QUORAの政治のスペースに毎日記事を書いている。ブログと同じくほぼレスポンスがないのだが、なんとなく書くテーマが決まって行き「ポピュリズム」について考えている。
ポピュリズムは議会軽視の中で、極端な主張が受け入れられてゆく政治過程のことである。日本でも丸山穂高のような「けしからん議員」を予備的に排除できないのかという声があることからわかるように、議会や政治家に対する疑念がうっすらと広まっていることがわかる。
ところがイギリスはもっとひどいことになっている。Quoraで聞いたところ「ブレグジット(EUからの離脱)は誰にもどうなるかわからない」のだそうだ。
イギリスについて調べたのはTBSニュースがきっかけだった。ファラージのブレグジット党が保守党や労働党よりも支持を集めているというニ。実際に英語でも調べてみたがそのような話はある(ロイター・英語版)ようである。ただ、これはEUの議員選挙の話だ。
これとは別の動きもある。実は地方選挙ではブレグジット反対派(EU残留派)の自由民主党が躍進したとBBCが伝える。全く真逆の人たちが支持を集めているのだから、既成政党の「穏やかな提案」が人々の飽きられていることがわかる。
イギリスの世論が真っ二つに割れていることから、議会制民主主義がいかに脆いのかということが見えてくる。国民投票で極端な意見が広まりその後始末ができない議会が非難されているのだ。メイ首相の提案は議会をまとめられず、かといってそれに代わる合意案も作れない。そうこうしているうちに「まとめられないからメイ首相が退任するだろう」という観測さえ出始めた。
どうしてこうなったのだろうかということを改めて調べてみた。EU側がキャメロン首相に「馬鹿げた国民投票はするな」と警告していたというBBCの記事が見つかった。
実際にこのEU側の懸念は現実のものとなった。ファラージ率いるブレグジット党がEU議会選挙で躍進すればEU議会にEU懐疑派が入り込み中から暴れ出すだろう。フランス財務・経済大臣は「出てゆくつもりならとっとと出て行け」と言いだした。しかしEU議会選挙ではイギリス以外からもEU懐疑派が躍進することが予想されている。
BBCの記事によると、キャメロン時代の保守党は単独で政権が維持できないので自由民主党と連立していた。国民の支持を集めるために「国民に直接意見を聞く」国民投票を持ちかけたのだという経緯が書かれている。キャメロンが「どうせ議会が反対してくれるだろう」と考えていたという人もいれば、国民投票をやるつもりだったと考えている人もいる。Quoraでの回答もこれを反映した形になっていて「どうせそんなことはできないから国民投票でもやれば反対派が黙るだろうと思われていた」という意見が書かれていた。
いずれにせよ、キャメロンは議会調整と敵対勢力の説得を諦めて、安易な国民投票を選び結果的に失敗した。国民投票をきっかけに世論が二分されてしまい、イギリスではいま政治家にミルクシェイクをぶつけるのが流行っている。議会制民主主義のお手本とされていた国で、議会や政治家に対する権威は失墜してしまったのである。
この件は支持を失いつつある既存政党と国民投票の危険性といういくつもの教訓を我々日本人に伝えている。
ヨーロッパでは既存政党が支持を失いつつあるが、寡占政党制の日本では既存政党が極端な意見を取り込んだ。それが安倍政権だったわけだ。安倍晋三が取り込まなければ別の過激政党ができていたかもしれない。同じ寡占政党のアメリカでそれをやったのはトランプ大統領だ。
安倍政権も現状不安を打破するために憲法改正の国民投票をやろうと呼びかけている。なんとなく閉塞感が拭い去れない現状を「憲法を変えて打破しよう」と考える人は少なくないかもしれない。
しかし、実際の危険は「どう決まるか」ではないのかもしれない。例えば49%が反対だった場合国内で「間違った憲法」の反対運動が再燃する可能性がある。議会調整を諦めたから国民投票に頼るのだし、国民投票をすれば賛成派と反対派の対立は先鋭化される。こうして対立が激化してゆくのだ。実際に大阪では「都構想」の住民投票が一旦否決されたあともこれをめぐるつばぜり合いが続いている。住民投票を巡ってこうした共通パターンを見出すのはさほど難しくない。
日本もすでに議会への疑いの眼差しはで始めており、いつイギリスのような状態になってもおかしくないのかもしれない。