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静かなるパニック – 厚生労働省が壊れる

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やっぱりなと思った。官邸はとりあえずなんとかしろと叫び、厚生労働省はパニックを起こしており、それを野党が政治利用しようとしている。このままでは日本は早晩破滅するだろうとさえ感じた。

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最初に話が出てきたときに1400円という値がどう出てきたのかと思った。サンプルデータがどのような状態で採取されていたのかはわからないはずなのだから正しい値などわかるはずはないのである。したがって差額など出せない。予算に関係する話なので与野党と官僚が「ではどうするか」という話し合いをすべきだった。論理的に考えればすぐにわかる話である。だが、これまでも散々不毛な対立や改竄が続いておりそんな空気はない。壊したのは安倍晋三さんである。

しかしながらNHKの大本営発表では嫌に自信たっぷりに1400円という数値が出ていたので、もともと数値を知っていて「隠していたのでは?」と思った。しかし、その後の経緯を見ると野党に政治利用されるのを恐れた官邸側が「早期解決をするように」と厚生労働省に迫ったのだろう。いつものように何も決まっていないのに「大丈夫です」とやったのだ。

多分、官邸は「統計や調査」についてよくわかっていないのではないかと思う。サンプルとか全数調査という概念が理解できないままで「とにかく、騒ぎが大きくなる前に対策を出せ」などと指示を出し、それを当てはめて数字を出したようだ。なぜそう思うかというと、火曜日に電話したハローワークの職員が「とりあえず手持ちの数字で暫定計算したと聞いているがそれ以上のことは言えないし、今後のこともわからない」と言っていたからである。

厚生労働省の方も「出せと言われた」から「すぐに嘘だとわかる数字を出した」ことになる。そして出先は「本庁が言っているから」と無責任に吹聴する。もう一週間先のことも考えられないのだろう。が、これを後押ししているのが現状を掌握するつもりがなく選挙利用しか考えていない旧民主党の人たちだ。例えば蓮舫さんは「善意のつもり」なのか、こんなTweetをしている。

一見いいことを言っているようだが、実際に電話すると「まだ何も決まっていない」と言われる。決めるのは官邸と国会である。しかし、国会議員たちも実は何が起きているのかがわからず、それどころか知ろうともしていないということになる。彼らの頭の中は「これをテレビで面白おかしく吹聴し参議院選挙で勝てるか」ということだけなのだと思う。

そうこうしているうちに厚生労働省は総務省から「統計として成立しませんね」と指摘されてしまった(毎日新聞社)ようだ。2004年から2011年までの間の資料が廃棄されたのだという。この前代未聞の事態に野党が「予算編成の根拠がなく、アベノミクスはデタラメだ」と騒ぎ出すのは明らかである。実際には人不足が始まっており、給与上昇なき経済成長が始まっているようだ。2009年とは状況が違っているのだが、これについて話し合いをしようという気配はない。そもそも基礎統計がないので日本経済に何が起きているのかは誰もわからない。

厚生労働省と官邸が慌てていた様子はよくわかる。組織的隠蔽はないのかと聞かれて厚生労働大臣は「ないと思う」というように答えていたと思うのだが、面白い読み物を出したい毎日新聞朝日新聞は知っていて聞いているのだろう。マニュアルを作って調査を形骸化しようとした件や、露見を恐れて隠蔽工作をしたのではなどという記事が次から次へと出てきている。やっていることは週刊文春の突撃ビデオレポートと変わらない。朝日新聞によると、厚生労働省は「一部は知っていたが、みんなが知っていたわけではない」というわけのわからない言い訳をしているようだ。つまり「組織的関与」の定義の話にしようとしているのである。誰も納得するはずがない。

当事者意識を持つ人がおらず、それぞれが思惑で嘘をついたり話をはぐらかしたり話を大きく盛ろうとしているという大混乱の中、日経新聞によると早速国債の増発が閣議決定された。失敗を借金でごまかそうというのだ。

この件で追加の給付金が500億円以上になるそうなのだが、計算をするためにシステムを作り直すなどと言っている。その費用が200億円かかるという。合計して800億円という数字が一人歩きしているのだが、実際に本当にいくらかかるかなどわかるはずがない。なぜならば何をどうごまかしているのかが分からないわけだから、それをどう回復させられるのかということもわからなければ、そもそも回復ができないかもしれないからである。

これまで安倍政権は事実を曲げて「ふわっとした」解釈でごまかしてきた。これをあまり知りたくない国民も「まあ、大丈夫なんだろうな」と流してきた。今後は「なんとなく不安な状態」が続き、確定値とされていた数字が「いや実は間違っていました」という状態が続くことになる。嘘をつけばつくほどマスコミが喜んで記事にし、それを決め手に欠く野党が利用するという「かつて見た景色」である。大騒ぎする人はたくさんいるがこれを仕切る人はいない。日本人が最も嫌う「なんとなく曖昧な状態がいつまで続くのか分からない」という状態になるだろう。

参議院議員選挙は自民党の後退をどれだけ食い止められるかという戦いになるのだろう。オリンピックくらいまではこうした静かな政治混乱が続くのではないだろうか。この一件で政権が変わるわけでもないし、野党の政策決定能力の質が上がるわけでもない。また2009年前夜のように「敵失」によって情勢が変わるだけだ。政策や議論で政権が動くわけではなく「なんとなく不安な状態から逃げ出したいから」という理由で政権が動き、またそれがうまく行かないとして政権が揺れ戻る

なんらかの形で日本人が政治議論ができるようにならない限り、議会の内紛状態は続き、政治的に不安な状態が続くのだ。

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