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開いたパンドラの箱 – うっすらと広がる年金不安

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テレビ朝日が「老後に2000万円足りなくなる」問題を煽っている。このままではパンドラの箱が開きそうだ。安倍総理は一度年金問題で退陣に追い込まれており、これが再現できるのではという狙いもあるのかもしれない。

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金融庁は投資機関のために「貯蓄から投資へ」と煽っているようだが、本当にそんなに貯金できるのかという論調で始まったプログラムだが、長年年金システムを取材している玉川さんの追求はそれでは終わらなかった。

玉川さんは「政府は100年安心年金プランと言っている」が実は危ないのでは?と言いだした。もともと年金は積立方式だったそうなのだが、政治家が「今使わないんだったら」と使い始めて積立金が足りなくなったという経緯があるそうだ。積み立てではつじつまが合わなくなったので「世代間の助け合い」という賦課方式という言い方を発明したというのである。

とにかく、彼らには年金制度はこのままでは持たないという認識がある。羽鳥さんも「みんなうっすらとそう思っていてやっぱりそうかってなってますよね」と重ねる。玉川さんは、積み立てにするとこの問題は解消するのだが、積み立てに戻す原資が足りないので「損を切り離して100年くらいかけて税金で補填するしかない」というような破綻処理の話までしていた。

この問題は「不安になればどこまでも不安」になる。かといって裏の取りようもないし対処方法もない。非正規雇用で働いている人にこれ以上貯蓄しろというのは無理な話だし、ギリギリの公的年金で暮らしている人にも対処のしようがない。

ここから「100年安心プランというのはそもそもなんだったのか」という話になりそうである。TBSでは決算委員会で蓮舫議員が総理大臣を追求した様子を伝えていて、その後に「小泉政権と公明党が100年安心と言っていた」というような話をしていた。「経緯の説明」と称して2007年の選挙で負けた時の安倍首相の顔がテレビで繰り返し流れれば一定のサブリミナル的な効果はありそうだ。選挙って空気で決まるんだなと改めて慄然とさせられる。

ちなみに100年神話を言い出したのは2004年の公明党なのだという女性自身の記事が見つかった。女性自身は政府に批判的な立ち位置のようである。2004年といえば北朝鮮電撃訪問があった年で政治家の年金未納問題が大きな問題になっていた。民主党が自民党の年金未納の問題を追求した結果「ブーメラン」が菅直人議員にぶつかったというような話である。ちなみに安倍首相が退陣に追い込まれた「年金記録問題」が起きたのは2007年であり未納問題とは別の問題である。

そもそも年金システムは100年安心なのだろうか。

調べたところ野口悠紀雄の2010年の文章が見つかった。もともと日本の年金は積立方式だったので年金が破綻するという問題が起こるはずはなかったというところまではテレビ朝日と同じことを言っている。制度設計は積立が前提になっているのだという。ところがなぜか今は賦課方式だと説明されている。賦課方式だと説明するのは、物価スライドによる支給額調整と保険料の引き上げという新しい政策との性豪性を取るためなのだそうだ。

ところが野口さんの文章はここで終わっている。続きは本を読んでねということなのかもしれない。つまり誰が賦課方式と言いだしたのかはわからない。

さらに別の記事が見つかった。これも2010年のものだ。今のやり方では年金は2032年に厚生年金が破綻するというのである。現役で払う人が減り貰う人が増えるからである。このような主張があり玉川さんの「損を切り離す」認識につながってゆくのかもしれない。これを払拭したとされたのが「生まれ変わった」安倍政権である。だから今の高齢者は安倍政権を支援する。

今回「野党が自民党を攻撃するだろう」と言われている予算委員会だが、実は民主党にいたひとは「今のままでは制度が持たない」ことをよく知っている。だから彼らは対案を出さない。決算委員会で蓮舫議員が追求だけしている裏にはそういう事情がある。だが、TBSのニュースは「蓮舫さんが言ってくれた」というような扱い方になっていた。多分これを見た高齢者は「自民党がちゃんとしていないだけで、蓮舫さんに叱らればシャキッとするのでは?」と考えるのではないかと思う。つまり、選挙に影響は出ないのではないかと思うのだ。

だが、識者たちの間の危機意識はそれほど変わっていないようだ。野口悠紀雄は2018年になって「年金では暮らしが賄えないので老人も働け」と言っている。これは金融庁と同じ立ち位置である。

今回の騒動がどこまで広がるかはわからない。自民党が気に入らないにしても代替与党はなく、高齢者は正常性バイアスを働かせて自民党を支持し続けるかもしれない。少なくともうっすらとした不安は広がり高齢者は防衛意識を強めさらに消費しなくなるだろう。

テレビ朝日は、今回の金融庁レポートの狙いを「株を買い支えるために民間の資金を投資に入れたかったのではないか」とか「低金利だから投資してもらって手数料収入を稼ぎたいのでは」などと説明していた。だとすれば、金融機関支援のために大きなパンドラの箱を開けてしまったといえるだろう。

このパンドラの箱を開けた麻生さんだが「もうじき引退するのでは?」と囁かれているそうだ。国会ではさらっと「レポートは読んでいない」と言ってのけた。

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