の金融思市場混乱回復のコストは誰かが支払っているはずだ。これを調べればなぜFRBがここから抜け出したがっているのかがわかるのかもしれない。
だが、その動きに世界は追随せず物価が上がってくれない。さらにトランプ大統領が「FRBを名指しで攻撃し」はじめ、さらに中国経済を悪化させる動きに転じた。こうなるとアメリカだけが利下げをしないというわけには行かなくなる。
2019年6月頃の記事では「FRBも利下げやむなし」という議論になっている。そして、実際に「予防的」と称してちょっとだけ利下げをしてみたのだろう。ロイターの記事によると「予防的に利下げしてみてもいいことがなかった」ことがわかればトランプ大統領の攻撃も無効化できるということだ。もっともトランプ大統領は「やり方が生ぬるいからだ」と攻撃するだけなのではないかと思う。
トランプ大統領が暴れれば暴れる程世界経済は減速する。その先に何が待っているのかは誰にもわからない。