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トランプ大統領との関係が破綻しつつある「外交の」安倍

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共同通信が「日米首脳会談、共同声明見送りへ」という唐突な記事を出した。背景を調べてみたが、今度こそ本当に何もわからなかった。一瞬、トランプ大統領との関係はかつてなく悪いのではないかと思った。少なくとも記事はそのような書き方になっている。

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まず日米首脳の会談の内容は日経の「日米首脳会談の要旨」という記事にまとまっている。この線に沿って安倍政権は「サイバー攻撃されたら武力反撃ができる」などと言って世間を騒がせたのだが、国内に与えるであろう波紋には構ってはいられなかったのだろう。安倍首相の頭の中では、防衛分野は日本が明け渡せるドメインということになっているのかもしれない。ただ、その維持のために消費税がどれだけ必要なのか安倍首相が考えているのかは微妙である。

安倍首相の目標は、自民党政権こそがアメリカに信任されているという印象を有権者に与えることである。その意味では古代の冊封関係に似ている。国外の権威から得た権力を背景にして内政の統治基盤を作り政治的ライバルを抑えるというのが日本の古くからの手法である。

アメリカから金印を得たものが日本の統治者としての正当な権利を得るというような類いの話だが、根拠なき信仰は意外と大きな力を持つ。民主党はこうした呪術的なお墨付きを得なかったので3年で政権を手放した。

さらに安倍首相はポスト安倍を見据えて「キングメーカーになりたい」と考えているというような話も出ている。いわゆるワイドショーの暇ネタとして語られる類いの話ではあるのだが、ポスト安倍の構想固めができるくらい参議院選挙は楽勝ムードなのだろう。自民党の中には安倍首相はトランプ大統領と話ができる唯一の男という評判があるらしい。これが依然として政治的に大きな意味を持つというのが21世紀の日本の政治の姿である。

だが、これは日本側の幻想に過ぎない。トランプ大統領は北朝鮮などの状況が「日本に高く売れる」と感じておりその機会を最大限に利用しようとしているようだ。孤立主義に傾いているアメリカは中華帝国のような宗主国になるつもりなどないうえに、トランプ大統領は宗主国のふりをするつもりすらないらしい。

こうしたすれ違いは戦後のちょっとした状況変化によって作られた。もともとアメリカは日本をライバルと考えていたし、直接統治する沖縄に基地が確保できれば日本などどうでもよかった。戦後は日本を農業国に戻して国力を削ぐつもりだったようだ。

しかし東西冷戦という特殊事情があり地域が赤化してゆく中で方針転換を迫られる。アメリカ人が当時持っていた赤化の恐怖というものを想像するのはなかなか難しい。レッドバージ(アメリカではマッカーシズムと呼ばれるそうだ)が全米を覆ったが、誰が共産主義者なのかということが判別できず疑心暗鬼にかられていたようである。

こんな中でアメリカは忠実な日本(正確にはリーダーが誰であろうとついて行く日本の官僚組織だが)を地域赤化の防波堤として使ったのだろう。こうしてアメリカは日本の宗主国であるフリを始めた。

アメリカが新しい宗主国になったから強がって独立を維持しなくてもいいのだというある種倒錯した安心感はジャパンハンドラーや日米合同委員会という物語によくあわられている。確かにそういう人たちはいるのかもしれないのだが、それが必ずしもアメリカの総意というわけではない。

両者の思惑の違いは「非伝統的な政治家である」トランプ大統領によって撃ち砕かれようとしている。トランプ大統領は手にするもの全てを「ディール」に変えて行くという特殊能力を持っている。彼は長期的な関係を売り渡して短期的な利益を得ようとするのだ。すると当然その類の幻想を基盤にしていた政治権力は揺るがざるをえない。その意味ではアメリカが作った自民党はアメリカによって破壊されてしまうかもしれない。

残る問題は、日本人がアメリカが宗主国ではなく実は自分たちが独立しているということを認めるのかそれとも認めないのかという点だけなのかもしれない。これまでの報道の経緯を見ていると日本はこの問題をスルーするのではないかと思えるのだが、それはこれからの成り行きを見てみないとよくわからない。

いずれにせよ今回のトランプ訪問は安倍営業部長の企業接待をみんなで固唾を呑んで見守るというものになるかもしれない。日本人の高齢者に取っても大きな問題だし、自民党にとってはさらに大きな問題だ。

相撲接待やそして天皇の拝観など、トランプ大統領の接待体制は万全である。ただ、共同声明だけは出せない。日本の防衛や外交が全て安倍部長の営業接待にかかっているというのは考えてみれば恐ろしい話ではあるが、安倍接待部長は是が非でもこれを成功させなければならない。

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