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大韓帝国

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先日、厚生労働省について書いた時に「権力争い」と「統計のごまかし」が国を滅ぼすのではないかと書いた。大げさなと言われそうなのだが、理由がある。大韓帝国について調べていたのである。構造に似た点があるのだ。

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大韓帝国について調べたのはQuoraの質問がきっかけだった。韓国について悪し様に語る人は多いのだが、勉強して書いている人はそれほど多くない。そこで「大韓帝国の成立の経緯について教えてください」という質問が放棄されていた。せっかくだからと回答をつけたのだが、大まかな経緯を調べるのは意外と面白かった。

簡単にいうと李氏朝鮮が日本に占領されるようになった理由は王宮の権力争いである。それも「父親と嫁」や「嫁と義母」の争いなのだ。例えば高宗の時代にはヨメの実家である閔氏と傍系王族である父親の権力争いがあった。前代の憲宗・哲宗の時代にはヨメたちの実家である安東金氏が実権を握っていた。そもそも、安東金氏の影響力を排除するために傍系から養子をとって高宗を王にしたはずだったのだが、今度は高宗の父親の奥さんの実家から連れてきたヨメが勢力を持ち父親の興宣大君と対立してしまうのである。これに王様の「ふらふらした」態度が加わり、結果的に日本に占領されてしまうのだ。

内政で権力争いが起こると、それぞれ後ろ盾になっている国を見方につけようとする。興宣大君と高宗の奥さんだった閔氏は中国人というアイデンティティがあり清と仲が良かったそうだ。そこで対抗上。興宣大君は日本に接近する。日本は興宣大君の政権を作ることに成功したが、父親から介入されるのを嫌がった高宗はロシアに接近したため、話が複雑化し、最終的に日露戦争が起きてしまう。

王室が弱体化した理由を調べてみたのだがよくわからかった。ただ、王様の男子の子供はことごとく夭折している。確たる証拠はないものの暗殺された人が多かったのではないかと思う。他の家からきた側室の子供を根絶やしにしないと権力を持って行かれるという構造があったのだ。

なぜそんなことになるのかというと、王妃や王母が政治に介入することがおおっぴらに行われていたからである。外戚が政権を取るには妻か母を送り込むしかない。いったん政権を取ると「子供が大きくなるまで」などと言いながら実権を握ることができる。王様に後継者がいない場合に次を決める権利があるのは亡くなった王の妻なので、自分に都合がいい人を王族の中から選んできて養子にして王様に仕立てる。そのうち妻と母親の実家がそれぞれ対立するようになると王様は「とても政治などできない」といって引きこもってしまい、ますます搾取し放題になる。お酒に溺れて早死にする人も出てくる。外国から開国を迫られ飢饉が起こるが、朝廷さえ押さえておけば権力構造は安泰なので、実権を握っている人たちは失敗の責任を取らない。農業社会だった朝鮮は耕作放棄者が続出しどんどん衰退してしまった。

この方基地の問題は現在まで尾を引いている。日本は統治時代に測量と調査をやり直すのだが、無主地(及び隠田)がたくさんあり実態がよくわからなかったとされる。このために「日本が朝鮮人の土地を収奪した」とか「いや収奪した土地はそれほどなかった」という議論が今でも収まらない。現代の統計に当たるのは財産目録とそこから期待される米などの収量なのだが、それが曖昧だったことが大きな問題を引き起こしている。

だから、今でも朝鮮統治が朝鮮・韓国の近代化にどれほど役に立ったのか、それとも搾取だったのかということはわからない。これは生真面目に検地をして石高を出しそれを管理し続けた日本との決定的な違いである。日本は富の源泉を管理し朝鮮は管理しなかったのである。

この検地制度(朝鮮では量田と呼ばれるそうだ)の歴史は面白い。豊臣秀吉の朝鮮侵攻で起こった混乱を収めるために量田が行われ税制も改正された。しかし、その後は量田が行われなくなる。中間搾取があり検地をすると隠田もバレてしまうので周囲が反対したと言われる。税制の改革も100年かかったという。統計が曖昧なので中間搾取が続き「実権を持った人たち」が王室をコントロールする。すると朝廷はますます政治どころではなくなるという負のスパイラルは日本でいう江戸時代の初期から始まったようである。

朝鮮半島が併合されたことについて、朝鮮側からの視点が語られることはあまりない。だが、朝鮮側の歴史を調べると、日本がずるずると朝鮮支配にコミット「させられた」様子もわかる。まず権益を確保しようとして清と戦争し勝ってしまう。しかし朝鮮がふらふらとロシアに近づいて行ったので、今度はロシアと戦争し「危ないながらも」勝利する。日本国内では「清からは賠償金が取れたのにロシアからは取らないのか」などと騒がれ焼き討ち事件まで起きる。しかし、なぜ「朝鮮が支配できる」と日本人が思い込んでしまったのかがわからなかった。実は王室が混乱していて「権力争い」に介入できる見込みがあったのだ。

また、世界情勢も日本に味方した。欧米は第二次世界大戦の前までは日本に戦争をして欲しかったのではないかと思う。東からロシアを弱体化させられるからである。日露戦争では「高橋是清らが英国に行って金融支援をもぎ取ってきた」ことになっているのだが、ヨーロッパは日本にロシアを攻めて欲しかったはずである。日本は1980年代までこの時の借金を返し続けていた。第二次世界大戦で日本に賠償金の支払いが求められなかったのは「破産させてしまえば元も子もなくなる」と懸念されたからではないかとすら言われている。

さて、話が長くなったが、いったん厚生労働省の話を書いて寝かせている間にQuoraについて調べているうちに、ああ基礎統計というのは本当に政治の基礎なんだなと思った。調べなくなるとわからなくなり、わからなくなると調べなくなるのである。そうして無理な命令が繰り返され、嫌になった農民たちは農地を捨てて逃げてしまう。そうやって国が衰退していった。だが、朝鮮の人たちは日本が測量を再開するまで200年もそれに気がつかなかったのである。

厚生労働省が隠しているのは賃金データだ。たかが統計なのだが、その元になっているのは働いている人たちの日々の働きである。つまり昔でいうところの「量田・検地」データなのである。しかし税金としては「黙っても入ってくる」上に借金さえすればいくらでも予算は増やせるのだから、そのうち統計データなどどうでもよくなってしまったのだろう。実際に何が起きているのかわからなくなるという恐怖心よりも「ごまかしたのがバレたら困るからどうしよう」とか「これが政権奪取に利用できるのでは」という思惑が優先されるという状態になっている。飢饉にあたるのは不況だが、統計データをごまかしたり借金を増やせば直視しなくても済むだろう。そして「政権さえ取ればあとはどうにでもなる」として不毛な権力闘争を繰り広げられることになる。

これはとても恐ろしいことなのだが、朝鮮は200年もの間それに気がつかなかった。今の日本でも勤労統計のごまかしは国の基である労働をないがしろにしているなどといえば「そんな大げさな」と思う人が多いのではないだろうか。二つの全く異なったものを観察しながらそう思った。

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