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共産党が支持を集めない理由は名前にあるわけではない

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民進党が内部の責任の押し付け合いでグダグダになってしまったので、共産党への期待が高まっているようだ。中には共産党という名前がよくないのではないかと悩んでいる人もいる。結論からいうと共産党がある程度以上の支持を集めない理由は名前ではない。

共産党はもともと労働者政党だ。資本家に圧倒的な力があるので労働者は比較的不利な立場に置かれる。また、能力があれば経営者になれるはずだという通念がある。このことから、労働者に甘んじている人たちは能力的に低い人たちなのだという思い込みが生まれる。

日本人は「弱者認定」されることを嫌う。人生の目的が競争に勝つことだという認識がとても強いく「負ける」という結果が出ることを嫌うのだ。アメリカは失敗は次の成功への過程だが、日本人にとって失敗は結果なのだ。

例えば生活保護受給資格がある人でも申請窓口に行かないことが多い。窓口にたどり着けないという事情もあるのだが、そもそも人生に失敗したという「烙印」を押されることを嫌うからだと考えられる。実際にこの懸念は当たっている。弱者だと認定されると容赦なく叩かれるからだ。

弱者たたきは誰にでも向かい得る。国会議員でさえ子供ができると非難されたりするそうだ。議員なのに仕事を休むのがけしからんというのが表向きの非難の理由になっているが、実際には「母親というような弱い存在を支持したくない」という支援者が一定数いるのではないかと思われる。女性が活躍するためには母性という「弱々しい側面」を捨てなければならないと考えるのが日本人なのだ。一方で父親の国会議員に子供ができると甲斐性があるなどと評価される。ただし父親が育児を手伝うことはない。それは弱い人がやることだからだろう。

さて、日本人は弱者を嫌うわけだから弱者を支援しようという政党には原理的に一定以上の支持が集まらない。日本の政治を決めているのは明確な強者でも明確な弱者でもない。その他大勢の「なんとなくふわふわと漂っている」人たちがどちらにつくかによって結果が大きく変わってしまうのである。

というわけで社会変革の運動を潰すためには弱者認定してしまうのが手っ取り早い。デモを潰すためには「弱者の遠吠え」という印象操作をすればよかった。実際に安倍首相はそのようにしており一定の効果があった。潮目が変わったのは彼らを指差して「負けるわけには行かない」と言ってしまったことだった。相手にしてしまったために、彼らと対等だということになり、印象操作の効果が薄れてしまったのだ。

「ふわっとした人たち」の中には、実際の中間層もいるだろうが、そうでない人たちを大勢含んでいるのだろう。これをうまく利用したのが東京都知事選挙だった。小池百合子都知事は「男と渡り合う強い女性」であり「英語をうまく使いこなすキャリアウーマン」という印象がある。実際に政策の中身を聞いているとふわっとしていてたいした問題解決もしていないのだが、ワイドスペンディングとかアウフヘーベンなどと言われるとなんとなく「へー」という気分になる。この程度でも「勝ち組幻想」さえ与えてしまえば多くの支持を得ることができる。

東京では維新もあまり支持を集めなかった。これは東京にとって大阪が負け組都市だからだろう。過去にタレント候補などに頼りまともな議論をしなかった結果政治がめちゃくちゃになってしまったという印象を持っている人もいるかも知れないし、もともと眼中にないという人もいるだろう。

ということで政党が支持を集めたければ、困難な問題はスルーして、ふわっとした夢みたいなことだけを語っていればいいということになるだろう。外国のコンサルタントを雇って勝っている事例をたくさん集めてきて、これを広告代理店の派手な広告戦略に乗せればいいということになる。お金が続くうちは勝ち組幻想が得られるので、どうしても勝ちたい人たちの支持を集めることができる。

ということで、もし共産党が選挙に勝ちたかったら名前を捨てるのではなく、弱者救済という行為そのものをやめなければならないということになる。が、それはあまり意味がないのではないだろうか。

そもそも「共産党みたいな主流でない政党を支持するのっていけてないんじゃないか」と考えている時点で「勝ち組に乗りたい」という気分に支配されていることになる。まずはそこから変えて行けばいいと思うし、いやなら支持をやめればいいと思う。

ここしばらくは民進党くらいしか反自民の受け皿がなかったので、ちょっとした不都合があっても「いつかは目を覚ましてくれるに違いない」と目をつぶっていた人たちも多いと思うのだが、彼らが意識を変えることはありえない。党がなくなってしまえば、議員たちは生き残りのためになんとかするはずで、受け皿が作られないということはありえない。自分の信念にしたがって支持したり、見放したりしても構わないのではないかと思う。

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