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安倍首相の嘘を懲らしめるためには野党はどう動くべきか

今回は交渉をテーマに書くのだが、ちょっと気が進まない。自分自身は交渉ごとが下手で「話し合うくらいならもう関係を維持できなくてもいいや」などと思ってしまうからである。戦略を立てるのが得意ではないのでゲームも苦手である。そんな人が交渉について書くのであまり説得力はない。

今回テーマは森友・加計学園問題の追求なのだが、なぜ「交渉」がテーマになるのかという点に疑問を持つ人もいるかもしれない。実は野党は有権者との交渉に望んでいるのだが、振り向いてもらえないために代わりに首相を追求している。これが森友・加計問題が進展しない理由なのである。

野党は「首相の関与を認めさせる」ゲームをしているが、これは実は彼らが求める結果には繋がらない。これが唯一にして最大の失敗の原因だ。しかも、最初から着地点がバレているのでうまく攻められないのである。


加計学園の問題と日大のアメフト部の問題を絡めて考えている。「そのままでは勝てそうにないという見込みがあると反倫理的行為が蔓延する」共通点があるとQUORAに書いたところ「アメフトが反倫理的だというのはわかるが、安倍首相が反倫理的だというのはなぜか」というコメントが入った。

この疑問に答えるために、公平性に注意しながらかなり長い文章を書いた。内部の人たちにとっては正義のための戦いであっても外の人がどう思うかはわからないという筋である。公平性を担保しないと「反政府側に偏っている」と思われて支持が得られなくなるというところに今の政治議論の難しさがある。日本人は集団の規則に従わない人をかなり嫌うのだと思った。

誰がどう考えても、あったものをなかったと言ったり、文書をごまかすことはよくないことだ。それでもニュートラルさを装わないと納得してもらえない。アメフトだと気軽に「嘘だ」と言えるわけだから、やはり権力に対する遠慮があるのだろう。「明らかな嘘」があっても、実は野党というのは最初からかなり不利な立場にある。

このことからわかるのは「国会」というステージで首相の嘘を暴くのは難しいということである。

野党の人たちは「首相が嘘をついているということが知られていないから不支持が広がらないのだ」と考えているようだ。そこで執拗に安倍首相に様々な攻撃をしかけている。しかし、すでに国民は安倍首相が正直であることに何の期待も持っていない。野党に政権を渡してしまうと「また大変なことになる」と思う人が多く、さらに普通の人は体制側に疑問を持ってはならないというマインドセットがあるので、野党の追求には支持が集まらないのだろう。

政権側は撤退ゲームを行っている。つまりあるボーダーラインを決めて<事実>を組み立てている。今回は財務省と愛媛県から新しい文書が出てきたことが問題になっているのだが「本筋には影響がなかった」と言い張るつもりのようだ。何か隠したいから文書を隠蔽したわけで、これはおかしな言い訳である。ゴールポーストは動いていて「明確な証拠がない限りごまかし通す」ということになっているので、いくら攻撃しても得点につながらないのだ。

野党側は安倍政権が作ったルールと安倍首相が置いたゴールの元でゲームを行っている。フィールドも敵地(アウェイ)である。これでは勝てそうにない。つまり、野党が勝つためには彼らが得意なゲームを設計しなければならないのである。

与党側も撤退戦なのだが、実は野党側も不毛な「言った言わない」でしか政権を追い落とすことができないと思い込まされている。追い詰めても相手は「ご飯戦法」で議論をすり替え、ゴールも動かす。そうして「絶対に勝てない戦い」を強いられている。

では、こうした状態を解決するにはどうしたらいいのだろうか。何か参考にできるものはないかと考えたところ北朝鮮とアメリカの「ディール」が思い浮かんだ。ディールは、あらゆる機会を捉えてゲームを作り出すところにその妙味がある。

トランプ大統領と金正恩委員長の間での交渉は決裂したとも言われており、実際に会談が実現したとしても非核化は難しいだろうと予想されている。日本人からみると「トランプ大統領は負けた」と思われても仕方がないゲームである。だが、これは日本人が最初から高めのゴールを設定して、そこに到達しなければ負けだと認識してしまうからである。

だが、実はトランプ大統領は負けていないという観測がある。トランプ大統領の目的は北朝鮮がアメリカに攻撃できないようにすることであるという。北朝鮮も核兵器の保持を既成事実化すればよい。つまり、交渉を始めて「ICBMさえ放棄させてしまえば」北朝鮮とアメリカにとってはWin-Winなのだ。文在寅大統領にとっても北朝鮮との間にパイプができれば独自に経済交渉などができるし、核兵器を持っていたとしても突発的な攻撃も防げる。これもいわばWin-Winである。つまり、彼らは意図的に衝突なりコンタクトを起こして「ディール」を作ることで何かをゲインするという方法をとっている。

と、同時に実際のどの程度のことを獲得できればいいのかということは最初から明かさないし、そもそも手持ちのカードを最初から全て見せるようなことはしない。だから相手もゴールを動かしてゲームを撹乱することができない。

実は野党の中でこの戦略をとっている政党が一つだけある。それが共産党だ。共産党は時々新しいデータや文書を出してくる。多分内部に協力者がいるのだろう。だが、それは表に出さない。会議の場で新しい情報が出たから、もう少し慎重に審議をしなければなりませんねといって相手を追い詰めて行く。彼らは完全にゲームを掌握しているわけでもないが、すべての手の内を見せているわけではない。共産党がこうしたゲームができるのは共産党を信頼している人が館長の内部にいるからだろう。彼らは彼らが得意なゲームを戦っていることになる。

この戦法をとるのであれば「最終ゴール」である安倍首相への攻撃はやめた方が良いと思う。それよりも周りにいる人たちを避難して相手に高めのゴールを吹きかけた方が良い。例えば加計学園や財務省など攻撃できる人たちはたくさんいるし、さらに言えば国会ではなく法廷闘争でも構わない。国会であれば安倍首相に守ってもらえるという人でも、別のステージで「守られないかもしれない」と思えば心理的な揺さぶりができるし、中には口を破る人も出てくるだろう。そこで、おもむろに本来の目的を遂行すればよい。

さらにテレビを通じて論戦をすることもできる。スタジオに与党議員を呼んで安倍首相の無茶な理論を繰り返し説明させれば良い。これを証明できないと「自民党の議員の質が問われる」とすればよいのである。そのうちネトウヨ議員が出てきて人権を無視するコメントなどを出してくれれば「追加ボーナス」だ。安倍首相の人格ではなく、自民党議員一般の資質を問題にすれば良いのだ。

さらに、獣医師会をいじめるというゲームも考えられる。加計学園で獣医学部は需要があるということがわかったのだし、新潟と京都はやりたいと言っているのだから総理の強いリーダーシップのもとでこの二校も作ってやればよい。すると獣医師会は慌てるだろう。そこで「加計学園は特別なのか」と言えばよい。

日本人がこうした交渉をやりたがらないのは「そうまでして勝ちたくない」と思う上に同質性が高く「政治というのはこうやって行うべきだ」という同意と思い込みが強いからだろう。しかしルールを設定して戦うことは「ルール無視の無法」とは違っている。ぜひ積極的に勝てるゲームを作るべきなのではないかと思う。

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