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「日本経済のファンダメンタルズはしっかりしている」ので理屈の上では消費税は増税される

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多くの人が2019年10月に消費税増税があるのかを気にしているのではないか。5月24日に答えが出た。理屈の上では消費税は増税される。

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2019年1月〜3月のGDPが出た時に各社が一律に「日本のファンダメンタルズはしっかりしている」という言葉を使った。あまりにも揃っているので不自然だなと思った。

どうやらこれは2018年12月に安倍首相が使った言葉らしい。読み返してみると日経も「内閣府幹部の言葉」と扱っている。菅官房長官がそう発言したとする記事もある。茂木さんも同じ言葉を使ったのですり合わせした「正解」になっているのだろう。

ところが、その中身がよくわからない。いつものような雰囲気だけの言葉なのである。このファンダメンタルズの内容がわからないので景気悪化の判断と景気継続の判断が入り混じると色々な憶測が生まれる。

2019年3月の景気動向指数は6年2ヶ月ぶりの「悪化」に転じたそうだ。ダイヤモンドオンラインは1~3月期GDPが景気動向指数と予想外の食い違い、景気の先行きは?と報じる。

ダイヤモンドオンラインの記事はわかりにくい。GDPの方が実際の動向に即しているから景気はそれほど悪くなっていないとしている一方で、次のように結論づけている。今は大丈夫だがこの先はわからないというのである。

稚園や保育園の無償化、キャッシュレス決済のポイント還元など対策は講じられるが、消費税率引き上げは年間で2.5兆円前後の家計負担増をもたらし、個人消費を減少させる方向に働く。消費税増税までに輸出が回復しなければ「19年度後半の日本経済は内外需ともに悪化する恐れがある」(斎藤氏)、つまり景気後退に陥る公算が大きくなるだろう。

1~3月期GDPが景気動向指数と予想外の食い違い、景気の先行きは?

首相らがあまり根拠を示さず「ファンダメンタルズはしっかりしている」と言ってしまったことで「忖度問題」も起きているようだ。ダイヤモンドオンラインの別の記事はエコノミストの忖度問題を伝えている。

ただし、これは必ずしもエコノミストの本心ではないかもしれない。なぜなら、エコノミストの景気判断は、政府の意図を忖度している面があるからだ。

景気拡大の力が「3つの押し上げ効果」で再び強まる

エコノミストは学者ではないので所属する会社の立ち位置によって表現を変える必要があるということなのだろうか。それとも自分だけ外れると格好がつかないのでみんなが書きそうなことを書いているのだろうか。いずれにせよ「政府が景気悪化を認めるまで自分たちも認めるわけには行かない」というような書き方になっている。

ダイヤモンドオンラインの二つの記事だけでも、楽観論と悲観論にわかれている。つまり、本当のことは誰にもわからないということである。

こんな中で月例経済報告がどうなるかということが注目されていたようだ。識者の見方が分かれる中で、これまでの「ファンダメンタルズはしっかりしている」というポジションを崩したら、それはすなわち消費増税を諦めるというサインになるからである。これが出たのが5月24日だった。

総括判断の表現は「輸出や生産の弱さが続いているものの、緩やかに回復している」とした。「緩やかに回復している」との表現は2018年1月以来、1年5カ月連続で踏襲している。

総括判断を下方修正 「緩やかな回復」は据え置く=5月月例経済報告

これで理屈の上では政府は消費税増税を言い出す材料を自らなくしたことになる。ゆえに消費税増税延期を題目にした衆議院解散もなさそうだ。とはいえ安倍政権はなんでもありなので、これがどう転ぶかはもちろんわからない。

一方の野党側は「勝つためには消費税増税延期を言い出した方が良い」とは言っているのだが、そのあとのまとまった提案はない。景気が悪いなら何かをしなければならないが、緊縮財政は有権者には受け入れられないだろう。かといって霞ヶ関に埋蔵金があるという話を信じる人はもう誰もいないに違いない。

野党は内情を知ってしまったので思い切ったことは言えないのだが、院外にいると好き勝手なことが言えてしまう。野党がまとまった政策を出せず10月に入り消費が冷え込めば、さらに極端な声が院外から聞こえてくることになるだろう。ヨーロッパではすでにそういう状態になっているようである。

そう考えると、MMTという禁じ手を叫ぶ議員を幹部がなだめるという与党のお芝居や過激な発言が目立つ維新の党を懐柔する一連の行動にも意味があるのだということがわかる。つまり、過激派を飼っておくことであらかじめ院外から過激な声が出るのを防いでいるのだ。

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