トランプ大統領のツイートが面白かった。
Great progress being made in our Trade Negotiations with Japan. Agriculture and beef heavily in play. Much will wait until after their July elections where I anticipate big numbers!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) May 26, 2019
この前段はわかりやすい。貿易交渉をして農業と牛肉が大きな役割を果たすだろうとしている。安倍首相が製造業を守るために農業をアメリカに差し出したのは明白である。問題は後段にある。私が大きな数字達を期待する選挙達と言っており、これが憶測を生んだのだ。
安倍首相が貿易交渉で妥協するだろうという思い込みから「大きな数字達」は妥協のことを意味しているのだろうという意見が多かった。がwhereがついているのは選挙たちである。つまり、選挙に大きな数字達を期待しているというのが素直な読み方だ。まあ、これだけでも立派な内政干渉である。日本の首相が次も共和党が勝つなどと発言すればアメリカで大騒ぎになるだろう。実際にロシアの関与疑惑がなくならないのだから笑えない話である。
テレビなどはこれを「参議院選挙」と訳していた。しかし、選挙はwin a electionかwin the electionになるはずである。これが複数形になっている。これに注目したのが共産党の小池晃議員だった。これは衆議院と参議院のダブル選挙だと言っているのである。こうすると文法的なつじつまは合う。
しかもelectionsですから。
— 小池晃 (@koike_akira) May 26, 2019
いつから解散が米大統領の専権事項になったのか。
ただ、これは大問題になる。本来、衆議院の解散は「内閣不信任案を出す」ことが前提になっているはずだった。これは憲法を作った当時のGHQが内閣が解散権を乱用するのを嫌っていたからだと言われている。
だが、当時の議会は脱法的な「馴れ合い解散」を行い、その後解釈による第7条解散が横行することになったそもそも何もないのに衆議院を解散するのは憲法違反である可能性が極めて高い。
加えて、議会対策・選挙対策とはいえ「首相の専権事項」を先に一外国の要人であるはずのアメリカの大統領に漏らしているというのは国会軽視・国民軽視の大問題であると言える。
のちに新聞は各選挙区の選挙をelectionというので選挙全体はelectionsと呼んで構わないのだという記事を出した。それくらい盛り上がった話題だったと言える。
大統領の言葉はとても重いはずだが、トランプ大統領は普段から曖昧で不正確なつぶやきを乱発している。日本もそれに巻き込まれた形である。今回はゴルフ中にもTweetをしていたのではという話が出ており、大統領のSNS中毒ぶりがうかがえる。
ただ、これら一連の報道や反応からわかるのは衆参同一選挙の可能性や通商交渉での妥協だけではない。重要なのは日本人が宗主国を求めているという点だろう。日本人がどれだけ不安になっているのかがよくわかる。
今回、アメリカの大統領はある意味宗主国の代表として報道された。もし宗主国のトップであれば国民より先に解散総選挙について知っていたとしてもなんら不思議はないし、選挙に介入して与党の体制を保証しても問題はない。ある意味日本が昔からやっていたことだ。金印をかざして中国の後ろ盾を誇るというような話なのだ。
だから国民はそれほど安倍接待部長に怒りを向けなかった。テレビはこうした国民の不安を「英語が堪能な両陛下が立派に大統領をもてなしてくれた」という論調で歓迎していた。閉塞感を抱えて不安になっている日本人が世界で一番強くて立派なアメリカに依存したがっているということがよくわかる。
日本人がしがみつけばしがみつくほどアメリカは高く自分たちの保護を売りつけることができる。アメリカにとってはおいしい展開である。トランプ大統領は日本の記者がおずおずと「通商交渉でのアメリカの要求はTPP以上の水準にはならないんですよね」という質問をすると、トランプ大統領は安倍首相を遮るような形で「我々はTPPに縛られない。あれはオバマの失敗だからだ」というような発言をして悦に入っていた。
令和最初の国賓のご接待は、世界第三位の経済大国であり二番目に儲けている日本としては実に情けない形で行われた。多分、明治維新以来の「西洋諸国へのコンプレックス」が色濃く残っているのだろう。150年経っても日本は小さくて弱い国という自己意識から抜けられないのだということがよくわかる。