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日米安保条約の改定を求められていた安倍総理大臣

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G20大阪会合が終わった。安倍首相としてはこれを片付けて「外交の安倍」を強調したかったに違いない。何も達成できなかったが決定的な決裂もなかった。あとはこれに適当な名前をまぶして選挙戦を戦えばいいはずだった。

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だが、トランプ大統領が爆弾を投げ入れた。本人は全く気がついていないところがらしいといえばらしい点である。最初の爆弾は安保だった。

トランプ大統領は、「破棄することはまったく考えていない。不平等な合意だと言っている」と語った。その上で、「条約は見直す必要があると安倍首相に伝えた」と述べた。

安保条約見直し必要、安倍首相に伝えた=トランプ米大統領

これだけを読んでも、トランプ大統領が何を言っているのかはわからない。FOXテレビでは「日本はアメリカが攻撃されてもソニーのテレビで見ていればいいだけ」と言っている。つまり、日本もアメリカの防衛に参加しろと言っていることになる。

これを実現するためには日本は憲法を改正する必要がある。つまり集団的自衛体制に組み込まれることになるということである。現在は集団的自衛と個別自衛には重なる部分があるという禅問答で乗り切ってきた。その禅的枠組みでは純粋にアメリカが攻撃された時に日本が防衛出動することは不可能である。説明だけでは不十分だ。実際に行動してみろと突きつけられたことになる。

皮肉なことにこれに抵抗を示せば示すほど、日本人がこの問題をダブルシンキング(二重思考)で乗り切っていたことが露呈してしまう。自分たちとは関係がない沖縄を差し出しておけば「日本も負担している」と主張できると考えたのだろう。菅ロジックと呼んで良いと思うのだが、これは日本人がこの「日米沖」の枠組みを「オトクなディールだ」と考えていることを示している。だからアメリカを説得することはできない。

ところが、トランプ大統領はそのあと北朝鮮に行き金正恩と面会してしまった。選挙キャンペーンのために俺が主役になる派手な絵が欲しいと考えたのだろう。G20はうまくいったとお世辞を言ってはいたが「実はそんなものはどうでもいい」と考えていたということになる。

本当かどうかはわからないが、トランプ大統領がTwitterで金正恩に出演交渉したというような話も出ている。このことは彼が「極めて短期的」に「自分の利益」のために動いているということを意味している。つまり、菅ロジックで説得したり思いやりを示すことには全く意味がなかったのだ。

改憲派も中道派も現状にフリーライドしているという気持ちがありながら、それを認めてこなかった。結局沖縄に負担を押し付けているだけだったのだが「自分たちは過分な貢献をしている」などと自分たちを納得させてきた。

47Newsの記事はこれを端的に示している。また始まったトランプ氏「安保ただ乗り」論、沖縄の負担無視とは要するに日本は沖縄を差し出しているのにまだ足りないというのかというタイトルになっている。随分とひどい話だが、日本のマスコミはこれでなんとかなると考えてきたのだろう。

だが、この菅ロジックは内外で通用しなくなっている。トランプ大統領の例からは分かるのは民主主義社会の政治家が徐々に国益を考えている余裕を失っているということだ。おそらくこれは文在寅大統領にも言えるだろう。北朝鮮交渉の行き詰まりは政権の死を意味する。

相手が具体的な成果を求めるのだから日本人はそれを差し出すか、あるいは勇気を持ってできないことはできないと断るべきだ。そのためには国民が合意を形成する必要がある。しかし、指導力にかける安倍首相にはそれはできないだろう。

一方で、国内でも不穏な動きが出始めた。安倍応援団が政府批判に転じたという記事がある。こちらは日刊ゲンダイの記事なのでどこまで信憑性があるかどうかはわからないのだが、外国人受け入れと消費税という累積でイエローカードになったようだ。彼らもまた待てなくなっているのだろう。皆「話を聞いてくれるだけではだめだ」と言い始めている。彼らも具体的な成果をよこせというわけだ。それは安倍独断による憲法改正である。

安倍政権の計画は崩壊寸前だが、皮肉なことに護憲派と呼ばれる人たちはもっとひどい影響が出るだろう。自分たちに支持が集まっていないことは知っている。ただし、日本人のほどんどは現状維持派だ。だから、自分たちの無力が露呈しないためには「交渉のテーブルには絶対に乗らない」という作戦を採用していた。だから、これまで自分たちがどうしたいかは対して話し合ってこなかったのである。

日米安保条約は変えるべきだ――。トランプ米大統領の29日の発言に、米軍基地周辺の住民や平和運動に取り組む人たちの間には、疑問や当惑が広がった。専門家は「トランプ流の脅し」「改定はあり得ない」と冷静に受け止めている。

安保批判「脅しだ」 高い負担率、トランプ氏の理解に疑問

朝日新聞のこの記事は「冷静だ」と書いている。だた、そう書けば書くほど彼らの動揺が伝わってくる。宿題をしてこなかった学生が慌てているのと同じような印象がある。

自分たちはどうしたいのかを言わずにできるだけ負担を避けようという作戦は内外からの突き上げをくらい大きく軌道修正を求められているように見える。こうなったら腹を決めて自分たちの国益を追求するべきなのだが、日本人にそれができるだろうか。

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